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limit_panic:event3b
3day/イベント3B.ks
Lines: 384
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[Mana]
「……はい?」
>

こんな時間に誰だろう?
>

時計を見ると、
>

もう草木も眠ると言われる時間帯。
>

なんだかどっと疲れが出て、
>

ベッドに転がってたのに。
>

重い身体をどうにか起こし、
>

ドアまでたどり着く。
>

[Mana]
「誰です?」
>

ドア越しに声をかけると、
>

[Inoue]
「夜分に申し訳ありません。
>

まな様、井上です」
>

その声は確かに井上さんのもの。
>

一瞬、逡巡したのちに、
>

私はドアを開けました。
>

いつもと同じように、
>

綺麗な姿勢の井上さん。
>

[Mana]
「こんな時間にどうしたんです?」
>

[Inoue]
「申し訳ありません。
>

お嬢様にまな様をお迎えにあがるよう
>

申しつけられて参りました」
>

[Mana]
「ほえ。鏡香が?
>

こんな時間に?」
>

[Inoue]
「はい。お嬢様がお呼びです」
>

[Mana]
「……私を?」
>

[Inoue]
「まな様に大切なお話があるそうです」
>

うーん。
>

こんな時間に呼び出しとか……。
>

何の話でしょうか。
>

今日のケンカのことや、
>

胡桃とのいざこざ、
>

その事……かな?
>

もしかして仲直りしたい、とか?
>

……それは都合よすぎるかな……。
>

うーん。
>

とりあえずは行って、
>

話を聞いてみるとしますか。
>

[Mana]
「はい、わかりました」
>

[Inoue]
「申し訳ありません」
>

[Mana]
「いえいえ。
>

まだ寝る前だったから大丈夫ですよ」
>

正確には、寝付けなかった、のですが。
>

[Inoue]
「ありがとうございます。
>

それではご一緒に――」
>

[Inoue]
「お嬢様、まな様をお連れいたしました」
>

[Inoue]
「お嬢様?」
>

[Kyouka]
「――聞こえてるわ井上」
>

部屋の中から鏡香の声。
>

井上さんは部屋の中の鏡香に向かって頭を下げると、
>

[Inoue]
「それではまな様、どうぞ――」
>

ドアを開けて私を促しました。
>

[Mana]
「あ、すみません」
>

促されるままに部屋に入る私。
>

背後でドアの閉まる音。
>

そして、
>

[Kyouka]
「――いらっしゃい、まな」
>

部屋の真ん中、鏡香が立っていました。
>

見た感じヘンなところはなさそうです。
>

……やっぱり、仲直り、とか?
>

[Mana]
「こんな時間にどうしたの? 鏡香」
>

[Kyouka]
「ふふ。
>

あなたと少しお話がしたくってね?」
>

[Mana]
「うん。
>

それは井上さんから聞いてるけど……」
>

[Kyouka]
「さぁさ。
>

そんなところに突っ立っていないで、
>

どうぞこちらにおかけになって?」
>

そう言って、
>

椅子を引いて私に座るよう勧める鏡香。
>

珍しいです。
>

鏡香がこんなことするなんて。
>

[Kyouka]
「……どうかしたの? 変な顔して」
>

[Mana]
「あ、なんでもないなんでもない」
>

[Mana]
「んじゃ、お言葉に甘えて……んしょ」
>

鏡香がこんなことするなんて珍しいなぁ。
>

いつも井上さんに全部やってもらってるイメージがあるから……。
>

なんかこういうことされるとちょっと
>

くすぐったい。
>

[Kyouka]
「何ニヤニヤしてるのかしら?」
>

[Mana]
「ううん、なんでもないなんでもない」
>

ぱたぱたと手を振る私を見て、
>

鏡香は怪訝そうな表情を浮かべつつ、
>

私の正面に座り直しました。
>

[Kyouka]
「おかしなまな。まあいいわ。
>

井上!」
