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okujou_no_yurirei-san:1404

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合宿四日目。暑い。ひたすら暑い。

天気予報だと、今日は36度くらいまで気温があがるとか。猛暑日は毎日のことだけど、今日は特に暑くなるみたい。

食堂の厨房は一応、冷房があるけど、さすがに煮炊きがつらく感じる。朝ご飯の準備はそうでもなかったけど、昼ご飯の準備は大変だった。

それでも、この炎天下の校庭で走ったりしている陸上部のみんなよりはまだましかも。お昼休みはみんな、食堂や大座敷でぐったりしていたから。

夕ご飯はちょっと塩分を多めにしなきゃ。水分とミネラルの補給は部活中にもしてると思うけど、食事の方でも考えてあげないと。

それから、暑さで食欲もちょっとなくなってるみたいだから、メニューは一部変更。少しでも食が進むものにしなきゃ。

……なんてこと、考えてもいられない惨状が目の前にあった。

剣峰桐

月代ちゃ~ん、早く部屋割り決めなきゃ~!

園生月代

う、うん、わかってるんだけどね! でも、その前に空いてる部屋の確認と、布団の数を調べなきゃいけなくて!

相変わらず数理部の部室の中で、剣峰さんと園生先生がテンパっていた。

遠見結奈

……いつからこんな状況なの?

有遊愛来

午前中からずっとだったみたいだな。私が来たのもさっきだったんだけど。

隣にいた有遊さんに聞いてみたけど、私と同じで、状況にあぜんとしていたみたいで。

遠見結奈

えっと、どうしてこんなことに?

有遊愛来

今日から土日に入るからな。この週末だけ合宿に参加する学生もけっこういるんだ。

遠見結奈

ああ、そういうこと。

夏合宿の期間は三日前から始まっているけど、別に全日、参加しなくてもいいことになっている。

それぞれの都合に合わせて、そのうちの何日かだけ、合宿してもいいということ。

そして、ちょうど週末に入る今日から月曜日までが、実は合宿ラッシュだったみたい。一気に参加者が増えて、園生先生が混乱中ということらしい。ついでに剣峰さんも。

というか、この二人、合宿が始まってからずっと働き通しみたい。私と有遊さんが時々手伝いに来てるけど、いつもこんな感じで。

これじゃ、百合霊の二人が言ってたように、ゆっくりと二人っきりなんてこと、なさそう……。

まぁ、それはともかく、手伝いはしよう。なんというか……、ちょっと二人の仕事に無駄が多いみたい。そこがもどかしいというか。

遠見結奈

あの、とりあえず……、こないだ作った合宿の参加者のまとめのプリントってまだ、余ってますよね?

園生月代

え、ええと、いくつ作ったんだっけ、有遊さん。

有遊愛来

参加予定者の分も入れておきましたから、数はあるはずです。

遠見結奈

それじゃ、とりあえずそれを配って、目を通しておいてもらいましょう。先生と有遊さんは、ついでに補足説明とかを全員にしておいてください。

遠見結奈

その間に、私と剣峰さんで布団とか部屋の確認をしてきます。戻ってきたら、部屋割りすればいいと思うんですけど。

園生月代

え、えっと、そうね……。うん、それで行きましょう。

遠見結奈

はい。それじゃ、剣峰さん、行きましょう。布団の数と、空いてる部屋の確認。あと、合宿中の部活とか回って、余ってるものないかも聞いてこよう。

剣峰桐

え? う、うん。

えっと、ごめん。園生先生と引き離すみたいになっちゃって。でも、これならあとで時間、作れると思うから。

園生月代

それじゃ、有遊さん、プリント持って、待ってるみんなのとこ、行きましょうか。

有遊愛来

はい。

剣峰さんと一緒に数理部の部室を出る時、あ、またやっちゃったかなって思った。でも、一昨日みたいに気分が重くなることはなかった。

遠見結奈

はぁ……、疲れた。

有遊愛来

お疲れ様。動き回る方の仕事ばっかりまかせてしまって、すまなかったな。

遠見結奈

あ、ううん、それはいいの、気にしないで。

あれからたっぷり三時間ばかり、すっかり合宿対策本部になっている数理部を出て、有遊さんと二人、星館校舎の廊下を歩いていた。

一応、やれることはだいたいできたはず。今日から合宿に入る人たちの部屋割りも終わったし、布団の運び込みも終わり。

あとはシャワーの時間の割り振りとか残っていたみたいだけど、それくらいなら園生先生と剣峰さんの二人にまかせてもよさそうだし。

そろそろ5時も近い。陸上部の夕ご飯の支度に戻らなきゃいけない時間になっていたから、断って数理部を出てきた。

遠見結奈

なんか、またでしゃばっちゃって、ごめんね?

