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1day/殺し合い1.ks
Lines: 599
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[Kurumi]
「ふはーおなかいいっぱい」
>

満足そうにぽんぽんとおなかを叩く胡桃。
>

ううう、
>

昼ごはんに続いて夜ごはんまで
>

おなかいっぱい食べちゃいました……。
>

[Kurumi]
「すっごいごちそうだったね!」
>

[Mana]
「……そうね」
>

その分高カロリーなんだろうなぁ……。
>

[Kurumi]
「拉致られたときはどうしようかと
>

思ったけど、いざ来ちゃえば
>

ご飯は美味しいし、空気は綺麗だし、
>

ホテルみたいだし!!」
>

[Kurumi]
「……これがロハだなんて、
>

お金持ちってすごいわね~」
>

ロハって……胡桃ってたまに
>

世代を超えるわよねぇ。
>

とても現代っ子とは思えない単語です。
>

[Kurumi]
「……ちょっと、お姉ちゃん?
>

聞いてる?」
>

[Mana]
「あ、はい?
>

ええと、
>

胡桃は食べても太らなくていいわね?」
>

[Kurumi]
「何の話よ、全く。
>

まあ、確かに食べてもあんまし
>

太らないけど」
>

[Mana]
「うらやましいですよねー……」
>

[Kurumi]
「そんなことよりも、よ」
>

[Mana]
「うん?」
>

[Kurumi]
「これからどうしよう?」
>

[Mana]
「そうねぇ……」
>

まだおなかもいっぱいだし、
>

あれこれ動き回るにはちょっとつらい、
>

かなぁ。
>

[Kurumi]
「少し時間たったら迎えにいくからさ、
>

屋上にいかない?
>

星空とか絶対に綺麗だよ!!」
>

[Mana]
「んー、天気もよかったし、
>

星もよく見えそうね~」
>

昼前にお屋敷を探索した際に、
>

屋上への階段を見つけていました。
>

そこは鍵がかかっていなかったことを
>

憶えていますが。
>

[Kurumi]
「でしょ? でしょでしょ?
>

胡桃、天の川とか、
>

見たことないんだよね~
>

これくらい山奥なら~」
>

[Mana]
「たしかに、お姉ちゃんも天の川なんて小さいころ見た以来かも」
>

地元は都会、ってほどじゃないけど
>

それなりにビルとか、
>

街の明かりが明るくて、
>

星空なんかほとんど見えない。
>

見えたところでせいぜいオリオン座がいいところ。
>

[Kurumi]
「夏の大三角形とか~」
>

[Mana]
「でも、星が多すぎると
>

どれが天の川だかわからない、
>

ってきいたことあるよ」
>

[Kurumi]
「それはそれですごいじゃん!!」
>

そう言って胡桃は私の両手を取ると
>

――きゅっ、と胸に抱きしめた。
>

ふよん、と胡桃の胸の柔らかい感触が伝わる。
>

[Mana]
「ちょ、ちょ、胡桃?」
>

そのままぐいっと引き寄せられて――胡桃の顔が目の前に迫る。
>

息使いが感じられる、そんな距離。
>

[Kurumi]
「ねえ、お姉ちゃん?」
>

いつもとは違う、
>

ちょっと大人っぽい感じの胡桃の声。
>

思わずどきん、としちゃう。
>

[Kurumi]
「胡桃、お姉ちゃんと星が見たいなぁ。
>

夜風に吹かれながら……
>

満天の星空の下……
>

ねえ、すっごくロマンチックじゃない?」
>

[Mana]
「う、うんそうだよね」
>

[Kurumi]
「流れ星、見れないかなぁ……」
>

どこか熱っぽい胡桃の表情に、
>

吸い込まれそうになる私。
>

[Kurumi]
「願い事……しちゃうんだから」
>

