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okujou_no_yurirei-san:1201

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6月に入って、どうやら梅雨にも入ったみたい。

今日も夕方から雨が降るかもという予報。空は雲に覆われていて、屋上でもあまり明るくはない。

こんな天気だから、わざわざ屋上に来てお昼を食べる人も少ないんだけど……、私はいつものベンチに座って、お弁当を膝の上に広げていた。

私の両隣には、いつもの百合霊の二人。サチさんと恵。

この二日ほど、雨続きだったため、久しぶりの屋上でのお手伝い活動報告会だった。

榎木サチ

まずは、沙紗ちゃんのことね。

放送部の双野さん。恋した相手は、同じ放送部の一木さん。

榎木サチ

しばらくは様子を見ましょうってことだったけど、最近、ちょっと沙紗ちゃんの様子が変なのよね。ね、恵?

永谷恵

………………。

榎木サチ

恵?

永谷恵

え、あ、はい。そう、そうなの。

遠見結奈

変って? どんなふうに?

永谷恵

しばらく見張ってたんだけどね。

永谷恵

まぁ、いっつも三人一緒なんだけど、それでも時々、沙紗さんと羽美さんの二人っきりになることもあるの。

まぁ、そうかな。さすがに年がら年中三人一緒ってわけにもいかないだろうし。

永谷恵

そういう時、けっこう、沙紗さん、キョドウフシンになるのよね。

挙動不審、か。まぁ、好きな人と二人っきりになれたんだから、ありえるかな。

永谷恵

不意に顔を赤くしたり、それを羽美さんにバレないようにごまかしたり。

永谷恵

羽美さんに見えないところで、口、パクパクさせたり。

なるほど、確かに不審だ。

永谷恵

もう、これって完全にアレよね。

遠見結奈

なに? アレって。

永谷恵

わかるでしょ? なんでわからないのよ。丸わかりじゃない。

……いいから早く言ってよ。

榎木サチ

きっと、沙紗ちゃん、羽美ちゃんに告白する機会をうかがってるのよ。

永谷恵

絶対そう!

ああ、なるほど……。

永谷恵

でも、なかなか言い出さないのよね。さっさと告白しちゃえばいいのに。

そう簡単にできないでしょ。

永谷恵

わたしなんて、サチさんと話せるようになった最初の言葉が、愛の告白だったんだから!

榎木サチ

ふふ、あの時の恵、かわいかったわよ。

永谷恵

や~ん、サチさ~ん!

……あなたたちとはちがうんだから。

遠見結奈

と、とにかく、双野さんが告白しようとしてるなら、もう少し、様子見てればいいのかしら。

榎木サチ

それがね。

永谷恵

なかなかうまくいきそうにない感じ。

遠見結奈

え、なんで?

永谷恵

だって、まず沙紗さんと羽美さんが二人っきりになることが滅多にないんだもの。

遠見結奈

……ああ。

永谷恵

せっかくそういうチャンスが来ても、言い出せないうちに音七さんと合流しちゃうし。

榎木サチ

仲がいいのも考え物ね。

永谷恵

なんか、沙紗さんも、音七さんが一緒になると、みょうに安心した顔するし。

榎木サチ

きっと、三人でいるのも楽しいからよ。

それは、わかる気がする。そんな簡単なことじゃない、きっと、告白って。女の子同士なら特に。

相手にどう受け止められるかわからない。気持ち悪がられるかもしれないんだから。

友達なら、なおさらそんなふうに受け止められたくないと思うだろう。言い出してこれまでの友達付き合いが壊れるより、言い出せないままの方がいい。

そう考えるのも、当たり前じゃないかな。

榎木サチ

でも、言えずにいるより、言ってしまった方がいいこともあるわね。

そうかな? よくわからないけど。

この二人はそう考えているんだろう。そして、私はその手伝いをする約束をしている。

遠見結奈

それじゃ、なんとかして一木さんと双野さんを二人っきりにする機会を増やすってことで?

