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okujou_no_yurirei-san:1301

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梅雨ももうすぐ明けるはず。まだ雨の日もあるけど、そんなの関係ない!

わたしにはもう、真夏の太陽がさんさんと輝いてる! そんな気分だった。

永谷恵

それでね、その日はずっと、サチさんに膝枕してもらったの!

永谷恵

でねでね、次の日は一日中、学校デートしてね!

永谷恵

ずーーっと、手をつないでいたのよ!

もう、サチさん、素敵! 大好き!

6月をちょっと憂鬱に過ごしていたわたしだったけど、最後の金曜日に、そんなの全部、吹き飛んじゃった。

わたしの大好きなサチさんが、ちゃんと二人の記念日を憶えていてくれたから! しかも、プレゼント付きで!

結奈が来てから、ちょっとサチさん、わたしのことほったらかしかなって思ってたけど、そんなことなかった。

ああもう、うれしい!

永谷恵

ほんとにサチさん、大好き!

遠見結奈

はいはい……。

永谷恵

なぁに? そのつまらない反応。

遠見結奈

さっきからずっと、そればっかじゃない。いい加減、聞き飽きてるの。

永谷恵

あら、わたしは何時間でも話せるわよ? せっかく、わたしの幸せのお裾分けしてあげてるのに。

遠見結奈

もう、お腹いっぱいなのよ……。

永谷恵

そんなこと言わないで、もっと聞いてよ~!

わたしは結奈の肩に抱きつくようにして、ひたすらに今の自分の幸せさを伝える。

結奈にもちょっとは感謝してるのよ? カップケーキ、作ってきてくれたし。味はわからないけど、気分的にはおいしかったんだから。

今日のお昼、結奈はちょっと早めにお弁当を食べ終えて、借りていた本の返却日だからって、図書室に行くとこらしい。

わたしは、もう、金曜日からのサチさんとの日々を誰かに話したくて仕方なくて。

まぁ、話せる相手なんて、結奈しかいないから、こうしているわけだけど。

永谷恵

それでねそれでね、雲見櫓に行った時、サチさんがね!

遠見結奈

それ、さっきも聞いた気がするんだけど。

永谷恵

あ、そうだっけ? でも、もっかい聞いてよ!

遠見結奈

……勘弁してよ……。

永谷恵

いや! でね、サチさんね、わたしのこと、かわいいって何度も言ってくれるのよ。

遠見結奈

はいはい……。

永谷恵

ねぇ、サチさんってなんであんなにかっこいいのかな? 優しくて、美人で、大人っぽくて!

永谷恵

あ、結奈、言っとくけど、サチさんのこと、好きになったらダメだからね? 呪うからね?

永谷恵

でも、サチさんのかっこよさを認めるのはいいわよ? 恵の素敵な恋人をね!

遠見結奈

お願い……、もういい加減にして……。

永谷恵

いいじゃない。もうちょっとだけだからさぁ。

遠見結奈

図書室では静かにしないと怒られるわよ?

永谷恵

どうせ、わたしの声が聞こえる人なんていないもの。

遠見結奈

私には聞こえてるんだけど……。もう、どこまでついてくる気なのよ……。

永谷恵

サチさんの素晴らしさを語り尽くすまでよ!

遠見結奈

私、本の返却で図書室に来てるのよ。あなたのおしゃべりを聞くためじゃ……。

永谷恵

別に返却の邪魔したりしないわよ。ふ~ん、図書室ってこんなふうになってるんだ。わたし、来たことなかったから……。

永谷恵

え……?

遠見結奈

え……?

え……? ちょっと待って、なにかおかしい。

わたしと結奈、ほとんど同時に言葉を失って、そして、顔を見合わせた。お互いに、なにか変、そこに気付いた顔。

永谷恵

ここ、図書室……?

遠見結奈

え、ええ……。

初めて、来た……。

天井まで届く本棚がずらっと並んでいる。いろんな背表紙の本でびっしりと詰まっていて。

本棚と本棚の間には、机が置いてあって、まだ午後の授業まで少し時間があるから、そこで本を読んでる人もいる。

ここが、図書室……。奥校舎の1階にある……。

わたし、生きている時は、この図書室に入ったこと、なかった。ううん、奥校舎にだって、来たことなかった。

だから、わたし、幽霊になっても奥校舎には入れなかったのに……。

遠見結奈

ね、ねぇ、恵……。あなたって、奥校舎には行けないんじゃなかったっけ……?

結奈も、同じことに気付いたみたい。

永谷恵

う、うん……。

でも、今、わたし、図書室にいる。結奈と話しているうちに、いつの間にか、ここまで来ていた。

全然、気付いてなかった。結奈に、今もそう、しがみつくみたいに抱きついて、ずっとしゃべってたから。

永谷恵

でも、ここ、図書室なんだよね……?