ちょうどよく、有遊さんも一緒に数理部を出るって。一息つけそうな園生先生と剣峰さんを二人っきりにするのには好都合なので、一緒に部室を出て、学食へと戻る途中。

有遊愛来

いや、それこそ気にしないでいい。今日もとても助かったよ。

有遊愛来

園生先生も剣峰さんも、けして手際が悪いわけではないんだけど、どうにも忙しくなりすぎると目の前の仕事にていっぱいになりがちなところがあるから。

有遊愛来

ああ、これはきっと、私もだ。今日も、遠見さんが後から入ってきて、きちんと仕事を仕分けてくれてよかった。

遠見結奈

そう言ってくれると、うれしいかな。

あれ、こんなこと、するっと言えたんだ、私。うれしい、か。うん、うれしい。自分のしたことで、誰かが助かるって言ってくれるなら。

有遊愛来

それにしても、手慣れた様子だったな、遠見さん。

有遊愛来

遠見さんは、さっきみたいに、状況の整理や仕事の手順をしっかりと決めたり、そんな管理者的な役割が好きなのか?

<01>そんな管理者的な役割が好きなのか?

<01>好きってわけじゃ……

<01>嫌いじゃない

遠見結奈

別に好きってわけじゃ……。

管理者って。すごい言い方するな、有遊さん。

確かに混乱したまま状況を進めていくのは好きじゃないけど、なんでもかんでも管理したいとも思わない。

遠見結奈

ただ、すっきりさせた方がいいかなって思ったから。

遠見結奈

思わず口を出しちゃっただけ。ちょっとお節介だったかなって思ってるくらい。

有遊愛来

いや、本当に助かったんだ。何度も言うが、遠見さんのおかげで助かった。

有遊愛来

誰にでもできることじゃないと思う。ふむ……。

遠見結奈

嫌いじゃないと思う……。あまり、出しゃばりたくはないんだけど。

ほんとに、思わず口を出してしまったから。

ただ、あの状況のままじゃ、どんどん仕事は遅れていくだけのような気がした。うまくいったからほっとしてる。

遠見結奈

でも、管理者とかそんなたいそうな言い方されると、ちょっと……。

有遊愛来

いや、誰にでもできることではないし、組織には必要な役割だと思う。

有遊愛来

遠見さんは今、帰宅部だよな?

遠見結奈

ええ。

有遊愛来

今後、陸上部のマネージャーになったりするつもり?

遠見結奈

え? 陸上部? ううん、この合宿だけってことで頼まれただけだから。そんなつもりはないの。

有遊愛来

そうか。惜しいな。よかったら、風紀委員にならないか?

遠見結奈

ええ!? 風紀委員?

有遊愛来

ああ。一緒に委員をやってくれると、とても助かる。いや、助かるなんてもんじゃない。ぜひ、一緒にやりたいな。

遠見結奈

え、えっと。ごめん、私、普段は家のこと、手伝ってるから……。

有遊愛来

え? 遠見さんちは自営業なのか?

遠見結奈

ううん、そうじゃなくて。うちは共稼ぎだから、家事を手伝ってるの。だから、放課後は時間がとれなくて。

有遊愛来

そうか……、それじゃ仕方ないか。でも、残念だ。

遠見結奈

えっと、陽香と仲がいいんでしょ。誘ってみたら?

有遊愛来

陽香を?

有遊愛来

ふふ、冗談だろう、それは。陽香はとてもじゃないけど、風紀委員なんて務まらないよ。そういうタイプじゃない。

有遊愛来

個人的にはとてもおもしろい人間だと思うけどね。うん、とても興味深い。

遠見結奈

そ、そう。

有遊愛来

ああ、ほら、噂をすれば。そろそろ補習も終わる時間だ。

遠見結奈

え?

ふっと有遊さんが硬そうだった表情を崩して、廊下の向こう側へと視線を向けた。ほらって言葉で私もそっちに目を向けると。

古場陽香

お!

