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1day/冒頭.ks
Lines: 760
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[Mana]
「はぁ……」
>

[Mana]
冒頭からため息で申しわけありません。
>

わたくし、二ノ瀬まなです。
>

目の前には立派なお屋敷。
>

何をため息つくようなことがあるのかとお思いでしょう。
>

ですがこれには、深い、
>

ふか~いわけがあるのです……。
>

――それは夏休み初日、
>

今朝の出来事でした。
>

冒頭からため息で申しわけありません。
>

わたくし、二ノ瀬まなです。
>

目の前には立派なお屋敷。
>

何をため息つくようなことがあるのかとお思いでしょう。
>

ですがこれには、深い、
>

ふか~いわけがあるのです……。
>

――それは夏休み初日、
>

今朝の出来事でした。
>

7月20日 金曜日 6:00
>

なんだか妙な胸騒ぎで目が覚めた。
>

枕元に置いてあるケータイの画面を
>

確認すると、
>

デジタルの時計は『6:00』を示してる。
>

[Mana]
「うにゅぅ……
>

せっかくの夏休み初日なのに……」
>

学校があるときだって
>

まだ起きてない時間です。
>

早起きは三文の徳というけれども、
>

今は三文より睡眠が欲しいのです。
>

せっかくの夏休み、
>

初日くらいぐーたらすごしたって
>

罰はあたらない……よね?
>

二度寝二度寝。
>

二度寝ほど気持ちのいいものはありません。
>

二度寝は人類の英知。
>

二度寝こそ文化の極み。
>

そう、
>

二度寝イズビューティフルライフ。
>

[Mana]
「むぅ……。
>

なんだか外が騒がしいんだけど」
>

ねぼけまなこをこすりながら
>

カーテンを半分開けて外を見てみる、と。
>

ぞろぞろと家の前に停まっている
>

黒塗りの外車。
>

わらわらと出てくる
>

マッチョスーツグラサン。
>

正直怖すぎる絵です。
>

[Mana]
「なに、あれ……?」
>

誰か偉い人でも近所にきてるのかしら。
>

全くこんな朝早くから近所迷惑な。
>

偉い人にはそれがわからんのですね。
>

と、
>

持っていたケータイに着信。
>

送り主は……隣の部屋にいるはずの、
>

妹の胡桃。
>

『FROM:くるみ SUB:おはよう(>∀<)
>

 ―――――――――――――――――
>

 今日から夏休みだね( >_<)b
>

 ところで、窓の外にヘンなのいっぱいい
>

 るけど……('-'?        』
>

『わからない。なんだろうね?』
>

と返信すると、
>

すぐさまレスが返ってきました。
>

『FROM:くるみ SUB:Re:おはよ(>∀
>

 ―――――――――――――――――
>

 ……まさかウチにくるわけじゃないよ
>

 ね……Σ(゚□゚)!!!?      』
>

あくびまじりに『まさか!』
>

と打ちながら、
>

私はベッドへと倒れこむ。
>

お金持ちや偉い人が近所で何を
>

してようと知ったこっちゃありません。
>

そんなことよりも
>

二度寝のほうが大切です。
>

……あふ、ねむ……。
>

………………。
>

…………。
>

……。
>

[Mana]
「……ん、何?」
>

ケータイが鳴ったような気がして、
>

ぱちくりと目が覚めました。
>

画面を確認すると、
>

メールが5件、着信が……。
>

[???]
「おはようございます」
>

[Mana]
「あ、はあ、
>

おはようござ……」
>

寝ぼけ眼をこすりながら、
>

その声の主を見る。
>

黒いスーツに黒いサングラス。
>

そしてマッチョな体型。
>

どう見ても、
>

どう見ても普通じゃありません。
>

怪しいです。怪しさ炸裂です。
>

……っていうか、だれ?
>

思考停止の後、
>

一気に加速する思考回路。
>

え?
>

ここ、私の部屋よね?
>

だからこの人誰?
>

その前にどこから入ってきたの?