[Mana]
「そ、そうなんだー」
>

[Kurumi]
「がるるるっ」
>

これは、願い事の内容を聞け!
>

ってこと、なのかな。
>

[Mana]
「な、何をお願いするのかな?」
>

[Kurumi]
「やぁ~ん、そんなの聞かなくても、
>

わかるでしょ~?」
>

[Mana]
「聞かせといてそれかい」
>

[Kurumi]
「え?」
>

というのはナシで。
>

ごくり、となぜか喉がなる私。
>

胡桃の迫力に気押されてる……?
>

[Kurumi]
「ふふ。
>

隙アリ………ちゅ☆」
>

[Mana]
「ふにゃっ!?」
>

不意打ちのように
>

ほっぺたにキスをされた。
>

[Kurumi]
「ダメだな~
>

お姉ちゃんたら隙だらけだよ、本当。
>

そんなんじゃ将来苦労しちゃうヨ?」
>

[Mana]
「いや、だだ、だからって!
>

キスすることないじゃない!?」
>

[Kurumi]
「……だめぇ?」
>

[Mana]
「ぅぐ!?」
>

あぁチクショー!
>

かわいいぞマイシスター!
>

っは!
>

そんなこと考えてる場合じゃなくて――
>

[Mana]
「ダメとかそういうんじゃないけど……」
>

[Kurumi]
「じゃあいいじゃん♪」
>

[Mana]
「いや――まあ、うんいいや……」
>

なんか反論する気力も失せて
>

がっくりきました。
>

[Kurumi]
「うふふ!
>

今から夜が楽しみになってきたっ!
>

じゃ、あとで迎えにいくからね!!」
>

そう言って、
>

先に走っていってしまいました。
>

[Mana]
「あ、うん、またあとでネー」
>

聞こえたかどうかわからないけど……。
>

[Mana]
「びっくりした……」
>

いつも見てるはずの、
>

知ってるはずの胡桃が、
>

まったくの別人に見えた。
>

ちょっとウレシ……いやいや、
>

怖い、けど。
>

[Mana]
「……胡桃もきっと、
>

興奮してるんだろうな。
>

こんな、高級ホテルみたいな
>

別荘に泊まれて……」
>

うん、きっとそう。
>

そうだと思います。
>

私だってビックリしてるし。
>

そういうことにしよう。
>

ふう、と胸をなでおろす。
>

――と、
>

[Mana]
「でも、まだおなかいっぱいだなぁ……」
>

胸からお腹に手を滑らせ、さする。
>

午後はまったり過ごして
>

ほとんど動いてないのに、
>

夕飯はがっつりおなかいっぱいとか。
>

だって牛さんが美味しくて……。
>

ついつい我を忘れて食べてしまった。
>

仕方ない、
>

ちょっと部屋の中でも歩き回って
>

カロリー消費しますか。
>

[Mana]
「……んしょ……んしょ」
>

はたしてどれだけの効果があるのかはわからないけど、
>

歩かないよりはマシ。
>

歩いてカロリー消費カロリー消費。
>

…………。
>

……。
>

……。
>

[Mana]
「飽きた」
>

しばらく部屋の中を
>

ぐるぐると歩いていたけど、
>

いい加減飽きました。
>

もういいや。
>

私はそのままベッドへと倒れこんだ。
>

……ふかふか。
>

このまま眠れそうなくらいに……。
>

[Mana]
「本当、高級ホテルみたい」
>

ごろん、と仰向けになって
>

天井を見上げる。
>

いつもの自分の部屋と、違う天井。
>

なんか豪華なシャンデリアがきらきら。
>

壁紙もカーテンもすべてがお姫様仕様。
>

普通にお金払って泊まるとしても、
>

私のおこづかいじゃ無理です。
>

[Mana]
「わけわからないうちに
>

車に押し込まれて、
>

気がついたらどこだかわからない
>

避暑地に連れてこられて……」
>

[Mana]
「でも……鏡香には本当感謝、かな」
