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limit_panic:koroshiai2b
2day/殺し合い2B.ks
Lines: 382
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[Mana]
「……うん。
>

やっぱりこのままじゃいけない」
>

鏡香と胡桃、
>

ふたりのいざこざはもう、
>

とてもケンカと呼べるレベルじゃない。
>

これじゃあまるで殺し合――
>

だめだめ。
>

どっちかが大怪我する前に、
>

やっぱりここは私が止めなくちゃ。
>

[Mana]
「まずは……鏡香の方からかな」
>

[Mana]
「でも、どうしてあの二人、
>

こうも仲が悪いかな」
>

鏡香の部屋へと向かう途中、
>

歩きながら考える。
>

ふたりがケンカをする理由が
>

いまひとつピンと来ない。
>

いつから二人の仲が悪かったか、
>

思い返してみる。
>

[Mana]
「うーん……。
>

思えば……最初から仲が悪かった?」
>

もっとずっと小さい頃、
>

最初に3人で遊んだとき、
>

その時から取っ組み合いのケンカを
>

していたような、そんな気がする。
>

きっかけがあったとも思えない。
>

本当に、急にケンカが始まった。
>

[Mana]
「気が合わない、気が食わない。
>

そりが合わない。
>

……生理的に無理?」
>

[Mana]
「うーん、よくわからない……」
>

[Mana]
「でもダメダメ。ケンカは絶対ダメ。
>

よく言ってわかってもらわなくちゃ」
>

両手をぎゅっと握って気合を入れる。
>

そんなことを考えているうちに、
>

鏡香の部屋の前まで来ていた。
>

ふと、気になってケータイを確認する。
>

着信、メールは無い。
>

胡桃は部屋でおとなしくしてるみたいだ。
>

[Mana]
「よし……行きますか」
>

私は意を決してドアをノックした。
>

[Mana]
「鏡香? いる? まなだけど――」
>

…………。
>

返事が無い。
>

もう一度、
>

[Mana]
「鏡香? いないの?」
>

………………。
>

[Kyouka]
「……なに?」
>

中から鏡香の声が聞こえた。
>

[Kyouka]
「まだ夕飯まで時間があるでしょ?」
>

[Mana]
「夕飯じゃないよ、
>

ねえ鏡香、ちょっとお話しない?」
>

[Kyouka]
「お話?」
>

[Mana]
「そう、ちょっと大切なお話」
>

[Kyouka]
「大切な……?
>

ねえ、まな。
>

まな、今一人で来てるの?」
>

[Mana]
「今?
>

そうよ、ひとりよ?
>

なんで?」
>

[Kyouka]
「本当?」
>

[Mana]
「本当よ。どうしたの、鏡香?」
>

[Kyouka]
「ううん、なんでもない。
>

ちょっと待っててね、今開けるから」
>

…………。
>

[Kyouka]
「……まな」
>

[Mana]
「中、入ってもいいかな?」
>

[Kyouka]
「うん……」
>

なんだか鏡香の様子がヘンです。
>

いつもだったら「きゃーん☆」って
>

抱きついてきてもおかしくないのに。
>

おとなしい感じでベッドに腰掛ける鏡香。
>

[Kyouka]
「まなもそんなところに立ってないで
>

座れば?」
>

[Mana]
「あ、うん、そうだね」
>

えっと……。
>

私は鏡香の脇に腰掛けた。
>

しばらくのあいだ、沈黙。
>

何から話したものかなぁ……。
>

うーん。
>

[Kyouka]
「どうしたの?
>

なにか話があって来たんでしょ?」
>

横に座る鏡香が見上げてくる。
>

[Kyouka]
「まあ、こうやって
>

何も言わずに傍に居るのも――
>

悪くないけどね♪」
>

[Mana]
「そうね……」
>

[Kyouka]
「まな……?」
>

[Mana]
「あのね、鏡香――」
>

[Kyouka]
「ん? どうしたの、
>

そんなに真面目な顔しちゃって」
>

[Kyouka]
「うふふ♪ 
>

真剣な表情のまなも――カワイイ☆」
>

[Kyouka]
「きゃーん☆」
