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ending/鏡香END2.ks
Lines: 629
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[Mana]
「……うーん」
>

[Mana]
「朝……ですか……」
>

カーテンの隙間から差し込む日光。
>

今日もいい天気みたい。 
>

[Mana]
「なんだか、
>

悪い夢を見ていたみたい」
>

まだ頭がぼんやりします。
>

……ううむ。 
>

ぼんやりと昨晩の事を思い返す。
>

[Kyouka]
『――まな』
>

ゆっくりと近づいてくる鏡香。
>

[Kurumi]
『お姉ちゃん――』
>

振り返ると、そこには胡桃の姿。
>

……夢じゃないです。
>

ここのところ、毎晩のように、
>

私は鏡香と胡桃に――
>

[Mana]
「ふたりとも……」
>

[Mana]
「ふう……。
>

鏡香も胡桃も、
>

どうしたら仲良くしてくれるのでしょうか」
>

[Mana]
「今までみたいじゃダメ。
>

なんか、こう。
>

もうちょっと劇的な感じで……」
>

ベッドの上でゴロゴロしながら
>

考えをめぐらせる。
>

[Mana]
「……とは言っても、
>

なかなか難しいですよね……」
>

[Mana]
「夕暮れ時の川原でケンカをさせる……なんて」
>

[Mana]
「いやいやそれでヒートアップ
>

しすぎても困るし」
>

[Mana]
「だいたい、
>

殴り合って仲良くなれるなら
>

もうとっくになってますよね」
>

困ったことに何も思いつきません。
>

これじゃあまた今日も昨日までと
>

同じことの繰り返し……。
>

その時でした。
>

部屋の外から何かの
>

割れる音が聞こえてきました。
>

[Mana]
「ん? なんの音です?」
>

続いて井上さんと思われる声。
>

何だか緊迫した感じに聞こえました。
>

私はモゾモゾとベッドから這い出すと、その音の原因を調べるために
>

部屋を後にしました。
>

[Inoue]
「お嬢様……どうかおやめください!」
>

[Kyouka]
「近づかないで!」
>

[Kyouka]
「もういいの!」
>

[Kyouka]
「もう、ほんとうにいいの!」
>

[Inoue]
「お嬢様……」
>

[Kyouka]
「ダメなのよ……。
>

もうダメ。もう無理なの。
>

もう、ワケがわからないの……」
>

[Kyouka]
「わたしはね、
>

まなに嫌われたら生きていけないの」
>

[Kyouka]
「だからわたしは――
>

死ぬしかないのよォッ!」
>

[Inoue]
「おっ、おやめください!
>

お嬢様ぁっ!!」
>

[Mana]
「ハァ……ハァ……。
>

すごい音が聞こえましたけど、
>

一体どうしたんですか?」
>

ダイニングに入ると
>

井上さんと、鏡香。
>

[Inoue]
「……鏡香様が、鏡香様が……」
>

どうしたんでしょうか、
>

井上さんの顔が真っ青です。
>

井上さんの視線の先を見ると――、
>

[Kyouka]
「……もう生きてるのがつらい」
>

[Mana]
「鏡香!?
>

なっ、なにやってるんですかっ!?」
>

壁際に立つ鏡香、
>

その首元には……ナイフ!?
>

ナイフを突きつけて……って、
>

まさか鏡香!?
>

[Mana]
「ど、どうしたの鏡香……?」
>

[Kyouka]
「あら、まな」
>

鏡香の顔は笑っているにも関わらず、
>

――まるで無表情な能面のようにも
>

見えました。
>

[Kyouka]
「うふふ、どうしたの、
>

そんなにおどろいたかおをして」
>

声にも感情がありません。
>

[Mana]
「どうしたのって……
>

鏡香こそなにやってるの!?
>

そ、そんな危ない物捨てなさい!」