榎木サチ

そうね。せっかく、沙紗ちゃんが勇気を出そうとしてるんだから、その機会を増やしてあげましょう。

遠見結奈

わかりました。

とは言っても……、あの三人をバラバラにするのって、けっこう大変かな。こないだも苦労したし。

榎木サチ

次は、牧ちゃんと美紀ちゃんね。

サチさんの報告は、次に移っている。

一年生の牧さんと三年生の相原先輩。牧さんは相原先輩と同じ、整美委員会に入ったんだっけ。

最近は、二人で放課後、学校のあちこちで一緒に頼まれた仕事をしてるらしい。

榎木サチ

あの場所、休憩所って名前になったみたい。

テストが終わった日に、牧さんに教えてあげた場所。奥校舎の資料室の奥、誰もこない秘密のスペース。

榎木サチ

時々、二人であそこでお話してるのよ。

遠見結奈

そうですか。

榎木サチ

気に入ってもらえたみたいね。

遠見結奈

ええ。

まぁ、よかった。手間をかけて片付けた甲斐があった。ちょっとうれしいかな。

榎木サチ

あそこで、二人がいろんな話ができるといいわね。それで、お互いのこと、もっと好きになってくれたらいいわね。

遠見結奈

……ええ。

なんか、返事に困るなぁ……。女の子同士ってのが悪いとは思わないけど、それを促進して回ってるのって。

普通じゃないのかなぁ。まぁ、普通じゃないなんて、幽霊とこんな話をしていて今さらだけど。

榎木サチ

それから、今日はもう一つ、報告したいことがあるの。

まだあるんだ。なんだろう。

榎木サチ

ねぇ、結奈さん、あなた、剣峰桐(つるぎみね・きり)ちゃんって知ってる? 二年生の子なの。

つるぎみねきり……? 知らないなぁ、少なくとも、一緒のクラスになったことはないと思う。

遠見結奈

いいえ。たぶん、知り合いじゃないです。

榎木サチ

そう。その子がね、最近、恋に目覚めたみたいなの。

遠見結奈

……はぁ。

……またか。ほんとに、捜せばけっこういるんだな……。

榎木サチ

お相手、誰だかわかる?

遠見結奈

いえ、さっぱり。その剣峰さんも知らないし。

榎木サチ

そうよね、ごめんなさい。桐ちゃんのお相手はね、国語科の月代先生。こっちは知ってるわよね?

遠見結奈

! え、ええ……。

せ、先生なの!?

月代先生ってことは、古文の園生月代(そのう・つくよ)先生? え、ええ? 相手は大人の人なの?

……園生先生、あんまり大人に見えないけど。でも。

榎木サチ

二人は数理部のたった一人の部員と顧問なのね。

遠見結奈

はぁ……。

数理部、そんな部活あったんだ。たった一人の部員? それで部って成り立つのかしら。それに月代先生って古文の先生でしょ? なんで数理部なんだろう。

榎木サチ

私が、彼女の気持ちに気付いたのはつい最近だったんだけど、どうも様子が変なのよね。ね、恵?

永谷恵

………………。

榎木サチ

恵?

永谷恵

え? あ、なんですか、サチさん。

ん? なんか、さっきも恵、ぼーっとしてなかった?

榎木サチ

桐ちゃんの話よ。様子が変だって教えてくれたのは恵でしょ?

永谷恵

あ、はいはい、そうなの。

永谷恵

サチさんに教えてもらって、ちょっと見張ってたんだけどね。なんか、変なのよね。サチさんが、間違ってるとは思わないんだけど……。

永谷恵

桐さん、園生ちゃんのこと、避けてるみたいなの。

園生ちゃんって、あなた、先生のこと……。まぁ、園生先生、そう呼ばれること多いけど。あの先生、かわいいし。

遠見結奈

えーと、避けてるのは、剣峰さんの方? 園生先生を避けてるの?

永谷恵

そう。まるで逃げ回ってるみたいなの。桐さんが園生ちゃんのこと、好きなのに、変よね?