階段のところから、こちらに駆け寄ってくる陽香の姿が見えた。

私がその姿に気付いたのとほとんど同時に、陽香も気付いたみたい。こっちを見ている。わ、その顔が一瞬ですごい笑顔になる。輝くようなって言うのかな。

古場陽香

愛来! お、結奈も一緒なんだ。めずらしいなってゆーか……、愛来と結奈ってトモダチだったのか?

遠見結奈

え? えっと。

なんて答えればいいのかな? 知り合いっていうのも、ちょっとよそよそしいのかな? 友達っていうほど、親しいわけでもないような気もするんだけど。

有遊愛来

ああ。合宿に入ってから、よく私や園生先生の仕事を手伝ってくれるんだ。

遠見結奈

え、ええ。

そっか。有遊さんにとっては、友達の区分けってこういう感じなのかな。うーん、そうすると、有遊さんにとって、今、私と陽香って同レベルなのかしら。

古場陽香

ひょー、すげーな、結奈、ボランティアかよ。そのためにガッコー来てるのか?

遠見結奈

ちがうわよ。ちょっと頼まれて、陸上部の食事当番やってるの。時間が空いた時に手伝っているだけよ。

古場陽香

それもすげーな、サイコーなボランティアソウルじゃねぇか!

遠見結奈

ボランティア精神のことよね? 変な言い方しないでよね。

古場陽香

あ、一昨日、愛来が言っていた、合宿対策本部のクールな助っ人って結奈のことか?

有遊愛来

ああ、そうだよ。本当に助かってる。

古場陽香

やっぱすげーな、結奈! さすがオレのマスター導師だ!

遠見結奈

いや、ちょっとやめて。有遊さんにほめられるのはうれしいんだけど、陽香のはなんだか、バカにされてるみたい。

古場陽香

バカにするわけねーべ! いや、すげーだろ、愛来! 結奈ってほんとにクールなんだぜ!

有遊愛来

ああ、そうだな。

遠見結奈

いや、ほんとやめて……。

有遊さん、この陽香のどこが興味深いんだろう。おもしろいとは思うんだけど、確かに。

……さて、いつまでも陽香の変なホメ殺しに付き合ってられないし。それに、この二人の邪魔をしてたら、本来のお手伝いの意味がない。

私はそろそろ退散しなくちゃ。夕ご飯の支度もあるし。

遠見結奈

それじゃ、私、そろそろ陸上部のみんなの夕ご飯、作らなきゃいけないから。

古場陽香

おう、がんばれよ、結奈!

有遊愛来

お疲れ様、結奈。

遠見結奈

え? あ、うん。それじゃ、またね。

わ、びっくりした。有遊さん、さらっと私のこと、名前で呼んできた。友達は名前で呼ぶ人なのかな? ちょっと友達への切り替えのタイミングに驚きもするけど。

交友関係の捉え方って人それぞれなのね。

二人に手を振って、私は厨房へと向かった。えっと、今日の夕ご飯は、冷たいシチューを中心にして、と考えながら。

昼間は静かだった合宿所の廊下も、夜になると少し騒がしい。

昼間の練習が終わって、みんな、あとは寝るだけになったからかな。話し声、笑い声が壁越しに廊下にも響いてくる。

網島茉莉

お、結奈ちゃん、これからシャワー?

遠見結奈

あ、網島先輩。ええ、そうです。

稲本美夕

ごめんね、同じ陸上部の合宿なのに、一人だけ時間がずれちゃって。

遠見結奈

あ、いえ。後から急に増えたの、私ですし。

網島茉莉

お願いしたの、こっちだからねー。先にもらっちゃって悪い感じ。

遠見結奈

ん、でも、後片付けとか、明日の朝食の準備とかで時間、使ってましたから。気にしないでください。

夕ご飯の後、片付けをすませ、明日の朝ご飯の準備をしてたら、シャワーを使う時間になっていた。

合宿中は混み合うといけないので、シャワー室の使用は時間が決められている。私は陸上部の合宿に参加しているけど、みんなとはちょっとずれた時間が割り当てられている。

それは別にかまわないし、網島先輩に言ったとおり、いろいろやってたらちょうど時間になったので、シャワー室に行く途中、一足先にすませてきた陸上部のみんなとすれ違った。