>

[Kyouka]
「え? なにって?」
>

[Mana]
「ちょ、ちょっと!!」
>

ナイフを首筋にぐっと押し当てる鏡香に私は慌てて駆け寄ろうとしました。
>

でも、
>

[Kyouka]
「こないで!!」
>

[Inoue]
「まな様ぁっ!」
>

鏡香の声に、
>

井上さんが私の腕をぐっと掴む。
>

あんまり急だったので、
>

バランスを失って転びそうになりました。
>

[Mana]
「わわっ……っと」
>

[Inoue]
「まな様、後生ですから
>

お嬢様をあんまり刺激しないで
>

ください……」
>

耳元でそっとささやく井上さん。
>

[Kyouka]
「――っ!」
>

[Mana]
「あ、鏡香っ!」
>

その隙に鏡香には
>

逃げられてしまいましたが。
>

[Inoue]
「お嬢様は……本気です」
>

[Inoue]
「あの表情、
>

思い出したくもありませんが
>

昔のお嬢様と一緒です」
>

[Inoue]
「まな様と出会う前の――」
>

[Mana]
「私と、出会う前――」
>

――自分を傷つけることを
>

覚えてしまった鏡香。
>

あの時、
>

偶然にも鏡香を救ったのは私でした。
>

井上さんにも言われたこと。
>

「あの時以来、
>

お嬢様はまな様の事を――」
>

[Mana]
「けれど、
>

どうして鏡香はまたこんな状態に?」
>

[Inoue]
「わかりません、
>

わかりませんが――」
>

言って、
>

ちらりと私の顔を見る井上さん。
>

んん?
>

[Mana]
「何か顔についてます?」
>

[Inoue]
「いえ、
>

そういう訳ではないのですが……」
>

[Inoue]
「恐らくお嬢様は、
>

まな様に嫌われたと
>

思ったのかもしれません」
>

[Mana]
「嫌われた? 私にですか?」
>

嫌いになるようなこと……
>

強引にこの別荘に連れて来られたり、
>

夜になるといつもの
>

ハチャメチャぶりに磨きがかかったり、
>

確かに昨日の夜とかも怖かったし、
>

まあ、思い当たるフシがないわけでもないですが……。
>

でもそれも今に始まったことじゃないし。
>

今回のはちょっと行き過ぎてるけど。
>

でも――
>

いつも鏡香が口にするのは、
>

[Kyouka]
『好きよ、大好きよ、まな☆』
>

いつもよりちょっと過激な愛情表現。
>

それを私が取り合わないから、
>

どうにもならなくなっちゃった
>

……のかな。
>

[Mana]
「そっか、そこまで私のことを……」
>

私も逃げてばっかりじゃダメ。
>

ちゃんと鏡香と向き合って――
>

[Inoue]
「まな様?」
>

[Mana]
「わかりました。
>

鏡香を、説得してきます!」
>

[Inoue]
「えっ……。
>

あ、まな様!?」
>

[Mana]
「ねえ鏡香」
>

ゆっくりと近づく。
>

[Kyouka]
「ぁ…………、だぁれぇ?」
>

私を見つめる鏡香の表情は、
>

どこか虚ろで。
>

[Mana]
「まなですよ。
>

ほら、そんな危ないものは放して」
>

[Kyouka]
「いや……こないで」
>

[Kyouka]
「それいじょうきたら……」
>

ナイフをさらに首元に近づける鏡香。
>

私は動きを止めて
>

慎重に鏡香の様子を伺いました。
>

[Mana]
「……ごめんね。鏡香」
>

[Mana]
「私が、私がもっと鏡香のことを
>

真剣に受け止めていれば、
>

きっとそんなに思い詰めるようなこと
>

には、ならなかったのにね……」
>

[Kyouka]
「まな……」
>

鏡香の表情がゆっくりと変化しました。
>

その表情が『笑み』だと気がつくのに、少し時間がかかりました。
>

けれど、ナイフは依然として握ったまま。
>

[Kyouka]
「ふふ……あはは……」
>

[Mana]