>

[Inoue]
「――はい、お嬢様。
>

お呼びでしょうか」
>

[Kyouka]
「お茶でも準備なさい」
>

[Inoue]
「そう仰られると思い――」
>

入ってきた井上さんの手にはポットと、
>

カップの乗ったお盆。
>

[Inoue]
「紅茶を淹れて参りました」
>

[Kyouka]
「よろしい」
>

[Inoue]
「ありがとうございます」
>

目の前にてきぱきと
>

カップが並べられていく。
>

[Inoue]
「失礼いたしました」
>

お茶の準備が終わると、
>

井上さんは一礼し、
>

また部屋から出て行きました。
>

[Kyouka]
「じゃあ、
>

冷めないうちにいただきましょうか」
>

そう言って鏡香は紅茶を一口。
>

私もそれに続いてカップを取り――
>

っと、思い出しました。
>

[Mana]
「そういえば。
>

話って、なに?」
>

紅茶を啜りながら、私を見つめる鏡香。
>

[Kyouka]
「――まな」
>

[Mana]
「ん? なあに?」
>

[Kyouka]
「今回は本当にありがとうね」
>

[Mana]
「え? 何が?」
>

[Kyouka]
「私の別荘に来てくれて。
>

本当に嬉しかったのよ」
>

[Mana]
「何をいまさら」
>

思わず笑い飛ばしてしまう。
>

半ば無理矢理連れて来て……。
>

とはいえ――
>

[Mana]
「私だって、楽しんでるところは
>

ちゃんと楽しんでるし」
>

[Kyouka]
「本当?」
>

[Mana]
「本当、よ」
>

――これでもうすこし胡桃と
>

仲良くしてくれれば、ね。
>

[Kyouka]
「……あの、ね」
>

[Mana]
「ん?」
>

[Kyouka]
「あの、ね、まな」
>

[Mana]
「なによ、急にしおらしくなっちゃって」
>

[Kyouka]
「お願いが、あるの」
>

カップを置いて、立ちあがる鏡香。
>

[Kyouka]
「まなに、お願いがあるの」
>

言いながら、私の背後に立つ鏡香。
>

[Mana]
「――ひっ!?」
>

するり、と鏡香の両手が
>

私の首に絡み付いてきました。
>

その動きは……
>

なんだかとても絶妙で……。
>

[Mana]
「ひゃっ!?」
>

ううう……首すじはダメだってば……。
>

[Kyouka]
「ねえ、まなぁ?」
>

甘えるような鏡香の声。
>

ふーっ、って耳に息いいいっ!!
>

[Mana]
「……な、なに……?」
>

[Kyouka]
「おねがい……
>

まな、私のために……」
>

[Kyouka]
「 クルミヲコロシテ? 」
>

[Mana]
「――え?」
>

一瞬、鏡香が何て言ったのか、
>

理解できませんでした。
>

クルミヲコロシテ
>

くるみを――ころして――?
>

頭の中で言葉をはんすうして――、
>

変換、構築しなおす。
>

そして浮かび上がった文章は、
>

『胡桃を殺して』
>

[Mana]
「――なっ!?」
>

立ち上がろうとしましたが、
>

鏡香に押さえつけられて、
>

立ち上がれない――!?
>

[Kyouka]
「どうしたの? まな?」
>

鏡香がどんな顔をしてるか、
>

この体勢だと全く見えません。
>

[Kyouka]
「急に慌てちゃって、ヘンなまな。
>

クスクス」
>

ほおずりをしてくる鏡香、だけど――、
>

[Kyouka]
「ふふふ……好きよ、大好き。
>

まな、あなたを愛してるわ。
>

だって……。
>

まなが私を愛してくれるんですもの」
>

[Kyouka]
「まなは私を好き。
>

だから私もまなが好き」
>

[Mana]
「ちょ……鏡香?」
>

[Kyouka]
「だから邪魔なの。
>

アイツが邪魔なの。
>

でも知ってるんだ私」
>

[Mana]
「え……?」
>

[Kyouka]
「まなが、私とまなのために、
>

胡桃を殺してくれるって!」
>

[Kyouka]
「きゃーん☆」
>

[Mana]