>

なんだかんだ言いつつも
>

楽しんでる胡桃を見ると、
>

手口は強引だったけどここに連れて
>

こられたのは何気に正解だったのかも。
>

こんな夏休み、絶対に体験できないし。
>

[Mana]
「うん。鏡香には感謝、だね」
>

その時だった。
>

[???]
「フフ、愛しいまなの為ですもの……。
>

それくらいはお安い御用、ですわ♪」
>

がばっ!
>

と後ろから誰かに抱きしめられて、
>

[Mana]
「ふぇっ!?」
>

物音も何もなかったし、
>

私以外誰もいないはずの部屋――
>

なのに!?
>

[Kyouka]
「喜んでくれて私も嬉しいわ♪」
>

背中から聞こえてきたのは――
>

鏡香の声だった。
>

[Mana]
「あ、まあ、うん。
>

喜んだは喜んだけど……。
>

って、え? あれ?
>

いつの間に??」
>

[Kyouka]
「ここは私の別荘だもの。
>

どっからだって入れるわ☆」
>

……入れるわ☆ って、
>

そんな可愛らしく言っても
>

不自然なのは不自然っ!!
>

[Kyouka]
「まあいいじゃないそんなこと」
>

[Mana]
「ううう、なんか釈然としないぃ」
>

[Kyouka]
「そ・れ・よ・り・も☆
>

……ふーっ」
>

[Mana]
「ひやぁぁっ!?」
>

耳元に熱い息を吹きかけられて、
>

またまた変な声を出してしまう。
>

[Kyouka]
「ねえ――まな」
>

[Mana]
「な……なによぅ……」
>

[Kyouka]
「このあと、さ。
>

一緒に星でも見に行かない?
>

都会の街中じゃあ絶対に
>

見れないくらいに見事な星空よ?」
>

[Mana]
「え――うひゃっ!?」
>

[Kyouka]
「きゃーん♪
>

まなったらホント反応が
>

可愛いんだからっ」
>

[Mana]
「いや、ちょ、そこ胸――」
>

[Kyouka]
「知ってるわよ♪」
>

[Mana]
「あ――や、あわあっ!?」
>

[Kyouka]
「全部知ってるわ……
>

まなの弱いところも、
>

好きなところも……」
>

[Mana]
「やあんっ、鏡香、
>

ってば、ほんとに――っくうんっ!」
>

[Mana]
「ん? んあっ……!
>

ケータイ……鳴ってる……」
>

どうにか鏡香の腕から逃れようと
>

もぞもぞと動いて、
>

ケータイへと手を伸ばして――
>

けれども、途中で引き戻されて、
>

今度は向かい合わせに
>

抱きしめられてしまいました。
>

[Kyouka]
「そんなのいいじゃない」
>

[Mana]
「でも……でも……」
>

[Kyouka]
「……うるさいわねぇ……」
>

近づいてくる鏡香の顔……って、
>

[Mana]
「――え?」
>

[Kyouka]
「ちゅむ☆」
>

[Mana]
「――むぐぅっ!!」
>

[Kyouka]
「ん――――ぷはっ」
>

[Mana]
「はぁ……はぁ……。
>

鏡香……どうしたっていうの?」
>

[Kyouka]
「――ねえ、まな。
>

うちの中庭が絶好の展望スペースなの」
>

[Kyouka]
「そこなら星もいっぱい見れるし、
>

他に誰も来ないし――ねえ、まな?
>

一緒に――行きましょう」
>

……と、その時。
>

[Kurumi]
「ぃやっほー! おっ姉ちゃーん!!
>

迎えに来たよ――って!!!?」
>

[Kyouka]
「……チィッ」
>

[Kurumi]
「え? あ? おねえ、ちゃん?」
>

次の瞬間、ふわっ、
>

と体が浮いたかと思ったら、
>

いつの間にか鏡香の腕から
>

抜け出していて、
>

鏡香と私の間に、
>

胡桃が割って入っていました。
>

[Kurumi]
「なにを――している?」
>

[Kyouka]
