User Tools

Site Tools


okujou_no_yurirei-san:1204

Place translations on the >s

園生月代

お願い、剣峰さん待って!

剣峰桐

ごめんなさーい!!

な、なにごと!?

昨日、剣峰さんを逃がしてしまった、その翌日。

今日も、なんとか見つけ出して、園生先生のところに連れて行こうかと考えて、校内を捜し回っていた時だった。

その剣峰さんと園生先生の声が、響いてきた。続いて、足音。

なにごとと、ひょっこり声の聞こえてきた廊下をのぞき込んで見れば。

剣峰桐

うわっ、あぶなっ、ごめん!

私の目の前を、剣峰さんが駆け抜けていった。

遠見結奈

え!?

園生月代

あ、遠見さん! 剣峰さんを捕まえて!

え? 園生先生がその後を追いかけてこっちに。あ、ああ、剣峰さんを追いかけてるんだ!

遠見結奈

は、はい!

慌てて、剣峰さんが走り抜けていった方へ、私も追いかけようと、して。

園生月代

あ、遠見さん! 廊下は走っちゃダメよ!

いや、ちょっと! 今は見逃してくださいってば! というか、先生だって走ってるじゃない!

ごめんなさい、先生! 心の中であやまって、私も駆け出す。

遠見結奈

確か、こっちの方に行ったはず!

剣峰さんが消えた廊下の角を、曲がる。

遠見結奈

見えた! 剣峰さん!

私は走る! うわ、こんなに全力で走るの、体育の授業以外、考えられない。

上から見ればコの字型の星館校舎。直線の距離ってどのくらいあるんだろう。考えたこともなかったけど。

遠見結奈

待って! 剣峰さん!

園生月代

廊下は走っちゃ……、ダメ~……。

あ、後ろから聞こえてくる園生先生の声がヘロってる。先生、そんなに運動は得意じゃないのかな?

遠見結奈

今度は、こっち……? あ、み、見つけた……!

よし、距離はちょっと詰まってるみたい。

私もそんなに運動は得意じゃないけど、走るだけならなんとか。剣峰さんもそんなに速い方じゃないみたい。少なくとも、私よりはちょっと遅いかも。

遠見結奈

これなら、追いつけるかも……!

遠見結奈

!?

二度目の角を剣峰さんが曲がった直後、聞こえたのは、教室の扉を思いっきり開く音!

遠見結奈

教室の中に隠れた!?

私は、角を曲がってすぐに、開けっ放しになった教室をのぞき込んだ。

遠見結奈

い、いない……? あ!

そして、すぐにまた、教室の扉を開ける音! 廊下の先を見れば、走りながら扉を開けていく剣峰さん!

遠見結奈

しまった!

剣峰さん、頭いい! 逃げるついでに、扉を開けて、隠れたと思わせたんだ!

慌てて、私は追いかけ始める。まずい、あの先は……!

遠見結奈

階段!

まずい! どっちに行った!?

永谷恵

結奈、上よ!

恵!?

反射的に声に従って、私は階段を駆け上がり始める。うわ、けっこうキツい……。

遠見結奈

め、恵……! 一緒に追いかけて……!

grpo_bu0

永谷恵

う、うん、でも……。

遠見結奈

なに!

私は隣を宙に浮いて走ってる? 恵に頼む。でも。

永谷恵

その、わたし、足、そんなに速くなくて……。

遠見結奈

は? 飛べるんでしょ!? 関係ないでしょ!?

走りながら話すの、けっこう疲れる!

永谷恵

で、でも、飛ぶスピードって、生きてる時の走る速さとそんなに変わんないんだもん!

あーもう!

遠見結奈

壁、抜けられるんでしょ……! ちょ、ちょっとでもいいから、先回り、して、どっちに行ったか、教えてくれるだけでも、いいから……!

い、息が切れてきた……!

永谷恵

う、うん!

幽霊も走ったら疲れるのかな、息、切れたりするのかな。いや、今はそんなこと、どうでもいい!