>

ああ、やっぱりいつも通りの鏡香かも。
>

[Mana]
「あのね、鏡香、話って言うのは――」
>

[Kyouka]
「なぁに?」
>

[Mana]
「ケンカ……もう、ケンカしないで」
>

[Kyouka]
「…………え?」
>

[Mana]
「もう、ね、胡桃とケンカするの止めて。
>

今回のことで思ったの」
>

[Mana]
「今まではふたりとも、
>

そこまで大きなケガとか
>

無かったからよかったけど」
>

[Mana]
「あんなケンカしてたら、
>

いつかどっちかが――」
>

[Mana]
「ねえ、お願い、鏡香。
>

もうケンカは――」
>

[Kyouka]
「大丈夫、まな。
>

もうまなを心配させる事は無いわ」
>

[Mana]
「鏡香、それじゃあ――」
>

[Kyouka]
「大丈夫。次で終わらせるから」
>

[Mana]
「え――?」
>

[Kyouka]
「次が最後。次で最期。
>

ふふふ、今度こそ仕留める。
>

そう、私とまなの為に、
>

あの邪魔な小娘を――」
>

別荘中に響き渡るような、
>

重く憂鬱な柱時計の音が、
>

シンデレラリミットの幕開けを告げる。
>

[Kyouka]
「ありがとうね心配してくれて、
>

そんなに私のことを
>

心配してくれてるとは思わなかったわ」
>

[Kyouka]
「でもね大丈夫よまな。
>

その気持ちがあれば私は大丈夫。
>

もう心配はいらない。
>

もう心配をかける事も無い」
>

[Kyouka]
「だって――」
>

[Kyouka]
「もう、ケンカすることも
>

出来なくなるでしょうから」
>

――言って笑う鏡香。
>

その表情を見て、背筋が凍った。
>

[Mana]
「ちょ、ちょっと鏡香?
>

なにか言ってる事おかしくない?」
>

[Kyouka]
「あっはは☆ 
>

邪魔な虫は虫らしく、
>

潰れて死ねばいいんだ」
>

[Kyouka]
「だからねまな、あなたは待ってて。
>

ここで私を待ってて?
>

私があなたの為に
>

全て終わらせてくるから」
>

[Kyouka]
「全て終わらせて、
>

そして全てが始まるの。
>

まながいて私がいる。
>

それだけで世界は事足りるわ!」
>

[Kyouka]
「そうよね!
>

それだけでいいんだものね!!」
>

[Kyouka]
「……なあんだ、まなも一緒だったんだ。
>

私と同じ事を考えてたんだ」
>

[Kyouka]
「ふふ。嬉しいなぁ……
>

まながそこまで私の事を
>

想っててくれたなんて」
>

[Kyouka]
「きゃーん☆
>

やっぱり相思相愛、だったのね☆」
>

[Kyouka]
「だから心配いらないわ。
>

だってまながいるから
>

私がいるんだもん」
>

[Kyouka]
「そうよね、それだけあれば
>

他のものなんていらない。
>

いらない、いらない、いらない……。
>

全部、いらない……」
>

[Kyouka]
「そうよ、そうなんだ、そうなんだから。ふふ、やっぱりそうだったんだ。
>

うん、間違ってない。間違ってないわ」
>

[Kyouka]
「ありがとうまな、行ってくるわ!!」
>

立ち上がる鏡香。
>

私は慌ててその前に立ちはだかった。
>

[Mana]
「ちょ、ちょっと、鏡香!」
>

[Mana]
「話を、ちゃんと聞いて? ねえ?」
>

[Kyouka]
「問題ないわ。
>

だって全部終わるんですもの。
>

そして全部始まる――」
>

[Mana]
「ダメ。ケンカは絶対ダメ!」
>

[Kyouka]
「何を言ってるの?
>

だから行くんじゃない。
>

もうケンカをしなくてもいいように。
>

殺し合わなくてもいいように」
>

[Kyouka]
「まなの方こそ何を言ってるのか、
>

私にはよくわからないわ」
>

[Kyouka]
「ああ、そうか。
>

心配してくれてるんだもんね」
>

[Mana]
「そうじゃなくて!」
>

私が思わず大声を出すと、
>

鏡香はビクッと肩を震わせた。
>

[Mana]
「だから、行っちゃダメなの!
>

胡桃のところに行ってケンカしたらダメ!」
>

[Kyouka]
「まな……?」
>

[Kyouka]
