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okujou_no_yurirei-san:1308

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連休明けの火曜日。今日は夏休み前のテストの日。

定期テストじゃないとはいえ、悪い点をとれば、夏休みに補習が待っている。朝の通学路、参考書を読みながら歩いている人もいる。みんな、それなりに必死。

私も、連休中はテスト範囲の復習に費やして、それなりに準備してきたつもり。補習を受けなきゃならないほど、悪い点を取ることはないだろうけど。

それでも、少しだけ早く学校に行って、もう一回、ノートでも見直しておこうかなって思っていた。

みんな、それくらいは真剣に、テストに向かっているはずなんだけど。

椿小路を歩いていた時に声をかけてきたのは、そんな雰囲気のまったく感じられない人だった。

古場陽香

よ、結奈! 実は待ってた!

遠見結奈

陽香。おはよう。なに、待ってたって。

古場陽香

へへ、実はさ、きちゃったんだよ、また!

なんだろう、すごくヤな予感がする。そしてたぶん、この予感、当たる気がする。

古場陽香

前のはサンザンだったけど、今度はちがうぜ!? 今度こそ、結奈のロックを揺さぶってみせる!

古場陽香

オレの愛の歌、第二弾の歌詞ができたんだ!

あぁもう、なんだかいろいろちがう。

まず、私のロックを揺さぶってどうする。ロックってなに? 心ってことでいい?そして、揺さぶらなきゃならないのは、あなたの好きな人でしょ?

あと、それから。

遠見結奈

あのね、陽香。あなた、今日がなんの日だかわかってるの?

古場陽香

へ?

うん、この顔、絶対わかってない。

遠見結奈

今日は夏休み前テストの日よ?

古場陽香

え? あ、ああっ! ああっ!

古場陽香

うっわー、すっかり忘れてたぜ!

遠見結奈

もしかして、全然勉強してないの?

古場陽香

いや、土曜日くらいまでは憶えてたんだけどさ、急にすげー歌詞が降りてきたもんだからさ! もうそうなったら、勉強どころじゃねぇべ?

遠見結奈

同意を求めないでよ……。

古場陽香

それよりもさ! 見てくれよ、新しいオレのラブロックをさ!

遠見結奈

ごめん、私はテストがあるの。早く学校行って、ノートとか見直しておきたいの。

古場陽香

うわあああっ、頼む、結奈様! 手間取らせないからさ!

遠見結奈

他の友達に頼んだら?

古場陽香

そう言わずにさ! なんていうか、こないだ、見てもらった時、結奈、すっげぇハッキリ意見してくれただろ?

古場陽香

けっこうキツかったけどさ、すっげータメになったんだよ。だからもう、結奈に見てもらわないと完成しないって感じになってさ!

遠見結奈

はぁ……。

そういうふうに言われると、断りづらいなぁ……。

サチさんたちも陽香のこと、気付いていた。そうなると、陽香がこの先、こういうことで問題を抱えると、結局、私がお手伝いすることになるだろうな。

そう考えればあきらめもつくか……。

遠見結奈

わかったわよ……。

古場陽香

マジか!? ありがと、サンキュ!

両手を合わせて私を拝むと、陽香はカバンの中を漁りだした。そして、こないだと同じノートを取り出す。

古場陽香

これこれ! さぁ、今回もキッツいの、頼むぜ!

遠見結奈

はいはい……。

私はあきらめ半分で、ノートに書かれた文字を追った。

『キミは時の門番 冷ややかな目に見下ろされて 恋におちるなんて』

『恋が始まったゼロ秒 名前で呼んでくれた日の幸せ』

『刻まれるのって時間だけなのかな? 一緒に居る時 キミはオレの何をみてる?』

遠見結奈

……へぇ……。

古場陽香

ど、どうだ!?

遠見結奈

いや、ごめん、ちょっと意外だった。陽香ってこういう詞も書けたのね。

古場陽香

おおっ!? なんかけっこう反応いいな、結奈!

うん、ちょっとほんとに意外だった。まぁ、こないだのがひどすぎたのもあると思うんだけど。

そこに書いてある歌詞は、一作目よりだいぶマシに見えた。ちゃんと歌詞になってるって感じ。だけど。

遠見結奈

ちょっと、らしくない気もする。

古場陽香

おお!?