「鏡香?」
>

[Kyouka]
「あははは。へんなの。
>

なにもきこえないわ」
>

[Kyouka]
「まなは私になにもいってくれない」
>

[Kyouka]
「まなは私をみてくれない」
>

[Kyouka]
「まなは私をおもってはくれない」
>

[Kyouka]
「まなは私を――きらい」
>

[Mana]
「そんなこと無いです!」
>

[Mana]
「ねえ、鏡香、
>

お願いだからそのナイフを降ろして。
>

話を聞いてください」
>

慎重に一歩、歩み寄った、
>

――その時。
>

[Kyouka]
「いやっ!!」
>

[Kyouka]
「止めて止めて止めてぇ!」
>

一転して、今度は急に叫び出す鏡香。
>

[Kyouka]
「もうイヤ!
>

いつだってそう、
>

私は誰にも愛されない!」
>

[Kyouka]
「うわべだけ取り繕って
>

本当の私なんか見てくれない!」
>

[Kyouka]
「アンタたちだってそうでしょ?
>

陰じゃあ私のことを邪魔者扱い、
>

腫れ物扱いしてるに決まってる!!」
>

[Kyouka]
「誰も私のことなんか、
>

本気で心配していない!」
>

[Kyouka]
「だから――」
>

手にしたナイフをグッと
>

首筋に押し付ける鏡香。
>

[Inoue]
「お嬢様っ!!」
>

[Gurasan]
「なんだなんだ……っておわっ!?
>

お嬢! 何やってんだよ!?」
>

[Gurasan]
「早まるんじゃねぇぜ!
>

そんなことしたって
>

田舎のおふくろさんは喜ばねぇぞ!」
>

[Maccho]
「お嬢様……。
>

ナイフを置いてください」
>

騒ぎを聞きつけ、
>

グラサンさんとマッチョさんも
>

駆けつけました。
>

[Mana]
「お願い、やめて鏡香!!」
>

と、その時でした。
>

[Kurumi]
「ふわぁ……。
>

朝っぱらからなに騒いでんのー?」
>

大あくびをしながら
>

胡桃がのんきに現れました。
>

[Kurumi]
「おはよー、お姉ちゃん」
>

[Mana]
「ちょ、胡桃!
>

今はそんな場合じゃ……」
>

[Kurumi]
「ふえぇ?」
>

私が目でチラリと鏡香の方を見る。
>

それにつられて
>

胡桃も鏡香に視線を移して――
>

[Kurumi]
「ん、アンタなにやってんの?」
>

あっけらかんと尋ねました。
>

鏡香はキッと胡桃を睨みつけると、
>

[Kyouka]
「黙れ邪魔虫。
>

誰にも誰からも愛されてない、
>

だから生きていても仕方ない。
>

だから私は死ぬんだ」
>

そう言ってナイフを
>

今度は自分の胸元に突きつける。
>

[Kurumi]
「ふぅーん」
>

[Kurumi]
「そうなんだ。
>

勝手にすれば?」
>

そう言いながら噴水に近づき、
>

無造作に手を置く胡桃。
>

[Mana]
「胡桃っ!?」
>

[Kyouka]
「何よ……。
>

私が本気じゃないとでも思ってるの?」
>

[Kurumi]
「はン。
>

いいんじゃない? 死ねば。
>

ほら、早く。今すぐ死になさいよ?」
>

鏡香の言葉を鼻で笑い飛ばす胡桃。
>

[Kyouka]
「ヤッテやる……。
>

もう知らない……。
>

全部終わり。全部サヨナラ」
>

[Kurumi]
「だから――」
>

[Kurumi]
「やってみなさいよ」
>

一瞬の間ののち――
>

[Kyouka]
「――黙れえぇぇぇぇッ!!」
>

鏡香が叫んでナイフを振りかざすのと、
>

[Inoue]
「お嬢様ああぁぁぁぁっ!!」
>

[Maccho]
「いかん!」
>

[Gurasan]
「お嬢おぉぉぉっ!!」
>

井上さんやグラサンさんたちが
>

動いたのと、
>

胡桃が私の目の前から消えて、
>

鏡香の目の前に現れたのとが、
>

同時に起きました。
>

[Kurumi]
「――遅いよ」