「……まなったら何を言ってるの?
>

おかしな子ね、フフフ」
>

[Kyouka]
「ああ、なんだ、そうなんだ。
>

まなも私の邪魔をするんだ?
>

私とまなとの世界を、邪魔するんだ?」
>

[Kyouka]
「でもね、誰にも邪魔させないの。
>

私とまなの世界の邪魔はさせない。
>

それがまな、あなたであってもね?
>

だからまな。お願いだから――」
>

[Kyouka]
「――でちょうだい」
>

[Mana]
「――鏡香?」
>

よく、聞こえなかった。
>

鏡香がなんと言ったのか。
>

それでも身体は感じていた。
>

頭で理解するよりも早く。
>

――恐怖を。
>

気が付けば、
>

私はその場から逃げ出していた。
>

廊下を走りながら、考える。
>

逃げる――と言ってもどこへ?
>

窓は開かない、出口と呼べるものは
>

このお屋敷の玄関のみ。
>

そう頭ではわかっていたけれど、
>

私が逃げたのは、
>

自分の泊まっている部屋の方だった。
>

[Mana]
「胡桃に、しらせなきゃ、
>

鏡香が来てるって」
>

でも、なんて言う?
>

言ってどうする?
>

事情を説明して、ふたりで鏡香を
>

説得すれば事態は収まるかもしれない。
>

胡桃には悪いけど、
>

ふたりでごめんなさいすれば――。
>

[Kyouka]
「ねえ、まな、ちょっと待って?
>

そんなに慌ててどうしたの?」
>

廊下の向こうから、頭に響く鏡香の声。
>

せり上がってくる恐怖を抑え込み、
>

私は振り返らずに走った。
>

――と、
>

[Mana]
「わっ!?」
>

[Kurumi]
「きゃっ!?」
>

廊下の曲がり角で不意に現れた胡桃と
>

ぶつかって転んでしまう。
>

[Kurumi]
「イタタタタ……お姉ちゃん、
>

どうしたのそんなに急いで?」
>

[Mana]
「いてて……って、胡桃!?」
>

[Kurumi]
「へ? うん、胡桃だよ?」
>

[Mana]
「あのね、長々と説明している暇は
>

ないんだけど――」
>

胡桃に鏡香の事を説明する暇も無く。
>

[Kyouka]
「――まな? どうしたの? まな?」
>

鏡香の声が近づいてくる。
>

それに、胡桃も反応した。
>

[Kurumi]
「あ、そういうことね?」
>

なにかに納得したように胡桃が頷いて立ち上がる。
>

[Kurumi]
「大丈夫、お姉ちゃん」
>

[Kurumi]
「あんなやつ、
>

私が倒してあげるから」
>

[Mana]
「いや、そうじゃなくて――!!」
>

[Kurumi]
「お姉ちゃんは逃げて、
>

部屋に戻ってて!!」
>

[Kyouka]
「まな? まな?
>

どこまで行くの?」
>

廊下の向こうから、
>

やや早足で歩いてくる鏡香。
>

私の前にいる胡桃を見つけ、
>

表情を曇らせる。
>

[Kyouka]
「……邪魔虫が……っ」
>

[Kurumi]
「いい加減にしないかね、
>

アンタも」
>

[Kyouka]
「その台詞、そのままお返しするわ」
>

[Kurumi]
「はン。
>

昨夜の事はすっかり忘れたみたいだな。
>

あのメイドが割って入らなければ――」
>

[Kyouka]
「いいでしょう、
>

今度こそどちらが上か、
>

その身をもって教えて差し上げますわ!」
>

ぶつかり合うふたり。
>

私は胡桃の言うとおり、
>

部屋に飛び込んだ。
>

ドアを閉めて、
>

しばらくその場に立ち尽くしていたけど、
>

やっぱり外の様子が気になって
>

ドアを恐る恐る開けてみると――、
>

[Kurumi]
「――きゃっ!!」
>

悲鳴とともに、
>

胡桃がまるで人形のように宙を舞い、
>

廊下に叩きつけられた。
>

[Kyouka]
「これで御終いね」
>

音も無く、
>

廊下を滑るように移動する鏡香。
>

[Kyouka]
「死になさい――」
>

[Mana]
「危ない――!!」
>

その時だった。
>

[Inoue]
「――っく!
>

も、申し訳ありませんが、
>

――そこまでです」
>

振り下ろされた凶器を受け止め、
>

胡桃をかばったのは井上さんだった。
>

いや、正確には鏡香の攻撃を全て
>