「え、や、待って鏡香――」
>

[Kyouka]
「ねぇそうすれば私とまなはずっと一緒。
>

邪魔者も入らずにずっと一緒。
>

うふふ、ずっと一緒なの。
>

ずーっと………うふふふふ」
>

[Kyouka]
「嬉しいなぁ……。
>

私のためにそこまでしてくれるなんて」
>

[Mana]
「そ――」
>

[Kyouka]
「そ?」
>

[Mana]
「そんなこと出来るわけ無いじゃない!」
>

[Kyouka]
「……え?」
>

[Mana]
「鏡香もおかしいよ!
>

そんなのっ、
>

そんなの出来るわけ無いじゃない!」
>

[Kyouka]
「…………」
>

沈黙。
>

私も鏡香も何も言わず、
>

微動だにしない。
>

ややあって、
>

[Kyouka]
「ふーん……そうなんだー」
>

私の首元に絡めていた手を解くと、
>

鏡香は私の背後から離れ、
>

そのままベッドの方へと歩いていく。
>

[Mana]
「ねえ、鏡香も胡桃と話し合って。
>

――って、鏡香?」
>

……?
>

鏡香、ベッドで何を探してるの?
>

ちょうどここからだと鏡香の背中しか
>

見えなくて、
>

何を探してるのかよく見えません。
>

……なんだろう。
>

椅子を引いて立ち上り、
>

一歩横に動いた、その時でした。
>

[Kyouka]
「おかしいわねぇ」
>

鏡香の声と、
>

ひゅっ!
>

風を切る音と、
>

ごがしゃっ!!
>

何かが壊れる音とが――
>

[Mana]
「――は?」
>

一瞬、
>

何が起きたのかわかりませんでした。
>

目の前にあるカップが、
>

こなごなに割れて――
>

零れた紅茶が、
>

テーブルクロスに染み出して――
>

テーブルが、
>

ぐしゃっという音とともに砕けて――
>

私がほんの数瞬前まで座っていた場所には……
>

――大きな斧亀裂。
>

そしてその先には鏡香。
>

斧を振り上げた体勢で、
>

顔だけ私に向けてにっこりと笑いました。
>

[Kyouka]
「どうしてそんな事を言うの?
>

私はこんなにもまなのことを
>

愛しているというのに」
>

いやああぁぁぁぁあぁ!?
>

叫ぼうとして、
>

まるで喉が張り付いたみたいに
>

声が出ない。
>

[Mana]
「――ぁ」
>

そう搾り出すのが精一杯。
>

ちょっと待って。
>

ダメだ、事態が理解できてない。
>

この斧は何?
>

斧はテーブルを壊してる。
>

その斧を持ってるのは誰?
>

それは鏡香。
>

どうして鏡香は斧を持ってるの?
>

わからない。
>

わからないです。
>

どうして?
>

どうして?
>

[Kyouka]
「どうしてなの?」
>

それはこっちが聞きたい。
>

相変わらず笑顔のまま、
>

鏡香は斧を床から引き抜いた。
>

[Kyouka]
「……おかしいわね。
>

どうしてなのかしら。
>

どうしてまなは……」
>

斧を軽々と肩に担ぐと、
>

鏡香は壊れたテーブルを踏みしめて
>

一歩、近づいてくる。
>

[Kyouka]
「私の言う事を聞いてくれないのかしら?」
>

がしゃっ。
>

鏡香の足の下でカップが砕ける。
>

[Kyouka]
「ねえ、まな」
>

私は一歩、どうにか一歩後退る。
>

[Mana]
「……な、なに?」
>

鏡香が一歩近づく。
>

[Kyouka]
「わたしのこと、すき?」
>

[Mana]
「それは――」
>

[Kyouka]
「それは?」
>

私は一歩……。
>

[Mana]
「っきゃ!?」
>

っと、悲鳴を上げたときには、
>

足をもつれさせて、
>

しりもちをついていました。
>

瞬間、
>

私の頭上、
>

立っていたなら丁度胸から首の高さを
>

その空間を斧が横に薙いだ。
>

転ばなかったら……。
>

ぞくり、
>

背中を冷たい汗が滑り落ちました。
>

このままここにいたら――殺される。
>

[Mana]
「――ひっ」
>

目の前の鏡香は、
>

張り付いたような笑顔のままで、