って、ああ! 見失った! どこ!? もう、とりあえず、まっすぐ行く!

grpo_bu0

永谷恵

結奈、後ろ!

遠見結奈

え!?

振り返ると、教室から飛び出た剣峰さんが、私が今来た方へと走っているのが見える。

こ、今度は隠れてたの!?

遠見結奈

ひっかからないでよ、恵!

永谷恵

ゆ、結奈だってひっかかったじゃない!

遠見結奈

もう……! そうだ、サチさんは!? サチさんも呼んできて!

永谷恵

ダメよ! サチさん、この校舎には入れないもの!

そうだった!

遠見結奈

それじゃ、外、外を見張ってってお願いして!

永谷恵

う、うん!

遠見結奈

伝えたら、すぐに戻ってきてよ!

永谷恵

わ、わかった!

園生月代

剣峰さん!

あ、先生と挟み撃ちにできた!?

剣峰桐

ぎゃー、月代ちゃん!

園生月代

あ、待ってってば!

あ、また階段!?

遠見結奈

ど、どっちに行きました!?

園生月代

し、下……!

遠見結奈

はい!

今度は駆け下りる。ちょ、ちょっと怖い! 全力疾走の階段降りって怖い!

でも、足が止まらない!

というか、どこまで逃げるの、剣峰さんは!

階段、駆け下りて、廊下に出て、右、左……。右だ!

遠見結奈

待って、剣峰さん!

剣峰桐

な、なんで!? なんで遠見さんまで追っかけてくるの!?

理由なんて聞かないで。説明できないから!

ああもう、廊下にいる人が、こっち、見てる……。こういう目立つの、嫌だったのに!

grpo_bu1

園生月代

剣峰さぁぁぁん!

剣峰桐

ちょ、ちょっとカンベンしてぇ! マジでホントぉ!

だったら大人しく捕まってよ!

もう何度目? また廊下の角を曲がる! うわ、いない! いるのは恵だけ!?

遠見結奈

恵、どっち!?

grpo_bu0

永谷恵

え、わ、わかんない、今、サチさんに伝えて戻ってきたばっかで……。た、たぶん、上?

遠見結奈

信じるわよ!

また、階段を駆け上がる。その踊り場のところで。

遠見結奈

うわっ!

狛野比奈

!? ゆ、結奈ねぇ?

比奈!? なんでこんなとこに? ああ、どうでもいい!

狛野比奈

なにしてるの、結奈ねぇ!

遠見結奈

ごめん、ちょっと!

立ち止まって話している暇もない! 比奈はあとでごまかすとして、剣峰さんを!

狛野比奈

なに、してるの?

うわ、さすが、陸上部……!

比奈は、必死に足を動かしている私に、わけもなく追いついて、しかも余裕ある感じで並んで走っている。

でも、これ、使えない!?

遠見結奈

ちょ、ちょっと比奈、手伝ってくれる……!?

狛野比奈

ん、なぁに?

遠見結奈

い、今、ちょっと人を、追いかけてて……。つるぎ、みね、さんって人……! ちょっと背の高い、二年生で……!

遠見結奈

メガネ、かけてて、髪、結んでて、確か、紺のベスト……!

狛野比奈

ん、その人、捕まえればいいの?

遠見結奈

そ、そう……!

走りながら話すと、い、息が切れる……!

狛野比奈

ん!

うわ、速い!

比奈はあっという間に、私の隣から前へ、ぐんぐんと加速していく。

こ、これなら追いつけるかも!

剣峰桐

ひぇ!? な、なんで、増え、てるの!?

狛野比奈

待って!

剣峰桐

や、やだ!

うう、剣峰さん、まだ逃げる! でも、比奈の方が断然、速い!

これなら、もう少しで追いつけるかも……!

遠見結奈

はぁ、はぁ……!

と、思ったけど、甘かった……!

狛野比奈

結奈ねぇ! 階段? 真っ直ぐ?