>

これって完全に不法侵入……。
>

あれ、こういう場合って警察に電話、
>

だよね?
>

ええええっ!? 
>

ちょ、まっ……えええええっ!!?
>

落ち着いて、落ち着いて私。
>

窓は閉まってる。
>

うん。
>

じゃあ普通に部屋に入ってきたんだ。
>

季節はずれのサンタクロースとか?
>

ブラックサンタ、あれは都市伝説。
>

もっとリアルに考えて泥棒? 強盗?
>

殺し屋? 闇の組織?
>

ヘンな薬で私も子供にされちゃう!?
>

[Maccho]
「二ノ瀬まな様、ですね?」
>

[Mana]
「ふえぇっ?」
>

そのマッチョな黒スーツ男の
>

意外に優しい声に、
>

情けない返事をしてしまう。
>

[Maccho]
「早朝から申し訳ありません。
>

大変失礼ですが、
>

我々と来て頂きます」
>

どこへ? と尋ねる間もあらば。
>

[Maccho]
「失礼致します」
>

ひょい。
>

[Mana]
「うわ」
>

夏前だっていうのに最近おなかが、
>

ちょっとダイエットしないと、
>

なーんて気になり始めた私の身体を
>

いとも軽々と持ち上げるマッチョ。
>

[Mana]
「や、ちょ、
>

わけわかんな――っ!?」
>

[Mana]
「そうだ、胡桃、
>

くるみーーーっ」
>

隣の部屋にいたはずの胡桃は――、
>

[Gurasan]
「こっちも準備完了」
>

開け放たれたままのドアの向こうに
>

顔を覗かせる別のグラサンの男。
>

こっちも……って、
>

胡桃も捕まっちゃったの?
>

私を抱えるマッチョは内ポケットから
>

ケータイを取り出すと、
>

[Maccho]
「ターゲット確保。
>

これよりそちらへ向かいます」
>

ターゲット? 私たち?
>

ナニよそれ、なんの設定も無い
>

フツーの民家に潜入して
>

何のミッションコンプリート?
>

それってどこのスネ○クよっ!!
>

意味わかんない、ねえ、ちょっと!
>

[Mana]
「お~~ろ~~せぇ~~~!」
>

7月20日 金曜日 11:00
>

――という紆余曲折を経て、
>

車で走ること数時間。
>

私と胡桃はクラスメイトの持つ
>

豪華別荘の前に立っているわけです。
>

ううぅ。
>

[Mana]
「かむばぁ~っく!
>

……私の夏休み……。
>

私の平穏な日々……」
>

……なんて大声で叫んでみても、
>

返ってくるのは山彦だけ。
>

どこかの高原か山奥なのか、
>

とっても空気が美味しいのが余計に
>

人里離れっぷりを加速させるし……。
>

[Kurumi]
「すっっっごいお屋敷だねお姉ちゃん!」
>

気絶させられていた事なんか
>

すっかりどこへやら、
>

胡桃はむしろ上機嫌で
>

ぴょこぴょこ跳ねてたりする。
>

車中での黒スーツたちとの会話で
>

ようやくわかりました。
>

私たちを拉致したのはだれであろう、
>

私の親友たる白宮鏡香です。
>

何度も遊びに行ったことあるけど、
>

たしかに実家は豪邸だし、
>

セレブリティ全開だし。
>

そう言えば夏休みは別荘に行くとか
>

なんとか言ってた気がします。
>

付き合いが長い私にはわかる。
>

これは彼女なりの誘い方、なのです。
>

[Mana]
「鏡香ったら……。
>

もっと普通に誘えないのかしら」
>

[Kurumi]
「――バカ宮?」
>

胡桃の声色が変わった。
>

……そう言えば、
>

あんまり鏡香と仲良くなかったっけ。
>

[Kurumi]
「ハッ。ここがあのバカ宮の
>

別荘だなんて、勿体無い……。
>

いきなり人を拉致っといて、
>

ホント非常識にも程があるよ」
>

[Kurumi]
「だいたいあのバカはいつもいつも
>

お姉ちゃんにベッタリで
>

気持ち悪いったらありゃしないのに……」
>

二人の不仲は理由がよくわかりません。
>

昔っから馬が合わないのです。
>

その時です。
>

[Kyouka]
「ようこそまな!
>

あぁ! ようやくあなたを
>

手に入れる時がきたのね!」
>

突如、館の扉を開いて登場した少女。
>