受け止めきれなかったらしく、
>

井上さんの口の端からは、
>

血が垂れていた。
>

[Kyouka]
「――井上。
>

どういうつもりかしら……」
>

[Inoue]
「お嬢様、もう、お時間です」
>

あちらこちらを痛めたのか、
>

井上さんの言葉に力がない。
>

[Kyouka]
「お前は……
>

お前はどうして私の邪魔をするの!?」
>

[Mana]
「ちょ、ちょっと鏡香!
>

井上さん怪我したんだよ!?
>

なのにそんな言い方って――」
>

[Kyouka]
「まなには関係ありませんわ!
>

どうしてたかが従者が、
>

主人の趣向を遮ったのか!
>

……私は今非常に不愉快よ」
>

[Inoue]
「申し訳、ございません。
>

お叱りは後でお受けいたします。
>

ここはひとまず、お納め下さい」
>

[Kyouka]
「ハッ! 井上。
>

時計の針はまだ真上を
>

指していないわよ」
>

[Inoue]
「存じて、おります。
>

零時まではあと1分程度
>

残されております」
>

[Kyouka]
「それを知った上で私の前に姿を現したということがどういうことか、
>

理解できないあなたではないでしょう?」
>

[Inoue]
「…………」
>

[Kyouka]
「あなたの両膝を床につけるくらい、
>

30秒……。
>

いえ、15秒あれば事足りるわ」
>

[Inoue]
「主のお手を煩わせずとも、
>

私は『はいつくばれ』と命じられれば、
>

即座にそう致します」
>

[Kyouka]
「井上ぇ……!」
>

井上さんに相対し、
>

再び鏡香の瞳が薄く、
>

禍々しく染まっていく。
>

まさか……井上さんを!?
>

[Mana]
「鏡香っ! ダメっ!」
>

時計の音……。
>

今、夜中の0時になったんだ。
>

シンデレラリミットが、終わる。
>

[Kyouka]
「…………ふん。
>

興が削がれたわ」
>

井上さんから視線を外すと、
>

鏡香はくるりと背を向けた。
>

[Mana]
「鏡香!
>

井上さん怪我してるんだよ!
>

なのにそんな態度……あんまりです」
>

[Kyouka]
「…………」
>

立ち去ろうとしていた
>

鏡香の足が止まる。
>

[Mana]
「ほ、ほら鏡香。
>

井上さんを手当てして――」
>

[Kyouka]
「命拾いしたわね」
>

[Mana]
「――え?」
>

[Kyouka]
「あら。
>

気を失ってしまったのかしら?
>

そこのネズミが起きたら、
>

そう伝えておいて頂戴、まな」
>

鏡香は倒れたまま動かない胡桃を
>

指していた。
>

[Kyouka]
「井上。この散らかった廊下、
>

片づけておきなさい。
>

それと、熱いお茶が飲みたいわ」
>

[Mana]
「鏡香……」
>

[Inoue]
「かしこまりました」
>

それ以上は何も言わずに、
>

鏡香は部屋へと戻っていった。
>

まるで、血を流す従者など
>

見えていないかのように。
>

[Inoue]
「っく!」
>

[Mana]
「大丈夫ですか!?」
>

よろめく井上さんを抱える。
>

いつもは頼もしく見える井上さんの
>

体だけど、こんなに華奢だったんだ……。
>

[Inoue]
「あ……申し訳、ありません。
>

私ならお構いなく。
>

少し休めば問題ありませんので」
>

そうは言うけれど、井上さんの顔に
>

いつもの凛々しい覇気もないし……。
>

[Inoue]
「胡桃様は私が部屋まで
>

お連れしますので、ご心配なさらずに」
>

井上さんが胡桃を抱えあげると、
>

[Inoue]
「あとはこちらにお任せ下さい。
>

二ノ瀬様はお部屋でお休みになられてくださいませ」
>

[Mana]
「……は、はぁ」
>

てきぱきと胡桃を部屋へと
>

連れて行く井上さん。
>

もうふらつく様子もありませんし、
>

本当に大丈夫みたい。
>

そして廊下に一人残された私。
>

[Mana]
「井上さんは、
>

それでいいんですか……」
>

そう呟かずには、いられませんでした。
>
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