遠見結奈

え、ええ……。

永谷恵

なんで……?

今まで、どうやったって奥校舎には入れなかったのに。どうして、いきなり入れるようになったの?

考えても、理由なんてわからない。結奈と顔を合わせたまま、ただなんとなく、離れるのが怖くて抱きついたまま。

遠見結奈

と、とにかく、私、本を返してくるから。

永谷恵

あ、ちょっと待って! やだ、なんだか怖い。行かないでよ!

遠見結奈

ちょ、ちょっと引っ張らないでよ! 歩きにくい……、でしょ……?

え? 引っ張る? 確かに、わたし、結奈にしがみついてる。結奈から離れるのが怖くて、勝手にどっかに行ってほしくなくて、ぎゅっと。でも。

わたしは、幽霊だよ? 結奈を引き留めようとしたって、すり抜けちゃうはずなのに!

どうして、今、わたし、結奈を引っ張っていられるの?

もう、わけわかんない。とにかく、ただ、結奈の肩に回した手に力を込める。

その時、じわって、口の中に、なにか広がってきた。

それは、すごい久しぶりの感覚。甘い、味。

永谷恵

ん? あれ? 結奈、なんか口の中甘い。

遠見結奈

え? あ、飴、なめたままだった。どうしよう、図書室は飲食禁止なのに……。

永谷恵

でも、もうほとんど残ってないよ?

遠見結奈

うーん、そうなんだけど……。

永谷恵

ねぇ……。

遠見結奈

……なんで?

二人してまた顔を見合わせる。もう何度目?

永谷恵

どうして、結奈のなめてる飴の味がわかるの?

遠見結奈

こっちが聞きたいわ。どういうこと?

もうこの時、わたしはだんだん、今、なにがどうなっているのか、わかってきていた。

理由とか、方法とか、そういうの全部すっ飛ばして、わかってきた。

永谷恵

これって……。

なんでだろう、たぶん、わたしが幽霊だからかな。そんな直感。

永谷恵

わたし、結奈に取り憑いているんだね。

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永谷恵

サチさん! サチさん!

遠見結奈

ちょ、ちょっと! だから引っ張らないでよ!

榎木サチ

あら、恵に結奈さん。どうしたの? もう用は済んだの、結奈さん。

結奈の本の返却だけ済まさせて、わたしはもう一度、屋上へ。いやがる結奈を引っ張って戻った。

永谷恵

サチさん! わたし、すごいんです! すごいことできちゃった!

榎木サチ

え……?

遠見結奈

わかった! わかったから無理にそっちに行こうとしないで!

永谷恵

わたし、結奈に今、取り憑いているの! 結奈のこと、引っ張ってここまで来れたんですぅ!

榎木サチ

え……? 取り憑いたって……?

永谷恵

こうやって、結奈にぴたってくっついてると、できるの! 結奈にこうやって、取り憑いてるとね……。

遠見結奈

ちょっと! これ以上、行かないで! フェンスがあるんだから!

永谷恵

少しは、結奈のこと、操ることだってできるの! ね、結奈!

遠見結奈

な、なに?

永谷恵

飴、食べて、飴! ほら、早くしなさいよ!ポケットにまだあるの、わかるんだから!

遠見結奈

ああ、もう!

結奈の手を急かすように、ポケットへと突っ込ませる。ほら、あった! さっきからコロコロいってるの、わかってたんだから!

遠見結奈

もう……。

永谷恵

うわ、甘ぁい! ほら、結奈のなめてる飴の味とか、わかるの! ね、サチさん、すごいでしょ!

榎木サチ

え、ええ……。

永谷恵

こうして取り憑いていれば、奥校舎にだって行けるんです! これで、いろんなとこに行けちゃうんですよぉ!

永谷恵

ふふふ……、結奈のこと、好きに操っちゃうことだってできるんだから……。

遠見結奈

言っとくけど、勝手に取り憑いたりしたら許さないからね!

……結局。

その後、サチさんと一緒に結奈と話し合って。

無闇に取り憑いたりしないこととか、結奈以外の人に取り憑いたりしないこととか、いろいろ約束させられちゃったんだけど。

いざという時には、結奈も協力してくれることになって。

こんなことができるなんて、思ってもみなかった。結奈が来てから、ほんと、いろいろと変わってきてる。

これなら、もうすぐ、サチさんの願いも叶うのかな。そうしたら……。

わたしも、サチさんと一緒に行けるのかな?どこにだろう。でも、サチさんの行く場所なら、どこにでもついていく。

いつまでも、わたしはサチさんと一緒にいる。それは、ずっと前から決めていたことだから。

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okujou_no_yurirei-san/1301.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)