このおバカなまでに派手な登場は、
>

どこをどう釈明しても見まがうことなき我がクラスメイトにして親友。
>

白宮鏡香その人でした。
>

[Kyouka]
「まな~~~~☆」
>

両手を広げてそのまま私に向かって
>

飛びつかんとする鏡香。
>

この女子高ノリは相変わらずですねぇ。
>

[Kurumi]
「こんにちは。
>

バカ……いえ、白宮さん」
>

不意に私と鏡香の間に割って入る胡桃。
>

どうやって空中で緊急制動をかけたのかはわからないけれど、胡桃の目の前で鏡香はビタッと止まった。
>

[Kyouka]
「あら、胡桃さんも来てらしたのね、
>

いらっしゃい。呼んだ覚えはないけれど、来てくれて嬉しいわ」
>

[Kyouka]
(フフ、罠にかかったとも知らずに、
>

呑気なものね。
>

最期の時を楽しむといいわ)
>

[Kurumi]
「うん! 遊びに来ちゃった~!
>

急で荒っぽいお誘いだから
>

ビックリしちゃったけど!
>

白宮さんならしかたないよね!」
>

[Kurumi]
(はん。魂胆見え見えなんだよ。
>

この性悪女が。
>

気絶したフリをしてついてきたけど
>

正解だったな!)
>

[Mana]
「ふたりとも目が笑ってない……よ?」
>

ふたりとも「ふふふ……」となんだか
>

アヤシげに笑いあってるし。
>

[Kyouka]
「夜もおかまいなく、
>

一切のことを気にしないで、自由に、
>

好きな事をしてくつろいで下さいね」
>

[Kyouka]
(日が沈めばこっちのもの。
>

白宮家の力でこの屋敷で起こった全てをもみ消してあげますわ……)
>

[Kurumi]
「わ~! 楽しそうだねぇ!
>

枕投げ大会とかしちゃうのかな?
>

楽しみい♪」
>

[Kurumi]
(つ・ま・り、なにをしたってお咎めは
>

無し、ってことか。
>

へぇ、いいねぇ……)
>

[Mana]
「あのぉ、二人とも?」
>

[Both]
「今から夜が楽しみね♪」
>

[Mana]
「えと……ふたりとも?」
>

[Both]
「うふふふふふふふ~♪」
>

笑い声をハモらせるふたり。
>

知らないうちに仲良しさん?
>

……でも、なんだかふたりの間で時折
>

『チリッ……チリッ!』
>

って音が聞こえるけど。
>

[Kyouka]
「ささ、こんなところで立ち話も
>

何ですから……ちょっと井上?」
>

[Inoue]
「はい、お嬢様」
>

鏡香がパンパンと手を叩くと、
>

その背後に音も無くメイドさんが現れた。
>

この人は鏡香の世話係をやっていて、
>

学校に音も無く現れては
>

皆を驚かせていたっけ。
>

物静かな雰囲気で、
>

普段はあんまり表情を見せないけれど
>

時々見せる笑顔が
>

かなり美人だと評判でした。
>

[Kyouka]
「ちゃんと準備は――」
>

[Inoue]
「問題御座いません。
>

全てご命令通りに」
>

[Inoue]
「――さ、お前達」
>

[Both]
「はい」
>

井上さんが合図を送ると、
>

さっきのグラサンマッチョ達が何かを
>

肩に担いでやってきました。
>

ひょいひょい、
>

と目の前に置かれたのは――
>

[Mana]
「これ……私の旅行カバン?」
>

そう、私のお気に入りのカバン。
>

拉致同然で連れて来られたんだから
>

もちろん準備なんてしてるはずがない。
>

[Kyouka]
「心配なさらないで。
>

あなたたちの着替えは
>

ちゃんと準備させましたから」
>

[Inoue]
「はい、お嬢様。
>

抜かりはございません」
>

[Kyouka]
「よろしくてよ、井上」
>

[Mana]
「なにがよろしいのか、
>

さっぱり全然、
>

理解できないんですけどね」
>

[Kyouka]
「ではふたりとも、
>

お部屋までお連れいたしますわ♪」
>

[Mana]
「こちらの反応も
>

さっぱり全然スルーですか鏡香さん」
>

[Kyouka]
「鈴木、田中」
>

[Maccho]
「はい――失礼致します」
>

[Mana]
「――ひゃッ!?」
>

いとも軽々と私の身体を