遠見結奈

うーん……。

永谷恵

ふつー、好きな人には会いに行きたいものじゃない? それが逆なんだもん。

そうかもしれないけど……、よくわからない。そんな気持ちになったことないから。

榎木サチ

なにか、理由があるのかしらね。

遠見結奈

うーん……。

榎木サチ

とりあえず、最近の報告はこんなとこからしら。

遠見結奈

はい。えーと……。

私は頭の中で、今までの情報を整理する。

遠見結奈

牧さんと相原先輩は、特になにもしなくていいですよね。双野さんは、一木さんと二人っきりになれる状況を作ってあげる、と。

遠見結奈

剣峰さんは……、どうしよう。

榎木サチ

そうね、桐ちゃんのことは、しばらく恵に様子を見てもらおうかしら。お願いできる? 恵。

永谷恵

……あ、はい、サチさん。

遠見結奈

私も、できたら調べてみますね。

榎木サチ

ええ、お願いね。

それを区切りに、今日の報告会はおしまいになった。

そろそろ教室に戻らなきゃ。なんか、もうすぐ、雨が降ってきそう。

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榎木サチ

あら、結奈さん、奇遇ね、こんなとこで会うなんて。

遠見結奈

あ、サチさん。

放課後の図書室。サチさんから声をかけられて、私はいつもよりも小さな声で答えた。

阿野藤

……なにか言った? 結奈。

遠見結奈

え? ううん、なにも?

今は隣に阿野もいる。

この学校の図書室は、奥校舎にある。木の床に木製の本棚がずらっと並んでいるのは、なかなか壮観。

榎木サチ

ごめんなさいね、友達がいるのに声をかけちゃって。

遠見結奈

いいえ。

ここには本を借りに来た。料理の本。雑誌も発売日よりちょっと遅いけど入ってくるので、けっこう重宝する。

試してみたいものがあったら、コピーも取らせてもらえるし。

そういうわけで、時々、利用してるんだけど、今日は阿野が、暇だからとついてきていた。

遠見結奈

阿野、私、ちょっと検索で調べてくるね。

阿野藤

ほいほい、てきとーに暇潰してるから、こっちは気にしなくていいよ~。

遠見結奈

ん。

阿野がふらふらっと本棚の間に消えていく。私は、受付カウンターの隣にある、検索用に解放されているPCの方へ。

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榎木サチ

あら、お友達はいいの?

遠見結奈

ええ、暇つぶしについてきただけみたいだから。

榎木サチ

そう。ねぇ、あの子は屋上には来ないの?

遠見結奈

一年の時、誘ったことはあったけど、教室で食べるのがいいって。

榎木サチ

あら、そう。ちょっと残念ね。結奈さんの友達なら、紹介してほしかったのに。

遠見結奈

阿野藤って言うんです。同じクラスで。

まさか、阿野を連れてきて、ここに幽霊、いや、百合霊がいるのって言うわけにもいかないし。

榎木サチ

あの子が阿野ちゃんね。恵が言ってたわ。結奈さんにもちゃんと友達がいるみたいって。驚いてたの。

恵の中で、どんだけ私は人嫌いなんだろう。……まぁ、阿野くらいしか友達、いないんだけど。

思わず出そうになったため息をこらえて、私はPCに向かった。探したい本の名前を思い出し、キーボードを叩く。

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榎木サチ

………………。

なんだろう、サチさんの視線を感じる。

と、あれ? タイトル、間違ったかな? 出てこない。

遠見結奈

えっと……。ネットで調べてみた方が早いかな……。

このPCから、ネットにも接続できる。検索サイトとか新聞のサイトにしかつながらないけど。

榎木サチ

………………。

なんか、すごくじっと見られている、気がする……。

サチさんを気にしないようにして、私は思いついたキーワードを入力する。

榎木サチ

あら。

検索結果が出てきた瞬間、サチさんの声。あーもう、気になって仕方ない。

遠見結奈

めずらしいですか?

榎木サチ

ええ、何度見ても不思議で。すごいのね、まいこんって。

まいこん……?

遠見結奈

えっと、これ、PCですよ?

榎木サチ

ぴーしー? 最近はそう言うの?

最近、なのかな? ということは、まいこんってのが昔の呼び方なのかな?

サチさんの知識って、どこまで古くて、どこまで新しいのか、よくわからない。

榎木サチ

ねぇ、なんでこれで新聞とか読めるのかしら。新聞とか読んでる子、いるのよ、ここで。

遠見結奈

え? それは、インターネットにつながってるからですけど。

榎木サチ

いんたぁねっと?

えっと、なんて説明すればいいんだろう。当たり前のことだと思ってたのに、それを知らない人に説明するのって難しい。

遠見結奈

このPCが、その、つながってるんです。新聞社のサーバーに。そこから、新聞を表示してて……。

榎木サチ

さぁばぁ?