「ふん。貴方こそ、
>

ここへ何をしにいらっしゃったのかしら?」
>

[Kurumi]
「質問しているのは私の方だ。
>

何をしている、と訊いている」
>

[Kyouka]
「あら――」
>

[Kyouka]
「――誰に口を聞いているのかしら?」
>

[Kurumi]
「へぇ――
>

死にたいんだ、アンタ?」
>

[Kyouka]
「そちらこそ――!!」
>

[Mana]
「え?
>

ちょっと――ふたりともっ!?」
>

[Kyouka]
「心配は無用よ、まな。
>

ここへやってきた時にも話したと
>

思うけれど、夜は我々の時間。
>

今この土地は白宮家の支配下にある」
>

[Kurumi]
「ここで何が起ころうと、
>

なにもなかったかのように朝日は昇る、
>

って寸法か。いいねぇ。
>

思い切りブチのめせるワケだ」
>

[Kyouka]
「時計が真上を示すまで……。
>

この別荘はカボチャの馬車。
>

そして私達はガラスの靴をはき、
>

舞踏会に咲くシンデレラ」
>

[Kyouka]
「約束されたひと時の魔法。
>

『シンデレラリミット』
>

この夢が醒めた時、アナタはまだ
>

踊っていられるのかしら?」
>

[Mana]
「夜もおかまいなく騒いでね~
>

っていう感じだと思ったけど……。
>

そんな物騒なニュアンスは含まれて
>

なかったような……アハハー」
>

あぁ、なんだかめまいが……。
>

[Kurumi]
「似合いもしない、
>

メルヘンな名前をつけたもんだ。
>

アンタには、
>

差し詰め魔女役が適任だと思うけどな?」
>

[Kyouka]
「言ってくれるじゃない。
>

アナタこそボロを着て床掃除をしている姿がとても似合っていてよ?」
>

[Kurumi]
「フン、もうごたくは聞き飽きたね」
>

[Kyouka]
「……そう。
>

では少しばかり、
>

食後のダンスと参りましょうか?」
>

弾けるように、
>

鏡香がベッドから飛び降りる。
>

胡桃も淀みない動きで床に降り立った。
>

[Kurumi]
「さっきは黒服の男に邪魔をされたが、
>

今回は呼ばなくていいのか?」
>

[Kyouka]
「ふん。
>

別に、そんなのよろしくてよ?」
>

[Kurumi]
「はんッ。温室育ちのお嬢様が。
>

後悔するなよ」
>

[Kyouka]
「後悔するな? ですって?
>

それはこっちの台詞ですわ」
>

[Kurumi]
「減らず口を!!」
>

ひゅんっ!
>

胡桃は低い姿勢から前にダッシュ!
>

そこからの――上段蹴り!!
>

しかし、距離が浅いか、
>

鏡香は上体をそらしてそれをかわす。
>

[Kurumi]
「まだまだ!」
>

さらに踏み込んで正拳突き――!
>

鏡香はそれを捌くと、
>

再び間合いを取った。
>

……うそ、鏡香もすっごい強い……。
>

[Kyouka]
「どうしたの?
>

大口叩いておいてその程度かしら?」
>

[Kurumi]
「貴様……、
>

さっきは実力をわざと見せなかったな?」
>

[Kyouka]
「ふん。想像もしなかったかしら?
>

井上、鈴木、田中は私に仕えている、
>

これがどういうことか」
>

[Kurumi]
「何――?」
>

[Kyouka]
「ヒエラルキーの頂点たる主が
>

使用人より弱い道理が
>

どこにあると思って? 
>

そこへと思考が達しなかった時点で」
>

[Kyouka]
「貴女の負け、よ」
>

――いや、全然話に、
>

展開についていけてません。
>

ヒエラルキーとか道理とか、
>

何の話ですか?
>

誰か、広○苑プリーズ!
>

[Kurumi]
「――チッ!」
>

胡桃がもう一度飛びかかろうとした、
>

その時。
>

