User Tools

Site Tools


okujou_no_yurirei-san:1207

Place translations on the >s

天気は梅雨らしく雨ばかりで、お昼は教室で食べるしかない日が続いていた。

ようやくわかってきたことだけど、百合霊の二人は、それぞれ、学校の中で入れる場所と入れない場所がある。

サチさんは屋上は大丈夫だけど、星館校舎の中には入れない。

恵は、逆に、星館校舎の中は入れるけど、サチさんが入れる奥校舎には行けないみたい。

となると、屋上でお弁当が食べられないここ最近、私は二人と一緒に、同時に話をする機会が少なくなっていた。

雨の中、外で立ち話もできないし、どうやら玄関ホールは二人とも入れるみたいだけど、そんなとこでお弁当広げるわけにもいかないし。

そういうわけで、お手伝いしようにも、方針を決めることができない、今週はそんな感じで過ぎていた。

でも、その今週も最後の金曜日。

永谷恵

結奈!

遠見結奈

あ、恵。どうしたの?

放課後。お手伝いもないし、部活動もしてない私は、阿野とちょっと話をしながら、そろそろ帰ろうかと思っていた時だった。

永谷恵

チャンスよ、大チャンスが来たわ!

遠見結奈

なに? どういうこと?

阿野に不審に思われないように、抱きつくように背中にまとわりついてきた恵に聞き返す。

永谷恵

沙紗さんに大チャンス到来なの!

遠見結奈

双野さん?

双野さん。一木さんのことが好きで、告白のチャンスを狙っているらしいというのは聞いていた。

でも、三山さんも含めて、三人一緒にいることが多くて、なかなかその機会もなく、どうしようかと考え中だった。

恵が、ここのところ見ていた限りでは、なんか、前にも増して、一木さんが三人一緒に行動しようとやっきになっているって話だったけど……。

それが大チャンス到来って?

永谷恵

今日ね、朝、正門のところで。その時もまた、三人一緒だったんだけど。

遠見結奈

ええ。

永谷恵

風が強かったでしょ、それでね、急に強い風が吹いて、その時、羽美さんの傘が壊れちゃったの。

遠見結奈

そう。それで?

永谷恵

えー、これだけ言ってわかんないのぉ?

それだけ、でしょ。なにが大チャンスなのか、さっぱりわからない。

永谷恵

いい? 羽美さん、今日の帰りは傘がないのよ。まだ、雨降ってるのに。

遠見結奈

ええ。

永谷恵

つまりぃ! 音七さんをどうにかすれば、帰りは沙紗さん、羽美さんと二人きりなのよ?

遠見結奈

そうね。それで?

永谷恵

ちょっと、まだわかんないの!?

遠見結奈

いいから早く説明してよ!

永谷恵

あんたってほんと、ダメね。いい? 羽美さん、傘がないの。そして、雨はまだ降ってて、帰りは沙紗さんと二人きりなの。

だから? もう、結論を先に言ってほしい。

永谷恵

これって、相合い傘のチャンスでしょ!?

……相合い傘? ああ、双野さんが一木さんを傘に入れてあげるわけか。

永谷恵

沙紗さん、好きな人と一つの傘で、一緒に帰れるのよ? もう、これで告白しなきゃ、いつするって言うのよ!

遠見結奈

……ああ、なるほど……。

ようやく、わかった……。でも、そんなこと、考えもしなかった。うーん、ちょっとむかつくけど、恵にバカにされても仕方ないかも。

永谷恵

さすが、サチさん! ナイスな作戦よね!

恵が思いついたわけじゃないのね。感心して損した。

永谷恵

というわけなの。ね、なんとかして、沙紗さんと羽美さんを一緒に帰れるようにしてくれない? 音七さんをどうにかして。

遠見結奈

三山さんを、どうにか……。

それが簡単にできないから、双野さんも苦労してるんじゃないかな?

でも、確かにチャンスのような気がする。

相合い傘ってどうなのって思うけど、そういうシチュエーションなら、双野さんも告白する勇気が出せるかもしれない。

遠見結奈

わかったわ。その、なんとかしてみる。

永谷恵

お願いね! もう三人とも、帰り支度してるみたいだから、急いだ方がいいわよ。

とは言ったものの、どうしよう。とりあえず、三山さんを捕まえて、なにか用事を頼むとか?

とにかく、すぐに行動しないと三人とも帰られてしまう。たぶん、三人一緒に。

遠見結奈

阿野、ごめん、ちょっと用を思い出しちゃって。

阿野藤

お? なに? なんの用?

遠見結奈

ちょっと三山さんに……。

しまった!

阿野藤

へ? ねな?