>

担ぎ上げるマッチョ。
>

[Maccho]
「あんまり暴れないで下さいね」
>

ひょいと担ぎ直されたときに
>

マッチョの手が私の脇腹を――
>

ふにっと掴んだ。
>

[Mana]
「や、ちょ――うひゃっ!?」
>

思わず変な声を上げる私。
>

だって……微妙にくすぐったいんだもん。
>

[Maccho]
「――よいしょっと」
>

[Mana]
「んにゃっ!?
>

そこ、やめ――」
>

まるで米俵のように担がれる私。
>

マッチョの肩の上でぶらーんと、
>

今日もよく垂れてます。
>

[Kyouka]
「ふふふ……」
>

そんな私の後ろから鏡香の笑い声。
>

[Mana]
「ちょっと、鏡香、これなんとか……」
>

[Kyouka]
「いいわぁ……」
>

[Mana]
「へ?」
>

[Kyouka]
「そのまるで人として扱われていない、
>

まなの屈辱的な格好……。
>

ゾクゾクしますわ」
>

[Kyouka]
「しかも……。
>

うふふふふふ、いい眺めです事♪」
>

[Mana]
「――え?」
>

……なに?
>

私、何か変?
>

確かに米俵みたいな、
>

たれたパンダみたいなだけど……。
>

[Kyouka]
「……やっぱり白、
>

イメージ通りですわ!!」
>

[Mana]
「………………ぇ?」
>

っきゃあああああっ!?
>

考えてみれば
>

短いスカート姿で抱え上げられたら――。
>

ぼっ。
>

顔が一気に熱くなるのが
>

自分でもわかった。
>

今の自分の体勢……
>

後ろから見たら絶対にパンツ丸見えだ。
>

あうううううう。
>

子供っぽいパンツじゃなくてよかった
>

――って、そんな心配じゃなくて!!
>

と、
>

[Kurumi]
「――お姉ちゃんを離せ」
>

胡桃の静かな声。
>

瞬間。
>

まるで疾風のように、
>

胡桃はマッチョと鏡香を目がけて跳んだ!
>

[Kyouka]
「――フン。
>

早速バカが一匹暴れだしましたか。
>

田中!」
>

[Gurasan]
「はいよ、お嬢」
>

鏡香と胡桃の間に、
>

もうひとりのグラサン黒スーツ男
>

――こっちが田中さんというらしい――
>

が風のように割って入る。
>

[Maccho]
「……痛くないか?」
>

[Mana]
「へ?」
>

よっこらせ、とマッチョさんが
>

私にもよく見えるように
>

肩の上に座るように担ぎなおしてくれた。
>

律儀なんだかよくわからない人です。
>

そうしてる間にも、胡桃が
>

[Kurumi]
「アンタ……死にたいんだ?」
>

[Gurasan]
「ほざけよ、ガキが」
>

[Kurumi]
「それが最期のセリフだなんて、
>

冴えないねぇ」
>

グラサンさんの右フックをかわしつつ、胡桃が懐へと潜り込む!!
>

胡桃は右拳を軽く――そう、
>

本当に軽く田中さんのお腹に当てた。
>

打撃、では無い。ただ当てただけ。
>

グラサンさんは口元でにやりと笑うと
>

胡桃を掴もうと両手を広げ――、
>

[Inoue]
「――田中!」
>

妙に通る井上さんの声。
>

ハッとした田中さんがバックステップで間合いを取った!
>

次の瞬間、
>

――ボッ!!
>

不気味な音。
>

それは胡桃の右拳が
>

空を切った音だった。
>

……そういえば干してる布団相手に
>

あんな練習をしていたような。
>

構えを解くと、胡桃はグラサンさんを
>

見据えてニィと笑う。
>

[Kurumi]
「あれを……かわすかよ」
>

[Gurasan]
「ヒュー♪
>

怖いねぇ、お前さん!
>

小娘と思ってたらとんでもねえな!
>

井上さんの声が無かったら今頃――」
>

[Inoue]
「あのまま組みにいっていれば、
>

ゼロ距離からの重打撃で
>

田中は沈められていたでしょう」
>

[Kurumi]
「へぇ……見えたんだ?
>

今の」
>

[Inoue]
「……これもメイドの嗜みです」
>

[Gurasan]
「ごたくはいいが
>

隙だらけだゼっ!!」
>

胡桃の意識が井上さんに向いた、
>