[Kyouka]
「ふふふ……ははは……
>

あーっはっはっは!!!」
>

[Kyouka]
「――その程度、か?」
>

鏡香の姿が――消えた!!
>

慌てて周囲を見回す胡桃――と、
>

[Kyouka]
「期待外れ――ね」
>

まるで影から染み出したかのように。
>

鏡香はいつの間にか
>

胡桃の背後を取っていた。
>

[Kyouka]
「これで――チェックよ」
>

力などほとんど入っていないかのような鏡香の所作。
>

[Kurumi]
「え――?」
>

ふわり、と胡桃の身体が宙を舞い――気がつけば床に転がされていた。
>

[Kyouka]
「――ふん」
>

[Kurumi]
「ッが!!」
>

[Kyouka]
「憐れね」
>

[Kurumi]
「……ぅぐ」
>

[Kyouka]
「……くっく……はーっはっはっは!
>

いい姿よ? 胡桃さん?
>

そうやって――這い蹲って!!」
>

[Kyouka]
「ふふふふ!
>

貴女はただの邪魔者だけれども、
>

苦痛と恥辱に歪んだその表情だけは、
>

嫌いじゃないわよ!」
>

[Kyouka]
「普段もそうやっていれば、
>

少しは可愛げがあるのにねぇ!!」
>

[Kurumi]
「かはっ!」
>

[Kyouka]
「ホラホラホラ? 
>

どうしたの?
>

もう何も言えないのかしら?
>

つまらないわね?」
>

[Kyouka]
「もっと抵抗して頂戴? 
>

もっと反抗して頂戴?」
>

[Kyouka]
「そのたびに何度でもこうやって
>

踏みつけてやるんだから!
>

這い蹲らせて許しを請わせて――」
>

[Kyouka]
「――でもね、許してあげない。
>

貴女は許してあげない、だって邪魔
>

なんですもの、貴女は私とまなとの
>

間を邪魔する虫ケラ」
>

[Kyouka]
「虫ケラは虫ケラらしく
>

このまま踏み潰されて――」
>

[Kyouka]
「――死になさい」
>

[Kurumi]
「虫ケラ、ね」
>

[Kurumi]
「――ニィ」
>

[Kyouka]
「……なによ、その笑い」
>

[Kurumi]
「いいや、
>

まったくおめでたいと思ってね」
>

[Kyouka]
「負け惜しみ?
>

それとも私が口だけだと?」
>

[Kurumi]
「さっきも言ったろ?
>

温室育ち、って事さ。
>

転ばせて踏みつけて、
>

勝った気でいやがる」
>

[Kurumi]
「はン。まったくおめでたい――」
>

[Kyouka]
「少しは命乞いでもするかと思ったのに」
>

[Kyouka]
「いいわ。
>

それならばお望みどおり、
>

――殺してあげる」
>

そう告げると鏡香はテーブルの上に
>

おいてあった燭台を手に取る。
>

[Mana]
「鏡香っ!?」
>

しかし立てるべき蝋燭は無く、
>

その先端は非常に鋭利で――
>

一突きで充分殺傷能力のある、
>

立派な凶器だった。
>

[Kyouka]
「消えなさい。死になさい。
>

そして絶望なさい」
>

屈みこみ、
>

燭台を胡桃の背中へと押し当てる。
>

[Mana]
「じょ、冗談はもうそのくらいにしてよ?
>

いくら鏡香だって、私怒るよ?」
>

[Kyouka]
「皮膚を裂き肉を貫き臓腑を抉る。
>

真っ赤な血とともに、
>

貴女の命は流れ落ちる」
>

[Mana]
「ウ、ウソ……」
>

鏡香に私の声はまるで届いていない。
>

まるで本の外からお話の登場人物に
>

向かって話かけているような虚無感。
>

鏡香は……本当に胡桃を殺す気だ。
>

[Kyouka]
「その間、貴女の苦悶の表情を
>

私が見ててあげるわ――」
>

しかし。
>

[Kurumi]
「――その余裕が、
>

温室育ちだと――!!」