どうすればいいかなって考えて、頭がいっぱいになってた。阿野についうっかり答えちゃうなんて。

三山さんと私、ほとんど交流がないこと、阿野は知っている。どうしよう、なんて言ってごまかそう……、そう思っていたら。

阿野藤

あー、そう言えば、あたしもねなに用があったんだった。いやー、忘れてた忘れてた。

遠見結奈

え……、そ、そう?

阿野藤

あたしも一緒に行っていい?

遠見結奈

う、うん……。

阿野藤

あいよ、それじゃちょっと行きましょかぁ。

どうしよう。ちょっと迷ったけど、三山さんに用があるという阿野に、ついてこないでという理由がない。

それに、もしかしたら、阿野の用事の方で、三山さんを引き留められるかもしれない。あとは、双野さんと一木さんを先に帰らせることができれば……。

恵の話では、もう帰り支度しているということだった。

玄関ホールに行く途中、一木さんたちのクラス、B組の教室をのぞいてみたら、もう三人ともいなかった。

遠見結奈

もう、帰っちゃったかな?

阿野藤

どうかな~、放送室、行ってみる?

遠見結奈

そうね……。玄関ホールのとこ、通っていきましょ。もしかしたら、会えるかも。

阿野藤

そうだね~。

ほんとは、玄関ホールまで走っていきたいとこだけど、阿野も一緒だから、なるべく、気付かれないくらいに早足で。

阿野藤

三人一緒だろうから、見つけるのも簡単だよね~。

遠見結奈

そ、そうね。

だからこそ、双野さんはチャンスがなくて困っているんだろうし、私は三山さんを引き離せなくて苦労しているんだろうけど。

三人の中心が、双野さんが好きな一木さんってのが、また……。双野さん、ほんと大変だな……。

阿野藤

そう言えばさ~、結奈、前に、あたしに聞いたよね。あの三人の中で、誰が誰と特に仲いいか知ってるって~。

遠見結奈

え、ええ?

た、確かに聞いたけど。でも、自分でも聞いても仕方のないこと聞いたって思ってる。ここはごまかそう。ごめん、阿野。

遠見結奈

そんなこと、聞いたっけ?

阿野藤

聞いたよ~。あれ、憶えてないの?

遠見結奈

う、うん。

阿野藤

なんだ~。あたしはてっきり、結奈が百合展開に目覚めたのかと思ったのに~。

遠見結奈

な、なに、それ。

阿野藤

仲のいい子たちを見てね、この人たちがもしも百合な関係だったらどんなだろうって妄想するのだ!

遠見結奈

なによ、それは……。

阿野藤

あ、別にそんなフシダラなこと、考えてるわけじゃないですよ? もっとこう、百合ってのはきれいなものだからさ~。そこんとこ、妄想も控えめにしてますよ?

遠見結奈

はぁ……。

まぁ、なにを思ってようと自由だけど。ほどほどにしておきなさいよって思うけど。

今の私は、阿野のこと、あまりバカにもあきれたりもできないこと、してるからなぁ……。

阿野藤

結奈はどう? 百合ってありだと思う?

遠見結奈

え……?

いきなり、なにを聞いてくるんだ、阿野は……。

<01>百合ってありだと思う?

<01>まぁ、ありだとは思うけど

<01>そういうの、考えられない

遠見結奈

うーん、まぁ、そういうのもありだとは思うけど。

阿野藤

おおお、これは意外なお答え! やっぱりアレですか? 女の子が好きなんじゃない、好きになったのが女の子だったとか、そういう!?

遠見結奈

まぁ、そういうものなんじゃない? よくわからないけど。

阿野藤

おお、結奈、かっこいい! あ、でも、阿野さんに惚れるのはやめてね? あたし、リアルはダメなんで!

遠見結奈

ないない。というか、なんで他人で妄想しておいて、リアルはダメなのよ。

阿野藤

妄想は二次元の領域なんです! なんつって。

遠見結奈

はいはい……。

遠見結奈

うーん、ちょっとそういうの、考えられないかな。

阿野藤

あれ? でも、考えたことない? あの人たち、みょうに仲いいなぁ、とか、もしかしたらー、とか。

遠見結奈

……ないわよ。

最近、考えさせられることは多いけど。

遠見結奈

まぁ、考えられないって言っても、よくわからないってのが正しいかも。

阿野藤

ほう。

遠見結奈

でも、阿野、他の人見て、そんなこと、考えてるの?

阿野藤

え、いや、まぁ、時々は。よくあることですよ、我々のギョーカイでは。

遠見結奈

はぁ、それじゃ、私と阿野も、他の人にそう見られてたりしてね。

阿野藤

え、ええええ!? ちょ、ちょっとそれは困るなぁ~。

遠見結奈

なんでよ……。自分だってしてることでしょ。

阿野藤

こういうのって、自分を含めちゃダメなんだよ~!