わかんないわよ!

比奈がどんなに距離を詰めても、剣峰さん、私たちをまこうと必死で。

階段とか、教室とか、どっちに行ったか迷った隙に、距離を離される。教室に隠れたかと思ったら、柱の陰とか、もうなんなの!?

比奈は余裕なんだけど、素直でひっかかりやすいし、私と園生先生はすでにヘロヘロで。

剣峰さんもけっこう疲れてると思うんだけど……、必死なんだなぁ……。

遠見結奈

恵、どっち!?

grpo_bu0

永谷恵

うわ、ほ、ほんとにわかんない。上、じゃ、ないかな? 足音、聞こえたの。

遠見結奈

上!

狛野比奈

ん!

比奈が階段を駆け上がっていく。二段飛ばし、すごい。私はもう、手すりを使って足を動かすのが精一杯なのに。

狛野比奈

結奈ねぇ、いないよ?

遠見結奈

えー!?

恵ー!!

榎木サチ

結奈さん!

え? サチさん?

声がした方を振り返ると、窓の外にサチさんが浮いていた。なにか、必死に下を指してて……。

私は、慌ててサチさんがすぐ外にいる窓に駆け寄る。下をのぞき込む。

遠見結奈

あー!

剣峰さんが、ちょうど、玄関ホールから飛び出すところだった……!

遠見結奈

だ、ダメだったぁ……。

も、もうダメ。

狛野比奈

あの人?

遠見結奈

そう……。

もう追いかけられない。このまま、学校の外に逃げられておしまい……。

狛野比奈

ん、わかった。捕まえる。

遠見結奈

え、ちょっと、比奈!?

なにを──!?

狛野比奈

ん、と!

遠見結奈

ひ……。

うそ……。

私の目の前で、比奈が窓を開けた。

遠見結奈

(な、なにする気? いや、ちょっと待って!待ちなさい、比奈!)

そんな止める間もなく。

遠見結奈

ひ、比奈! 待っ……!

狛野比奈

ん!!

飛び降りた!!

遠見結奈

比奈ぁっ!!

園生月代

きゃああああああっ!!

後ろから聞こえた園生先生の悲鳴もおかまいなしに、私は比奈が飛び降りた窓へと駆け寄った。

剣峰桐

え、う、うそ!? マジ!?

聞こえてくる剣峰さんの悲鳴。

遠見結奈

(比奈、比奈!? バカバカ! 飛び降りるなんて!)

私は身を乗り出して、飛び降りた比奈の姿を捜す!

永谷恵

うわぁ……。

榎木サチ

すごい……。

遠見結奈

(なに!? どうなったの!? 比奈は!?ケガしてない!?)

園生月代

とと、遠見さん! 今の子は!? ねぇ!

隣から、園生先生の声。でも、私はその声に答えることもできなかった。

剣峰さんがいる。そして、呆然と立ち尽くしているその前に。

狛野比奈

捕まえた。

遠見結奈

(比奈……!)

比奈、比奈、比奈。比奈が、立っていた。剣峰さんのカバンをつかんで。何事もなかったかのように。

そして、私の方を見上げてきて。

狛野比奈

結奈ねぇ! この人でいいんだよね!?

遠見結奈

はぁ~~~~~~~。

園生月代

よかったぁ……。

私と園生先生、同時に窓に手をかけたまま、へたり込む。

狛野比奈

捕まえたよ!

あーもう! 心臓、止まるかと思った!

遠見結奈

比奈!

私は、もう一度、窓から身を乗り出して叫んだ。

遠見結奈

なんてことすんの! 危ないでしょ!?

狛野比奈

2階くらいなら、大丈夫!

こっちが大丈夫じゃなかったのよ……!

それまでの全力疾走と、最後の衝撃、そして脱力で、もう膝に力が入らなくなっていてもなんとか。

私と園生先生は1階へ下りて、玄関ホールを出たとこで、まだ、比奈に捕まったままの剣峰さんのそばへ。

園生月代

狛野さん!