>

[Mana]
「うわわっ!?」
>

足元に転がるナイフ。
>

それはほんの数瞬前まで
>

鏡香が持っていたものでした。
>

そのまま取っ組み合うように倒れこむ、
>

胡桃と鏡香。
>

一瞬の出来事にあっけに取られていた私達も、我に返ると慌てて駆け寄る。
>

[Mana]
「鏡香、胡桃、大丈夫!?」
>

すると、仰向けに倒れる鏡香と、
>

その鏡香に馬乗りになった胡桃の姿がありました。
>

鏡香の喉には、傷一つついていません。
>

胡桃の制止がギリギリで
>

間に合ったようです。
>

[Inoue]
「お嬢様……よかった……」
>

鏡香が無事と分かって、
>

ヘナヘナとその場に
>

へたりこむ井上さん。
>

[Gurasan]
「ったく!
>

面倒かけやがってよ! お嬢も」
>

[Maccho]
「ふぅ……良かった」
>

[Kyouka]
「クッ……どきなさい、
>

この邪魔虫!」
>

立ちあがり胡桃を押しのける鏡香。
>

[Kurumi]
「あら、死にたがってた割には
>

随分と元気じゃないか?」
>

[Kyouka]
「なによ、放っといて頂戴!!」
>

[Kyouka]
「誰も私のことなんか心配してない!
>

みんな、私なんか……
>

死んじゃえばいいって思ってるんだ!」
>

乾いた音。
>

鏡香の左頬が
>

みるみるうちに赤くなっていく。
>

[Mana]
「え?」
>

[Kyouka]
「ぁ……」
>

不意のことに
>

呆然と胡桃を見上げる鏡香。
>

右手を振りぬいた姿勢のまま、
>

胡桃は大きく溜息をついた。
>

[Kurumi]
「何甘ったれたこと言ってんの?」
>

[Kurumi]
「なぁにが、
>

『もう誰も私のことなんか~』よ」
>

[Kyouka]
「……うるさいっ!
>

何も知らないくせに!!」
>

[Kurumi]
「そうねぇ。
>

別にアンタのことなんか
>

さっぱりちっともこれっぽっちも、
>

知りたくもないけど」
>

しばらく鏡香をはたいた右手を
>

見つめていた胡桃。
>

[Kurumi]
「…………でもね」
>

[Kurumi]
「アンタが死んだらお姉ちゃんが悲しむ」
>

[Kyouka]
「そんなこと――」
>

[Mana]
「そんなことあるってば、
>

鏡香ぁ……」
>

ぎゅっと鏡香の手を握る。
>

[Kurumi]
「それにホラ。
>

井上さんだってグラサンだって、
>

マッチョだって、
>

みんなアンタが心配なんじゃない?」
>

[Kyouka]
「う……そ……」
>

[Inoue]
「嘘じゃ……ありませんよ……」
>

ボロボロと涙を流して答える井上さん。
>

[Inoue]
「私は、お嬢様のことを
>

心の底から……」
>

[Kyouka]
「井上……」
>

[Kurumi]
「あとは……アレよ。ホラ」
>

[Kurumi]
「アンタを殺すのは、
>

この私なんだから」
>

[Kurumi]
「勝手に死のうとしてんじゃないわよ。
>

このワガママお嬢様!」
>

[Kyouka]
「胡桃……」
>

[Kyouka]
「ふえ……」
>

[Kyouka]
「ふええええええええん!」
>

[Mana]
「鏡香のバカっ」
>

握った手をもう一度強く握り締めると、
>

鏡香も握り返してくれました。
>

[Kyouka]
「ごめんなさい、
>

ごめんなさいいい……」
>

泣きじゃくりながら謝り続ける鏡香。
>

[Kurumi]
「全く、本当にバカなんだから」
>

そう呟く胡桃の表情も、
>

胡桃を見る鏡香の表情も、
>

昨日までいがみ合っていたふたりとは
>

全然違っていました。
>

……私は何も出来なかったけど、
>

ふたりも仲直りができたみたいだし、
>

結果オーライ、ですかね?
>

[Gurasan]
「なんだかわからねえが、
>

良かった良かった!」
>