遠見結奈

そうなの? ほんと、よくわかんない……。

阿野とそんな、くだらないようなこと、話しているうちに、玄関ホールに着いていた。一木さんたち、まだ、帰ってないといいけど……。

私が玄関ホールの中を見渡していると、隣の阿野が声をあげた。

阿野藤

あ、いたいた~。ねな~。

手を振っている阿野の視線の先を追うと、そこには三人そろって雨の様子をうかがってるっぽい、一木さんたち。

三山音七

あ、阿野~。どうしたの~?

阿野藤

いや~、それがさ~。

阿野藤

昨日、教えた動画、あるでしょ~。あれ、なんか、削除されちゃったみたいでさ~。

三山音七

え~、ほんと~?

阿野藤

うん~、なんか、投稿者削除されちゃってましたよ~。

三山音七

あ~……、やっぱすぐ見ておけばよかったかなぁ。でも、夕べはもう眠くってさぁ~。

阿野藤

ふはは、だと思ったよ~。だが、こんなこともあろうかと!

三山音七

お?

阿野藤

しっかり、ダウンロードしておきました!

三山音七

おお~。

阿野藤

どう? さすがの阿野さんでしょ~?

三山音七

うん、で、そのファイルは?

阿野藤

ケータイの中!

三山音七

で、ケータイは?

阿野藤

教室に忘れてきた!

三山音七

さすがだね、阿野~。

阿野藤

あははははは~。

なんだろう、この二人の会話。ハラハラしてもいいのに、なんか気が抜ける……。

阿野藤

悪いけど、ちょっと取りに来てくれる? それとも、教室で一緒に見てく?

三山音七

ん~……。

三山さん、ちょっと考えてる。一瞬だけ、一木さんと双野さんの方を見てから。

三山音七

しょうがないな、阿野は~。んじゃ、ちょっと教室までお邪魔させてもらうよ~。

あ、やった。もしかしたらこれで、双野さんたちだけ、先に帰ってもらえるかも。

こないだもそうだけど、阿野ってほんと、こういう頼み方が絶妙だな。まぁ、阿野の忘れ物癖に原因があるんだけど。

三山音七

んじゃ、そういうわけだから~。悪いけど、二人、先に帰っててくれる?

一木羽美

えー、ちょっと音七!

三山音七

ごめんごめん、でも、これ逃すと、阿野のことだから、また忘れられちゃいそうなんだよね~。

阿野藤

いや~、お恥ずかしぃ~。なんか照れちゃうなぁ~。

ほめられてはいないのよ、阿野。

一木羽美

でも、沙紗の買い物、一緒に行くって言ったじゃない!

三山音七

だからごめんってば~。そっちはそのうち、埋め合わせするからさ~。

一木羽美

んー……。わかった。どんくらいかかるの?待ってるからさ。

え? 待っちゃうの?

三山音七

やだよ、待ってる必要ないってば。

一木羽美

音七、置いていけないでしょ!

三山音七

ありがたいんだけどさ、それは。でも、あたし待ってると、沙紗の買い物、時間なくなっちゃうよ?

一木羽美

え、そんなに時間かかるの?

三山音七

動画見たり、いろいろするから。あたし待ってて、沙紗の買い物の時間、なくすの?

一木羽美

え? う、うーん……。

三山音七

ごめんってば。次はちゃんと付き合うからさ~。

一木羽美

……もう、しょうがないなぁ……。

一木羽美

でも、次は絶対、三人で行くからね!

三山音七

はいはい、ごめんよ~。

なんか……、前もこんな感じだったな。阿野が三山さんをうまく引き留めてくれて。それで、双野さんと一木さんが二人っきりになれて。

まぁ、前の時と同じで、また、私はなんの役にも立てなかったわけだけど。阿野と三山さんに助けられてる。

三山音七

そゆわけで、沙紗、ごめんね~、付き合ってあげられなくてさ~。

双野沙紗

ん? あ、ああ、いいよ、気にしなくて。

三山音七

ん、そんじゃ、羽美と二人で行っといでよ。

双野沙紗

あ、うん……。

三山さん、ちょっとだけ、そうして双野さんになにか、話しかけて。

三山音七

それじゃ、またね~。

一木羽美

うん、ばいばい。音七、用がすんだら、ちゃんと家に帰るんだよ? 学校で寝たらダメだよ?