遠見結奈

陽香らしくないって言うのかな……。無理してる感じ?

古場陽香

うーん……、そうかぁ……。

遠見結奈

あ、あの、ごめん。こないだのよりよくできてるとは思うわ。

古場陽香

あー、OKOK。わかってる。なんとなく、結奈の言いたいことはわかる。

古場陽香

つまり、ロックが足りないってことだよな!?

遠見結奈

そ、そういうことなのかなぁ……。

古場陽香

そうだよな、オレが、オレの気持ちを伝えるんだしな。ロックのねぇ歌詞なんて、オレの歌じゃないもんな!

古場陽香

そんなんじゃ伝わるわけねぇもんな!

遠見結奈

う、うん……。そうなの、かな?

古場陽香

ああ、さすがは結奈だ! 足りないとこにズバっと斬り込んでくるぜ!

遠見結奈

参考になればいいんだけど……。

古場陽香

ああ、バッチリ参考になったぜ! これでもっとスゲぇ歌詞ができる気がするぜ! オレの最高のロックがさ!

納得してくれたのなら、いいのかな……。とにかく、これ以上、歌詞について意見を求められても答えられない。

ごめん、陽香。話題を変えさせて。

遠見結奈

でも陽香、ほんとにテストは大丈夫なの? 赤点取ると、夏休みに補習があるのよ?

古場陽香

あー、補習かー。じゃ、気にしなくていいや。

遠見結奈

ちょっと!

古場陽香

だってオレ、もう補習確定してるからさ。

遠見結奈

え? 陽香ってそんなに普段の成績悪かったの?

古場陽香

いや、ちがうちがう。まぁ、そんなに頭良くもないけどさ。ほら、オレ、遅刻常習犯だからさ。

古場陽香

それの罰で、もう夏休みに補習受けることに決まってんだよ。

遠見結奈

あ、そうなんだ……。

遅刻のペナルティにそんなのがあるなんて知らなかった。確か、5回連続で太鼓当番になるってのは聞いたことあったけど。

というか陽香、だからってテストの勉強しなくていいってことにはならないのよ?

古場陽香

あー、そういえば、あの人も遅刻補習のカントクに学校来るって言ってたな……。

古場陽香

おお、スゲぇ! そうすると、補習期間中、毎日会えるってことか!?

なにを喜んでいるのよ……。

と言うより、なにを口走っているの? この流れだと、聞かずにいられないじゃない。

遠見結奈

あの人って陽香の好きな人?

古場陽香

ん? おう、そう!

遠見結奈

えっと、誰?

知っているんだけど。どうだろう、まさかすんなり教えてくれるとは思わないけど……。

古場陽香

ん? ああ、愛来だよ。C組の。風紀委員の。有遊、愛来。

うわ、答えた。こんなあっさり。しかも、愛来? 名前呼び捨てなの? もうそんなに仲良くなってるの?

古場陽香

そうそう、結奈のアドバイスのお陰だぜ! まずはトモダチってな。ダンカイだよ、ダンカイ!

古場陽香

オレ、愛来と友達になれたんだぜ!

遠見結奈

そ、そう……。

そう言えば、そんなアドバイスもした。その時はまさか、陽香の好きな人が同性だったなんて知らなかったけど。

古場陽香

一歩、オチカヅキになれたんだぜ! これでラブロックが完成すれば、カンペキだな!

すごい、前向きだな。うまくいかないことって考えないのかな。だって、相手は同性なのに。

遠見結奈

えっと、あの、さ。

古場陽香

ん?

遠見結奈

C組の有遊さんってことは、その、同じ学校なんだよね?

古場陽香

ん。そうだけど。

遠見結奈

あのさ、同じ女同士だってこと、わかってるの?

古場陽香

へ?

私の質問に、陽香はぽかんとした顔をして。しばらく黙っていて。

古場陽香

あ、ああっ! そう言えばそうだな!

なんて……、今気付いたような声をあげて。

いや、たぶん、ほんとに今気付いたんじゃないかな。そんな気がする。

古場陽香

うわー、女同士じゃん。全然、気付かなかった!