ケラケラと笑いながらグラサンさんが
>

能天気に納得していました。
>

[Gurasan]
「よっし、とりあえず井上さん、
>

朝飯にしようぜ!」
>

[Inoue]
「え、えぇ。そうですね。
>

では皆様、ダイニングの方へ」
>

――それから。
>

鏡香が胡桃を敵視することは
>

なくなりました。
>

胡桃も鏡香に対して、
>

変に突っかからなくなりました。
>

本当に仲良しです。
>

毎晩私の部屋に来ていた鏡香も、
>

パッタリと来なくなり、
>

平穏な日々が訪れました。
>

――平穏な日々。
>

そう思っていました。
>

[Kyouka]
「ね~え~胡桃ぃ。
>

はい、あーん☆」
>

[Kurumi]
「あーん」
>

お茶の時間、
>

胡桃のすぐ横にぴったりと座る鏡香。
>

まるで恋人同士みたいに
>

じゃれ合ってます。
>

[Kyouka]
「今日はとっておきのケーキなの。
>

おいしい?」
>

[Kurumi]
「うん、おいしい」
>

[Kyouka]
「きゃーん☆ 嬉しい♪」
>

テーブルの反対側に、私ひとり。
>

その姿を眺めながら
>

お茶をすすっています。
>

[Kyouka]
「ねえねえ、今日はなにして遊ぶ?
>

プールとか?」
>

[Kurumi]
「そうねぇ。何がいいかなぁ」
>

そういえば、
>

あれだけくっついてきた胡桃も、
>

今は私ではなく鏡香にべったりです。
>

[Mana]
「今日は天気も良いし、
>

プールとか……」
>

[Kyouka]
「――でも」
>

[Kyouka]
「私ね、
>

やりたいこといっぱいあるの!
>

胡桃とふたりで、ね、ね?」
>

[Mana]
「あ、それじゃあ……」
>

[Kurumi]
「またワガママ?
>

あんまりワガママ言ってると――」
>

[Mana]
「もしもーし」
>

[Kurumi]
「気を失うまで苛めちゃうわよ?」
>

[Kyouka]
「きゃーん☆
>

胡桃のいけずぅ~」
>

[Mana]
「えー……っとぉー……」
>

……なんでしょうこの疎外感は。
>

ふたりに仲良くなってほしかったのは
>

確かですが……。
>

なんだか私って……空気じゃない?
>

それからも、
>

[Mana]
「あ、鏡香――」
>

[Kyouka]
「ねえ、まな。胡桃見なかった?」
>

[Mana]
「――えっと、あの――」
>

[Kyouka]
「知らないのね、そう、いいわ」
>

[Mana]
「え? あ、はぁ……」
>

ふたりの仲は、
>

[Mana]
「あ、胡桃、丁度良かった」
>

[Kurumi]
「お姉ちゃん、鏡香見なかった?」
>

[Mana]
「あ、うん……さっきむこうで……」
>

[Kurumi]
「ありがとっ」
>

[Mana]
「って、胡桃ぃー!?」
>

どんどん親密になっていって、
>

[Mana]
「鏡香ぁっ!!」
>

[Kyouka]
「なんですのまな。
>

藪から棒に大声を出して」
>

[Mana]
「私と一緒に――その、
>

お風呂に入ろうッ!  
>

それで背中の流しっこしようッ!
>

むしろ全身洗いっこしようッ!!」
>

[Kyouka]
「あら御免なさい、
>

胡桃とちょっと用事があるの」
>

[Mana]
「なん……だと……」
>

体を張りまくったスキンシップすら
>

華麗にスルーされ。
>

私の居場所は、
>

[Mana]
「胡桃ぃっ!!」
>

[Kurumi]
「なぁにお姉ちゃん大声出して?
>

もう夜だよ?」
>

[Mana]
「お姉ちゃんと一緒に寝ようッ!
>

一晩中ギュッと抱きしめさせてッ!
>

むしろお互いの体温で
>

温め合いましょうッ!!」
>

[Kurumi]
「や、鏡香に呼ばれてるから」
>

[Mana]
「デスヨネー」
>

[Kurumi]
「うん。じゃ、おやすみ~」
>