三山音七

はいはい、わかってるよ~。

そうして、三山さん、玄関ホールを出て行く二人に、ひらひらと手を振って。

双野さんは、出口で黒い傘を開く。そこに一木さんが入っていって。

二人並んで、正門の方へと歩いて行った。

はぁ……、なんとかうまくいった……。

私が、心の中でほっと息をついたのと同時に。

三山音七

やれやれ~、やっと帰ってくれたか~。

三山さんのそんな声が聞こえた。

小さなつぶやき。ちょっと前を歩く阿野には聞こえていないくらいの。

三山音七

ようやく、二人っきりにできた~。これで沙紗もなんとかしてくれるといいんだけど。

え? どういうこと?

三山さんも、双野さんと一木さんを二人っきりにしてあげたかったってこと?

でも、それって……。

三山音七

世話が焼けるったらないよ~。ね、遠見さん。

遠見結奈

え……?

三山音七

あれ~? 遠見さんも気付いてたんじゃないの? 沙紗のこと。

遠見結奈

え、あ、あの……。

<01>遠見さんも気付いてたんじゃないの?

<01>まぁ、なんとなく……

<01>え? なんのこと?

遠見結奈

う、うん……、まぁ、なんとなくだけど……。

三山音七

あ、やっぱり~。あんま親しくない遠見さんにもばれちゃうほどなのにな~。なんで羽美が気付かないかな~。

遠見結奈

あの、私、その……。

三山音七

あ、うん、別にいいよ、気にしなくて。なんとなく、そんな気がしたから聞いただけだからさ~。

三山音七

まぁ、あたしゃ、沙紗がじれったくて仕方なかったから、ちょっと助けてあげただけだしね~。阿野が話しかけてきてくれて、ちょうどよかったさ~。

遠見結奈

う、うん……。

そうだったんだ、気付いてたんだ、三山さん。それで、阿野に付き合って、残ってくれたんだ。

三山音七

まぁ、羽美が沙紗のこと、好きかどうかわかんないけどさ。

三山音七

そんでも、沙紗の場合、言っちゃった方がいいと思ったんだ~。

遠見結奈

え、えっと、その、なんのこと?

どう答えようかと考えて、結局、私はごまかすことにした。

三山音七

あれ、ちがったかな? まぁ、いいか~。

三山音七

別にかくすことでもないしね~。沙紗、羽美のこと、大好きなんだよ。

気付いてたんだ、三山さん。うん、ちょっと隠した方がいいとは思うけど。

遠見結奈

そ、そう……。

三山音七

あたしから見たら、もうバレバレでさぁ。なんで羽美が気付いてあげらんないのか、不思議なくらい。

三山音七

あ~、うん、できれば、あんまり他の人には話さないでおいてくれる?

遠見結奈

ええ。

三山音七

ちょっとさ、もう沙紗、見てらんないくらいじれったかったからさぁ。助けてあげよっかと思って。阿野が話しかけてきてくれて、ちょうどよかったさ~。

遠見結奈

う、うん……。

三山音七

まぁ、羽美が沙紗のこと、好きかどうかわかんないけどさ。

三山音七

そんでも、沙紗の場合、言っちゃった方がいいと思うんだよね~。

三山音七

羽美も、だからって沙紗のこと、嫌いになると思わないしね~。羽美のアレ、友達ってもう、病気だからさ~。

三山音七

ちょっとここのとこ、それがさらにすごくってさぁ。あたしもちょっと困ってたんだ。沙紗もかわいそうだしさ~。

三山音七

まぁ、ちょっとしたお節介なんだよ。うまくいってもいかなくても、羽美が沙紗と友達、やめるわけないと思ってるんだ、あたし。

遠見結奈

そう……。

ちょっと、いやかなり、三山さんの見方が変わった。

いつも眠そうにしていて、あまりまわりに気を遣わないタイプの人だと思ってたけど……。

けっこう、鋭いところがあるんだな……。そして、友達のためになんとかしてあげようって思ってるんだ……。

阿野藤

あれ~? なに二人してひそひそ話してるの~?

私と三山さんの会話、小さな声でだったから、阿野には聞こえていなかったみたい。

阿野藤

なになに~? いつの間に二人、そんなに仲良くなったの? あれですか? もしかして新ジャンル? ゆなねなってありですか?

遠見結奈

なに言ってるのよ……。

三山音七

やめてよね~。そんならあたしゃ、阿野結奈をおしちゃうよ~。

阿野藤

ぎゃ~、カンベンしちくり~!!

そんな会話をしながら、三人で教室へと向かった。

今ごろ、双野さんと一木さんは二人きり。同じ傘の下で。

なにを話しているのかな……。

grpo

grpo_ef

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

okujou_no_yurirei-san/1207.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)