古場陽香

はぁぁ……。

まぁ、気付いてなかったのはいいとして……。でも、今、気付いたでしょ? どうするの?

古場陽香

うーん……。

古場陽香

でも、これってすごいロックな恋だよな!

遠見結奈

そ、そうじゃないでしょ? 自分が変だと思わないの?

古場陽香

そうか? だって好きなものは好きなんだしさ。女同士だからって関係ないだろ?

古場陽香

結奈は? そんなに変だと思うか?

<01>そんなに変だと思うか?

<01>変だと思う

<01>よくわからない

遠見結奈

変……、だと思うわよ。だって、同性なのよ?女同士なのよ?

古場陽香

だから、そんなのわかってるって。でも、好きなんだしさ。

遠見結奈

あなたがそうでも、相手の人がそう思うとは限らないでしょ?

古場陽香

ああ、そっか。でも、オレが愛来のこと、好きだって伝えなきゃわかんないだろ?

遠見結奈

そうかもしれないけど……。

遠見結奈

……よくわからないわ。私、そんなこと考えたこと、ないから……。

古場陽香

ん、オレもそんな難しいこと、考えたことねぇや。

古場陽香

でもさ、オレはとにかく愛来のこと、好きなんだ。愛してる!

古場陽香

だから、伝えたいんだ、歌で! オレのロックで!

遠見結奈

そ、そう……。

少なくとも、陽香の方は少しも気にしていないんだ。あれこれ気にしている自分がバカらしく思えてくる。

毒されているのかな、最近の環境に。

遠見結奈

でもちょっと待って、陽香。あなた、こないだ私が、好きな人ってバンドの人って聞いた時、全員女だから考えられないって言ってなかった?

古場陽香

え? だってそうだろ? あいつらと恋愛?考えられねーって。

古場陽香

愛来とはなにもかもちがうんだぜ?

なんとなくわかった。

陽香にとって、有遊さんだけが好きになった特別な人で、他は関係ないんだ。女同士だとか、そういうことは。

そのまま、私は陽香と一緒に学校へ向かった。呼び止められたのは椿小路だったから、そこから5分もかからないんだけど。

古場陽香

よ、おはよ、愛来!

正門には、有遊さんが立っている。遅刻なんてしたことなかったから、今まで気にしていなかった。

有遊愛来

おはよう、陽香。

有遊さん。陽香の好きな人。

背筋がまっすぐで、ちょっと陽香との組み合わせってのが考えづらかったけど。

有遊愛来

今日は早いんだな。テスト勉強か?

古場陽香

いや、それがテストのこと、すっかり忘れててさ!

有遊愛来

はは、らしいな。

そんな二言三言の会話だけ。

でも、たったそれだけ言葉を交わしただけでも、陽香はとても幸せそうで、謎の鼻歌を鳴らしながら玄関ホールへと入っていった。

無事に、夏休み前のテストも終わった。さすがに一日だけとはいえ、科目も多くて、ちょっと疲れたけど、それなりの点数はとれた感じ。

一息つきに出た屋上で、サチさんと恵から、剣峰さんのための例のキラキラ大作戦の経過を聞いて、私は驚いた。

遠見結奈

え? 第二段階って終わっちゃってたの?

永谷恵

え? あれって結奈がやったんじゃないの?

遠見結奈

ううん。全然知らなかった……。

なんでも、連休前の金曜日、サチさんたちオススメの女の子が素敵に見えるスポットの一つ、夕暮れの星館の大座敷で、剣峰さんと園生先生は遭遇していたみたい。

榎木サチ

阿野ちゃんと話しているところに、ちょうど月代先生が来たのよ。

遠見結奈

そ、そうだったんだ……。

なんか……、いろいろ作戦を考えていた方としてみれば、ちょっと残念ってわけじゃないけど、拍子抜けしたっていうか……。

永谷恵

ふふふ……、その後、園生ちゃん、座敷でなにか考えていたみたい。きっとあれは、桐さんの魅力に戸惑っていたのよ。

榎木サチ

そうね、いろいろ月代先生も考えてるみたい。桐ちゃんのこと、かなり気になってるみたいよ。これはもう一押しって感じね。

永谷恵

いよいよ、作戦も最終段階よ、結奈!