>

稲妻が走ったかのような胡桃の動き。
>

燭台を持つ手を逆関節に!
>

捻られ、折られるのを嫌がった鏡香が、身体ごと回転させて逃げる。
>

その動きを利用し、身体を入れ替えてマウントポジションを取る胡桃。
>

だが、その寸前で鏡香は手に持って
>

いた燭台を投げつけた!
>

上体を反らせて避ける胡桃。
>

鏡香はその隙に立ち上がり、
>

棚の上にあった花瓶を手に取る!
>

電光石火とはこのこと。
>

鏡香が攻勢に出るよりも早く、
>

胡桃が一歩、踏み込む!
>

踏み込みで部屋が震えた。
>

瞬間、間合いが劇的に詰まる。
>

攻撃に移る直前の、体勢が整う前の
>

鏡香に胡桃は肩口からぶつかった!!
>

[Kyouka]
「ぐうっ!!?」
>

まるで交通事故のビデオでも
>

見てるみたいに、
>

鏡香と、鏡香が持っていた花瓶とが、
>

空中に投げ出された。
>

壁に激突する――寸前に、
>

空中でくるんと体勢を整えて
>

壁をクッション代わりに、
>

猫のような動きで着地する。
>

[Kurumi]
「――貼山靠(てんざんこう)。
>

そして、さらに――」
>

円の動き。線の動き。
>

独特の歩き方で滑るように
>

間合いを詰める胡桃。
>

胡桃もまた、
>

手近にあった陶器を手にとり――、
>

[Mana]
(……ちょっと、ふたりともどうして……)
>

宙を舞っていた花瓶が――
>

落ちて割れた。
>

[Mana]
「――ハッ!?」
>

[Mana]
(って、感心してる場合じゃない!!)
>

あっけに取られてただただ見てる
>

だけしかできませんでしたが、
>

花瓶が割れる音で、
>

ようやく我に返りました。
>

[Mana]
「もう――いい加減にしなさい!!!」
>

[Inoue]
「――そこまでです」
>

音も無く気配も無く、ふわり。
>

かすかな空気の動きだけを残して、
>

井上さんが二人の間に割って入った。
>

宙に浮いた鏡香を抱きとめ、
>

追撃を打ち込んできた胡桃を受け流す。
>

[Inoue]
「お嬢様も胡桃様もそこまでです」
>

[Kurumi]
「……なに?
>

従者風情が、水をさす気か?」
>

[Kyouka]
「馬鹿! 止めるな! 割って入るな!
>

まだ私は本気ではない!
>

余計な真似をするな!」
>

[Inoue]
「お生憎ですが、お嬢様。
>

お時間です」
>

[Kyouka]
「っ……」
>

シンデレラにかけられた魔法が
>

一瞬にして解けてしまったように、
>

鏡香と胡桃から殺気が消えていく。
>

鏡香の視線の先、
>

部屋に備え付けられた時計。
>

時計の針は丁度0時をさしていた。
>

[Inoue]
「差し出がましいのは
>

重々承知しております。
>

ですが、まもなく自動警備システムが
>

作動してしまいます」
>

[Kyouka]
「クッ……わかっている。
>

井上、鈴木、田中が動ける時間は
>

もうないということね」
>

[Inoue]
「はい、申し訳ありませんが、
>

これ以降の時間帯に起こった事象に
>

関しては、保障いたしかねます」
>

[Kurumi]
「なるほど。
>

これは手を引くしかなさそうだ。
>

命拾いしたな、バカ宮?」
>

[Kyouka]
「ほざきますわね、ねずみの分際で」
>

[Mana]
「あ、あの……。
>

よくわからないんですが、
>

無茶が許されるのは夜中0時まで、
>

ってことですよね?」
>

[Inoue]
「ご理解が早くて助かります」
>

と、とにかく、
>

もう二人のケンカはここまで!
>

って、ことよね? ね?
>

[Kyouka]
「フン、興がさめました。
>

井上、部屋の整理をお願い」
>

[Inoue]