無くなっていったのでした。
>

――そして。
>

夏休みも終わりに近づいたある朝。
>

いつも通り、食卓には私ひとり。
>

ひとりで食べる朝ごはんです。
>

べっ別に寂しくなんてないんだからね!
>

だってもう慣れましたもの……。
>

鏡香と胡桃は
>

まだ部屋で寝てるそうです。
>

井上さんが言ってました。
>

ごはんがおいしいです。
>

さすが一流シェフの料理は違います。
>

[Maccho]
「一人で朝食というのも
>

悪くないのかもしれんが……」
>

マッチョさんが心配そうに
>

こっちを見ています。
>

大丈夫です、私は元気です。
>

人間生まれるときも
>

死ぬときも一人です。
>

だから一人でも全然さびしくありません。
>

[Mana]
「夏休みも、もう終わりですねー」
>

夢のような幻のような生活にも
>

終わりが見えてきました。
>

また、いつも通りの生活に戻る、
>

それだけです。
>

まさか一夏をこの別荘で過ごすとは
>

思ってもみませんでしたが。
>

居心地がいいものですから、つい。
>

それにほら。
>

私ってここにいないことになってますし。
>

実妹からも、親友からも無視される日々。軽くへこむわぁー。
>

[Mana]
「はぁ……コーヒーがおいしいですね」
>

外を眺めながら
>

コーヒーをすすっていると、
>

[Inoue]
「たたたた大変でしゅ!!」
>

あら珍しい。
>

あの井上さんが慌ててますよ?
>

でもちょっとカワイイから許す。
>

[Inoue]
「お嬢様が!
>

お嬢様と胡桃様が!!」
>

[Mana]
「ふたりがどうかしたんですか?」
>

[Inoue]
「かっ、かか……っ、
>

駆け落ちをなさると……!!」
>

[Mana]
「……………………」
>

[Inoue]
「はぁっ、はぁっ、ぜぇ、ぜぇ……」
>

えぇーと。
>

えぇーと。
>

えぇーと?
>

[Mana]
「りぴーと、あふたー、みー。
>

カケオチー」
>

[Inoue]
「か、カケオチー」
>

駆け落ち……。
>

恋し合う二人が連れだって、
>

ひそかに行方をくらませること。
>

[Mana]
「……………………。
>

はああっぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
>

[Kyouka]
「マイスイートハート胡桃、
>

荷物の準備はできた?」
>

[Kurumi]
「おっけーハニー☆
>

鏡香は?」
>

[Kyouka]
「私も出来ましたわ♪」
>

[Kurumi]
「それじゃあ……」
>

[Kyouka]
「行きましょうか」
>

[Mana]
「ちょっと待ったぁ!!」
>

[Inoue]
「お嬢様、お待ち下さい!!」
>

[Kyouka]
「チッ……井上のやつ、
>

もう気がついたのね……」
>

[Kurumi]
「げげ。お姉ちゃん……!?
>

ヤバ、早く行こう!!」
>

見れば、大きな荷物を抱え、
>

敷地の外へ逃げようとする
>

ふたりの姿が!
>

[Inoue]
「ええい、鈴木、田中!!
>

あの二人を捕えなさい!!」
>

井上さんの声に颯爽と現れる黒い影!
>

[Gurasan]
「おっとぉ、
>

ここから先は通さねぇ!
>

むぎゅ☆」
>

[Kurumi]
「邪魔だよグラサン!」
>

[Gurasan]
「ぐぇびぶっ!?」
>

胡桃に一蹴されて
>

吹き飛ぶグラサンさん。
>

あぁんもぉ! 役立たず!!
>

そんなんだから
>

登場機会が少ないんですよ!
>

[Maccho]
「お嬢様……」
>

[Kyouka]
「鈴木、アナタには
>

まなを残してあげるから!!」
>

[Maccho]
「え、ちょ……お嬢様ッ!?
>

そりゃありがて――じゃなく、
>

いくらなんでもそれは急すぎ――」
>

[Kyouka]