遠見結奈

そ、そう……。

永谷恵

あとは、この屋上ね! さ、なにか作戦を考えて、結奈!

遠見結奈

そんなこと言われても! こんなとこ、階段の踊り場とかじゃないんだから、二人が偶然会ったりするわけないでしょ?

永谷恵

そこを考えるのが結奈の役目でしょー?

遠見結奈

簡単に言わないでよ……。

確かに、晴れた日の屋上は、遠くの山までが見通せるし、風も心地よくていい場所だと思う。

でも、基本的には用もないのに行ったりはしない場所でもある。実際、私は屋上で剣峰さんとも園生先生とも会ったこと、ないし。

その二人を、どうやって屋上に連れていけばいいんだろう?

遠見結奈

なんとかしろって言われても……。……あ。

運がいいのか悪いのか。なにも考えつかないまま廊下を歩いていると、前から剣峰さんが歩いてくる。

遠見結奈

えっと、こんにちは、剣峰さん。

このままだとすれ違うし、挨拶もしないのも変だし。

剣峰桐

あ、遠見さん。こんにちは。

遠見結奈

もう、帰り?

剣峰桐

あ、いや、部活に行くとこ。

ということは、園生先生と会うことはあるのか。でも、どうやって屋上へ? 数理部の部室は星館校舎にあるけど、よほどのことがないと、屋上なんて行かないはず。

まぁ、チャンスを待てばいいかな。無理をしないで。

他に話すこともないし、今日はこのまま、さよならって言っておしまいかな。そう思ったけど、剣峰さんが手から下げていた、小さな紙袋に私は気付いた。

手のひらに乗せられるくらいの小さな紙袋。お店のロゴが入ってるシンプルなもの。下げ手についているリボンがかわいい。

遠見結奈

どうしたの、それ。かわいいね。

剣峰桐

あ、これ? うん、ちょっと、月代ちゃんに、ね。誕生日プレゼント。

遠見結奈

へぇ、園生先生、誕生日、今日だったんだ。

剣峰桐

ほんとは一昨日だったんだけど、休みだし、テストがあったから。だから、今日持ってきたんだけどね。

剣峰桐

でも、月代ちゃん、もらってくれるかなぁ……。

剣峰さん、不安そうな顔。

そこにつけ込むみたいで気が引けるけど、これはチャンスかもしれない。

遠見結奈

えっと、まだ、園生先生、怒ってるの?

剣峰桐

あー、ちがうちがう、こないだも言ったけど、月代ちゃんに怒られてるわけじゃないんだけど。

剣峰桐

ちょっと馴れ馴れしくしすぎちゃったみたいでさぁ。

遠見結奈

ふーん……。

遠見結奈

それじゃ、さ。そのプレゼント、星館校舎の屋上で渡してみたら?

剣峰桐

え? 屋上で? なんで?

遠見結奈

え、ええと、ほら、屋上みたいな高いとこって、なんとなく気分がよくなるでしょ。今日は天気もいいから、景色もすごくいいしね。

遠見結奈

そういう場所なら、プレゼントも気分よくもらってくれるんじゃないかなって。

剣峰桐

うーん、屋上かぁ……。あんまり、人のいるとこで渡すと、月代ちゃん、気にしそうだなぁ。

遠見結奈

放課後なら、ほとんど人、いないんじゃないかな。

剣峰桐

そっかなぁ……。

遠見結奈

まぁ、気休めだと思って。

剣峰桐

ん、ありがと。

これでどうかな? まぁ、この程度のアドバイスでうまくいくとは思わないけど、なにもしないよりマシかな。

だめだったらまた、別の機会を探せばいいし。

遠見結奈

それじゃ、私、帰るね。

剣峰桐

ん、じゃあね。

剣峰さんに軽く手を振って別れて。どうしよう、一応、このこと、サチさんたちに教えておいた方がいいのかな?

そう思ったけど、テストが終わった解放感もちょっとあって。

帰るまでに、サチさんか恵、どちらかに会ったら伝えておけばいいかな、そのくらいの気持ちで、私は玄関ホールに向かった。

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okujou_no_yurirei-san/1308.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)