遠見結奈

ええと、書庫って言うのかな……。

榎木サチ

ふぅん……。ああ、ごめんなさい、邪魔しちゃって。結奈さんの用事を進めていいのよ。

遠見結奈

は、はぁ……。

ええと、検索結果から雑誌のタイトルがわかったから、それをコピーして、今度はそれを、図書館の書籍検索にペーストして……。

あ、あったあった。雑誌が置いてある棚の番号のメモを取る。ついでに、他の本のことも調べておこうかな……、とかやっていて。

榎木サチ

ふむふむ……。……あ。……わ。

その間も、ずっとサチさんは私の隣からPCの画面をのぞき込んでいて、画面が切り替わるたびに、小さな声で驚いていたり、なにか感心していたり。

榎木サチ

おもしろいのね、次々、ついたり消えたり。てれびみたいね。

テレビよりすごいと思うけど。

ここのPCはけっこう古いものだと思う。ITルームにはもっと新しいのがたくさんあるけど、そっか、サチさん、そっちは行けないみたいだっけ。

榎木サチ

恵から聞いてはいたけど、便利なものなんでしょう? えっと、まいこん、じゃなくて、ぴーしー、でしたっけ?

遠見結奈

ええ。

もう、なんかサチさん、発音からしてちがうんだもの。そう、おばあちゃんみたいな言い方。……こんなこと、口に出したら怒られそうだけど。

榎木サチ

今度、ゆっくり見せてほしいんだけど、今日は結奈さんの用事ですものね。

榎木サチ

あまり、阿野ちゃんを待たせたらダメよね。

遠見結奈

まぁ、阿野なら適当に時間つぶしてると思うけど。

サチさんが阿野の名前を出したから、ちょっと気になって図書室を見回してみた。

ああ、いたいた。向こうで誰かと話してる。知らない人、同じ二年生みたいだけど。その人と話している。

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榎木サチ

あら。

私につられたのか、同じ方を見ていたサチさんが、そうつぶやいた。

榎木サチ

結奈さん、あの子、阿野ちゃんがお話ししてる子。

榎木サチ

あの子よ、桐ちゃん。

遠見結奈

え?

私はもう一度、阿野のいる方を見る。ちょっと背の高い子。

阿野、場所が場所だから、小声で話しているみたい、でも、笑いながらその子と話している。仲、いいのかな?

あの子が剣峰さんなのか……。えっと、古文の園生先生のことが好きな? 顔くらいしっかり憶えておこうと見ていたら。

遠見結奈

あ……。

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榎木サチ

あら……、桐ちゃん、行っちゃったわね。

遠見結奈

ええ。

榎木サチ

桐ちゃん、阿野ちゃんのお友達なのかしら。

遠見結奈

そうかも。阿野、けっこう友達多いから。ちょっと、聞いてみますね。

榎木サチ

ええ。私は桐ちゃんを追いかけてみるわね。なにかわかったら、また今度、屋上で会った時に報告しあいましょう。

遠見結奈

はい。

サチさんは私に手を振ると、図書室から出て行ってしまう。ドアをすり抜けて。私は、阿野の方へと向かう。

遠見結奈

阿野。

阿野藤

あ、結奈。

ん? なんだろう、私の顔を見てる。

阿野藤

……もう終わったの?

遠見結奈

うん、借りたい本、見つかったから。

阿野藤

そう。

遠見結奈

誰と話してたの? 友達?

阿野藤

あ、うん。桐とぐうぜんばったり。えっと、C組の、剣峰桐。結奈、知ってた?

遠見結奈

う、ううん。阿野ってほんと、交友関係広いのね。

阿野藤

それほどでも~。桐とはちょっとした戦友でね。

遠見結奈

戦友?

阿野藤

そう。同じ世界を救ったこともあるんだよ~。でも、今は別々の戦場にいるのだった。桐はなんか、スニーキングミッション中みたいだね。しかもリアルで。

察するに、ゲーム関係でできた友達なのかな。そっか、阿野、趣味が多いからかな。それで、友達も多いのかも。

遠見結奈

待たせてごめんね。ちょっと雑誌、借りてくるから、もうちょっと待っててね。

阿野藤

ほいほい。

私は、借りたい雑誌が置いてある棚へと向かう。

ちょっとした偶然で、剣峰さんの顔もわかったし、ついてたのかも。

スニーキングミッション中……? ええと、潜入任務? 園生先生のことと関係あるのかな……。

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