「かしこまりました」
>

[Kyouka]
「それでは、まな、
>

良い夢を」
>

そうとだけ告げて、
>

鏡香は何事もなかったかのように
>

帰って行った。
>

[Kurumi]
「さてっと、もう寝るね。
>

お姉ちゃんおやすみー」
>

胡桃もまた、何事もなかったかのように、
>

自分の部屋に戻って行った。
>

そして取り残される、私と井上さん。
>

[Inoue]
「部屋の清掃が終わり次第
>

お呼びいたしますので、
>

それまで別室でおくつろぎください」
>

視線のやり場にこまり、
>

つい井上さんを見つめてしまう。
>

[Inoue]
「……? 
>

他になにかご都合の悪いことでも?」
>

[Mana]
「い、いえ。
>

そういうわけじゃ、ないです」
>

[Inoue]
「さようですか。
>

それでは、清掃をはじめさせて頂きます」
>

あんなことがあった直後に、
>

どうしてみんな平然としていられるのか。
>

まだ頭が混乱している私は、
>

気のない返事をすることしか
>

できませんでした。
>

[Inoue]
「……驚かれておいでのようですね」
>

[Mana]
「へ?」
>

部屋の掃除を始めようとしていた
>

井上さんが、再び私に向き直っていた。
>

[Inoue]
「今夜はお二人とも、
>

おふざけが過ぎたようです。
>

どうか、あまりお気になさらないように」
>

[Mana]
「え? あ……あぁ! あはは!
>

そ、そうですよね。
>

二人とも悪ふざけしてただけですよね。
>

もぉ、今度やったら叱ってあげます」
>

[Inoue]
「えぇ、まったく。
>

お互い殺す機会は
>

何度もあったというのに、
>

おふざけがお好きのようですね。フフッ」
>

そう言ったきり井上さんは、
>

掃除用具を取りに行ってしまった。
>

床にはどちらのものともわからないが、
>

紅い染みが飛び散っていた。
>

[Mana]
「……なんなの、この別荘……」
>

たしかに3人で楽しいバカンスなんて、
>

一筋縄ではいかないと思ってたけど。
>

実際、ここまで仲が悪いとなると困ったものです。
>

このままじゃ……私、殺されちゃう?
>

[Mana]
「逃げなきゃ……でも、
>

退路は無かった」
>

いやいや。
>

なーんて、
>

我ながらこれはオーバーですかね。
>

井上さんの大げさな言い方に影響されちゃったかな?
>

本当、井上さんたら大げさなんだから!
>

……ううん、
>

でもそれくらいに真剣にならないと
>

きっとふたりはまたケンカする。
>

そのケンカも尋常じゃないレベルだし。
>

それに……ふたりともすぐに私に……
>

その、抱きついたりキスとかしてくるし!
>

まるで肉食獣が野放図に
>

うろついているようなもの。
>

いつ喰われるかわからない。
>

……そりゃもういろんな意味で。
>

[Mana]
「なら、二人の仲をなんとか取り持って
>

逃げのびるしか……」
>

命と貞操の危機! です。
>

けれども、あんなに仲の悪い二人を
>

和解させることなんて……。
>

[Mana]
「けれど、やるしかないよね。
>

そうじゃないと……」
>

鏡香か胡桃。
>

どちらか一方が勝ち残ったとしても、
>

きっと私は……。
>

私の脳裏を駆け巡った
>

R指定な想像たち。
>

頭を振ってその想像を振り払う。
>

[Mana]
「逃げのびてみせるんだから!」
>

なんとかしてみせる。
>

期待と希望に溢れたこの夏休みを
>

無事に過ごすためにも……。
>
limit_panic/koroshiai1.txt · Last modified: 2014/05/25 12:55 (external edit)