比奈の名前は、ここまで来る間に、私が教えた。ごまかそうとしても、許してくれなかった。

狛野比奈

ん。

園生月代

なんて危ないことするの! ダメでしょう、2階の窓から飛び降りるなんて! ケガでもしたらどうするの!?

狛野比奈

でも、結奈ねぇに頼まれたから。

遠見結奈

そこまでするなんて思ってなかった! 心臓、潰れたかと思ったわよ!

狛野比奈

んー……。

比奈がちょっとバツが悪そうに視線を逸らしたのを見て、私も今のは言い過ぎかもと思った。捕まえてって頼んだのは私なんだし……。

遠見結奈

あ……、ごめん……。その、比奈? ありがと……。

狛野比奈

ん。

遠見結奈

大丈夫? ほんとにケガしてない?

狛野比奈

ん、平気。

遠見結奈

よかった……。

あ、ほんと、膝が笑ってる。もう、へたり込みそう。

でも、ほんと、比奈ってすごい子だな……。

剣峰桐

えっと、その……。

その私の横で。剣峰さんが、もう逃げることもできず、まだ、比奈にカバンをつかまれたままで。

剣峰桐

わ、私、帰ってもいい? ほんと、今日、ちょっと用事があるかもで……。

園生月代

ダメ!

そんな往生際の悪い言葉を、園生先生がピシャッと遮った。

園生月代

ちゃんと先生とお話しさせてください!

剣峰桐

月代ちゃ~ん……。

園生月代

先生って呼びなさい!

園生先生、涙目になってる。

園生月代

ここまで来たら、先生も引っ込みつかないもの!

そして、みょうな本音が出ているみたい。

園生月代

剣峰さん、ちゃんとお話ししましょ。先生に悪いところがあったなら、謝るから。

剣峰桐

いや、そうじゃないんだけど……、でも、その……。

園生月代

ちゃんと、話、聞いてあげるから。ね?

剣峰桐

うう……、はい……。

園生月代

うん。それじゃ、部室に行きましょ、ね?

剣峰桐

はぁ~い……。

観念したみたい。はぁ……、どうやらこれで、目的は果たせたかな。とんでもないことになっちゃったけど。

園生月代

遠見さん、狛野さん。

遠見結奈

あ、はい。

狛野比奈

はい。

園生月代

ありがとうね、助けてくれて。

園生月代

でも、狛野さん! もう二度と、あんな危ないことしちゃダメよ!?

狛野比奈

はい。

園生月代

あと! 今日は仕方ないけど、廊下を走っちゃいけません! いいわね?

遠見結奈

はい……。

うん、もう走りたくない。

園生月代

さ、行きましょ、剣峰さん。

剣峰桐

はぁい……。

園生先生が、剣峰さんを連れて、校舎の方へと歩いていく。

はぁ……、もういい。あとは知らない。先生と剣峰さんでなんでも話し合って。

狛野比奈

結奈ねぇ、あたし、部活行っていい?

遠見結奈

え、うん、いいわよ。ありがとう、比奈、手伝ってくれて。大丈夫? 部活、遅れてない?

狛野比奈

ん、問題なし。

ぐっと立てた親指、突き出して、比奈も歩いていく。校庭に、直接行くのかな?

そして。

榎木サチ

すごかったわね……。

永谷恵

うん、びっくりしたぁ……。

百合霊の二人がふわふわと。

榎木サチ

あの子が、比奈ちゃん? 結奈さんがいつも話してた。

遠見結奈

ええ……。

榎木サチ

お手柄だったわね、ほんと、すごいわ。

永谷恵

孫悟空みたーい。

はぁ……、お願い、もうなにも言わないで。今日はこのままもう帰りたい。帰ってもいいよね?

……夕食、比奈の好きなもの、作ってあげよう……。まぁ、お肉なんだけど……。

grpo

grpo_ef

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

okujou_no_yurirei-san/1204.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)