「今日からまながアナタのマスター、
>

これは命令よ!」
>

[Maccho]
「は、ハイ……」
>

私がマッチョさんのマスターとか激しく意味がわからないんですが!!!
>

っていうかマスターって
>

どこの影響ですかっ!?
>

それにどうしてちょと
>

嬉し恥ずかしそうにしてるんですか!
>

マッチョさんは!
>

[Inoue]
「お嬢様、
>

後生ですから――!!」
>

――はっ。
>

そうだ、最後の良心、
>

井上さんの説得で――
>

[Kyouka]
「井上、アナタもついて来るのよ!」
>

[Inoue]
「え? あ?
>

ハイ、お嬢様!!」
>

最後の良心、あっさり瓦解。
>

[Mana]
「ええええええ?
>

そこは命にかえても引き止めるとか、
>

井上さん!!」
>

[Inoue]
「申し訳ありません、お嬢様のご命令は絶対ですのでっ!
>

えへへっ♪」
>

ニコニコと満面の笑顔の井上さん。
>

すんごい嬉しそうですネ。
>

申し訳ないならもっと申し訳無さそうな表情ってないですかねぇ!?
>

[Inoue]
「本当に申し訳ありません♪」
>

[Mana]
「っていうか、
>

井上さんもその荷物、どこから?」
>

いつの間にやら井上さんも
>

パンパンに詰まったバックを
>

傍らに置いている。
>

[Inoue]
「これもメイドの……嗜みですわ」
>

[Mana]
「いやいやいや!!」
>

なにをカッコつけてるんですか!!
>

っていうか意味わかんないしっ!!
>

[Kyouka]
「さあ、行くわよ!」
>

溢れる日光、新鮮な空気。
>

長い間、閉ざされていた世界が
>

暗闇から解き放たれるように。
>

手に手を取り合って駆け出す
>

胡桃と鏡香……それと井上さん。
>

ふたりの門出を
>

朝日と小鳥さんの歌声が
>

祝福してるようで――
>

って!
>

これでいいの!?
>

[Mana]
「散々かき回しておいて
>

最後にコレですか!?」
>

なんてごつご――いやいや。
>

自分勝手な人達なんでしょうか!?
>

[Maccho]
「マスター……。
>

準備なら出来てるぜ」
>

いつの間に用意していたのか、
>

私の荷物を足元に置くマッチョさん。
>

[Gurasan]
「あの女……。
>

絶対ぇにこの手でぶっ倒す!!」
>

グラサンさんも、
>

いつの間にか復活しています。
>

[Maccho]
「………………」
>

[Gurasan]
「………………」
>

ふたりとも私の顔をじっと見ています。
>

まるで――私からの命令を待っているかのように。
>

……フフフフフフフフ。
>

いいでしょう。
>

鏡香と胡桃がその気なら
>

こっちだって本気になりますよ!!
>

[Mana]
「よろしい! ならば命令だ!
>

マッチョ! グラサン!
>

あの3人を追いかけますよ!!!」
>

[Maccho]
「……了解した。
>

マイマスター」
>

[Gurasan]
「オッケーだぜ!!」
>

[Kurumi]
「ちょっ!
>

なんか血相変えて追ってくるよ!?」
>

[Kyouka]
「いいから逃げますわよ!
>

胡桃! 井上!」
>

[Inoue]
「はいっ。
>

お二人共こちらへ!」
>

[Mana]
「まぁ~てぇぇぇ~~っ!!
>

絶対に逃がさないんだからぁ!!」
>

なんか趣旨が変わってる気もしますが
>

――気のせいです。
>

全て壮大な気のせいです。
>

私もなんか知らない間に
>

ノリノリテンションになっているのも
>

気のせいです。
>

――まあそんなわけで、
>

私達の夏休みは、
>

まだまだ終わりそうにありません!
>

たぶん……。
>
limit_panic/kyoukaend2.txt · Last modified: 2014/05/25 12:55 (external edit)