>

その寒気に耐えられなくて、
>

気が付いたら私は走り出していました。
>

[Mana]
「いやあああああっ!!?」
>

嘘、嘘!!?
>

殺される?
>

私、殺される??
>

もうとっくにシンデレラリミットは
>

終わってるのに、どうして!?
>

今まで異常なりにもそのルールは
>

破らなかったのに!
>

とにかく逃げなきゃ――、
>

でも、どこへ?
>

私は闇雲に走ってくると、
>

玄関への扉を開けようとしました。
>

でも――、
>

[Mana]
「――開かない、
>

開かない開かない開かない!?」
>

[Mana]
「どうして?
>

ねえ、開いて! 開いてったら!!」
>

[Kyouka]
「――ねえ、ちょっと待ってよまな」
>

[Kyouka]
「私を置いて、どこへ行くの?」
>

――来たっ!?
>

開かないドアを諦めて、
>

私は再び走り出した。
>

逃げるって、でも、どこへ?
>

玄関以外、外へ通じてるところなんて
>

無かったし……。
>

……そうだ、胡桃、胡桃は?
>

胡桃のことが急に気になって、
>

私は胡桃の部屋へと走りました。
>

[Mana]
「くるみっ!!
>

いないの胡桃!?」
>

どれだけ強くノックしても、
>

部屋の中からは何も反応が無い。
>

[Kyouka]
「――ねえ、待ってったら」
>

[Kyouka]
「そんなに私の事――」
>

[Mana]
「ひっ――!?」
>

ダメだっ!
>

廊下の向こうから鏡香が近づいてくる。
>

私は胡桃を諦めて、
>

自分にあてがわれた部屋へと
>

逃げ込んだ。
>

部屋に飛び込んで、
>

テーブルや椅子をドアの前へと置き、
>

簡単なバリケードを作る。
>

[Kyouka]
「まな?
>

ねえ、あけてちょうだい?
>

ここをあけてちょうだい?」
>

[Kyouka]
「おかしいわね……。
>

確かにこの部屋に入っていったと
>

思ったのに。まな、まな?」
>

私はベッドに頭からもぐりこんで悲鳴を上げた。
>

[Mana]
「いやあああああっ!!!」
>

…………。
>

………………。
>

……ん?
>

静かになった……?
>

恐る恐る顔を出して見ると――、
>

[Mana]
「きゃああっ!!?」
>

物凄い轟音とともに、
>

ドアがみるみる破壊されていく。
>

最後の砦であるドアが破壊され、
>

鏡香が覗き込んできました。
>

[Kyouka]
「まな?
>

どこにいるの?
>

部屋が暗くてよく見えないわ。
>

ねえ、まな? まな?」
>

[Kyouka]
「……なにこの椅子、邪魔ねぇ……」
>

簡易バリケードもみるみるうちに
>

破壊されて――
>

鏡香が部屋へと入ってきました。
>

[Mana]
「いや――こないで――!!」
>

[Kyouka]
「うふふ。
>

みぃーつけた♪」
>

[Mana]
「――ひぃっ!?」
>

[Kyouka]
「ダメよ、逃げちゃ。
>

まなはここで、
>

私と一緒にずーっと暮らすんだから」
>

[Mana]
「ひっ――ひっ――!?」
>

[Kyouka]
「好きよ。
>

大好きよ、まな」
>

[Kyouka]
「私はまなが好き。
>

まなも私が好き。
>

きゃーん☆ 相思相愛、よね」
>

[Kyouka]
「だから、まな――死んでちょうだい」
>

[Mana]
「っきゃああああああああっ!!!」
>

そこで私は自分の意識を手放しました。
>

暗くなっていく目の前。
>

斧を振りかぶった鏡香。
>

[Inoue]
「――お嬢様、そこまでで――」
>

いつからそこにいたのか、
>

井上さんの声が聞こえました。
>

そして――
>

[Kyouka]
「――うふふふ」
>

鏡香の微笑を最後に、
>

私の意識は完全に闇に落ちました――。
>
limit_panic/event3b.txt · Last modified: 2014/05/25 12:55 (external edit)