網島茉莉

今日の冷たいシチュー、とってもおいしかった! あれ、どうやって作るの? シチューは冷たいのに、ジャガイモやお肉はほんのり温かくってさ、おもしろいよね。

遠見結奈

あれは、出汁をとったスープをカボチャと一緒にミキサーにかけて、冷やしておくんです。野菜やお肉は別に煮ておいて、盛りつけの時にシチューをかけるんです。

網島茉莉

あー、なるほど。

稲本美夕

とてもおいしかったわ。冷たいばっかりだとお腹も冷えちゃうけど、野菜が温かいからその心配もないのよね。今日は暑かったからとても食べやすかったわ。

遠見結奈

どうもです。

うん、大成功、かな。前から試してみたかったレシピ。ぶっつけ本番で、しかも大人数だったけど、うまくいってよかった。

狛野比奈

結奈ねぇ。

遠見結奈

あ、比奈……。

背の高い網島先輩と稲本先輩の間から、小柄な比奈がひょこっと顔を出してくる。

比奈もシャワーを浴びてきた直後だから、当然、髪もまだ濡れたままで……。

シャンプーの香りがふんわりと漂ってくる。合宿のために、二人で買い物に行った時、おそろいで選んだもの。

といっても、私が普段使っているシャンプーの旅行用サイズのを買ったら、比奈も同じのを選んだだけなんだけど。

遠見結奈

あ、もう、またちゃんと乾かしてない。髪が傷むから、水気はちゃんと取った方がいいって言ってるでしょ。

狛野比奈

すぐに乾くよ。ね、明日の朝ご飯、なに?

遠見結奈

え? えっと、おにぎりのバイキング。

狛野比奈

えっと、高菜とひじきと鶏そぼろ!

遠見結奈

はいはい、ちゃんと入れといてあげるから。

狛野比奈

やた。

にっこりと比奈が笑う。う、なんだろう、その顔を見ただけで、ちょっと鼓動が早くなる。

網島茉莉

バイキングって?

遠見結奈

あ、いろんな具のおにぎり、たくさん作っておくんで、それをいろいろ選んで食べてもらおうかなって。

遠見結奈

朝はけっこう、食べる量が人によってバラつくんで、そうした方がいろいろと無駄がでないかと思って。

遠見結奈

あ、もし余ったら、いろんなとこにお裾分けしてもいいですか?

網島茉莉

なるほどねー。いや、ほんといろいろ考えてるんだね、結奈ちゃん。

稲本美夕

朝は食欲がでない子もいるしね。いいわよ、余ったのは結奈ちゃんの好きにしていいから。

遠見結奈

はい。どうもです。

網島茉莉

ところでさ、リクエストって聞いてくれるの?比奈の好きなのばっかじゃなくってさ。あ、あたし、塩気強めの鮭とか好きなんだけど。

遠見結奈

え、ええ?

「あ、あたし、海苔の佃煮」「あたしもシャケ好き!」「高菜! 高菜!」「かやくご飯とか、チャーハンとか、ご飯に味がついてるのがいいな」「絶対ツナマヨ!」

うわ、いっせいにみんな、好きなおにぎりの具をリクエストしてきた。

ちょ、ちょっと待って。さすがにそんなにたくさん種類は用意できないし、もうそれって、個人個人に作ってあげるのと一緒になるんじゃ……。

稲本美夕

こら、みんな、いい加減にしなさい! 結奈ちゃんだって、そんなにたくさん作れるわけないでしょう!

あ、助かった……。稲本先輩、さすが副部長さんだ。

稲本美夕

気にしないでいいからね、結奈ちゃん。予定通りに作ってくれればいいから。

遠見結奈

あ、はい。

稲本美夕

ほら、みんな、戻るわよ。ごめんね、結奈ちゃん、引き留めて。シャワーの時間、なくなっちゃうわね。

網島茉莉

明日もよろしくね。楽しみにしてるから!

遠見結奈

は、はい。

稲本先輩、まるで遠足を引率する先生みたい。部長の網島先輩さえ引っ張っていく。

狛野比奈

結奈ねぇ。

遠見結奈

あ、なぁに?

狛野比奈

後で、結奈ねぇの部屋、遊びに行っていい?

遠見結奈

いいけど、消灯時間にはちゃんと戻るのよ?

狛野比奈

ん。

遠見結奈

それから、宿題、持ってきてるんでしょ? 見てあげるわ。

狛野比奈

えー。

遠見結奈

冗談よ。また後でね。

狛野比奈

ん。

比奈はうなずいてから、パタパタと陸上部のみんなの列に戻っていく。

遠見結奈

ふぅ……。

それを見送って、私はほっとしてため息をついた。なぜだかわからないけど、ちょっと息が詰まったような感じがしていたから。

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