その隙をグラサンさんは逃さなかった!
>

……っていうかさっきから
>

「グラサンさん」って、
>

ものすっごく語感悪くないです?
>

まぁ、どうでもいいですけどね。
>

[Mana]
「危ないっ!」
>

[Gurasan]
「もらった!!」
>

ちょうど左を向いていた、
>

胡桃の死角となる右側へ
>

グラサンさんの左ストレート――!
>

[Kurumi]
「じゃあこれは――見えるかい?」
>

瞬間。
>

胡桃は交錯したと思ったら
>

すぐに間合いを取って離れた。
>

……私の目に見えたのは、
>

左ストレートを交わして肘のあたりを
>

そっと掴んだ、ただそれくらい。
>

[Gurasan]
「なにぃ!?」
>

[Kurumi]
「わかるだろ? アンタなら」
>

[Inoue]
「折る気なら折っていた、ですか?
>

けれど――」
>

[Gurasan]
「――甘ぇよ」
>

再び飛び掛るグラサンさん。
>

その時だった!
>

[Kyouka]
「ねえねえ、胡桃さん胡桃さん?」
>

[Kurumi]
「――へ?」
>

[Kyouka]
「うふ。チラリ☆」
>

そう言って、鏡香が私のスカートを
>

ひらりと捲る――って!?
>

[Kurumi]
「んにゃ――!?」
>

[Gurasan]
「よっこらせっと」
>

[Kurumi]
「離せーーーーッ!!!」
>

一瞬の隙をついた田中さんが
>

胡桃をひょいと抱えた。
>

……って、
>

何だったんですか今のバトルは。
>

[Kurumi]
「離せ離せ離せええええええっ!!!」
>

ジタバタ暴れる胡桃。
>

けれど、グラサンさんは涼しい顔で
>

そんな胡桃を抱えたまま、
>

旅行鞄を反対側の手で拾い上げた。
>

バトル終了と同時に、
>

私はまた米俵みたいな状態に……。
>

えーと、
>

この体勢ってさっきと一緒だよね?
>

[Kyouka]
「ねぇ――まな?」
>

[Mana]
「――ひっ!?」
>

おしりと脚の付け根の微妙な部位に、
>

くすぐったいような絶妙な感覚。
>

お、思わずヘンな声出ちゃったじゃないですか!
>

[Kurumi]
「あ! コラ!
>

お姉ちゃんに触るなぁっ!!」
>

見えないけど、
>

鏡香が指で撫でてるんだと思う。
>

その動きが何だか絶妙にイヤらしくて、
>

なんともいえない気分に……。
>

[Mana]
「うひゃひゃひゃぅっ!!?」
>

むしろ、超絶くすぐったいです。
>

[Mana]
「ひゃひゃひゃひゃうっ☆」
>

[Kurumi]
「あーーーーーッ!!!!」
>

[Kyouka]
「五月蝿い黙れこの邪魔虫が」
>

[Kurumi]
「――ぴくっ」
>

[Kyouka]
「まあ? そうやってそこで見てるしか出来ないんでしょうけど?」
>

[Kurumi]
「きさまぁっ!」
>

[Kyouka]
「あーっはっはっはっは!!!」
>

手の甲を口元に当てて高笑いする鏡香。
>

[Kyouka]
「あーっはっはっはっは!!!」
>

私はその間も
>

こしょこしょむにむにされてるし、
>

胡桃は身動き取れずに
>

「ふぬーっ」とか言ってるし……。
>

ひとしきり笑い終えたあと、
>

[Kyouka]
「さ、てと。鈴木、田中。
>

そろそろふたりを
>

お部屋までお連れするわよ」
>

[Kyouka]
「まだまだお楽しみはこれから、
>

ですからね」
>

そう告げた鏡香の表情は、
>

とーっても楽しそうです。
>

スタスタと歩き始める鏡香。
>

続いて私たちを担いだ
>

グラサンマッチョ達が続く。
>

井上さんも多分、
>

うしろについてきていると思う。
>

……って、
>

いつまで私は担がれたままですか?
>

[Kyouka]
「さあ、ようこそ私の別荘へ!!」
>

[Mana]
「……ようやく入れたのね。
>

長い前置きだったわ」
>

[Kurumi]
「ふわぁ、広い……」
>

[Kyouka]
「あら、本当狭くて汚くて御免なさいね?」
>

いや、全っ然狭くもないし汚くもないし。
>

ここが狭くて汚かったら、
>

日本にある家屋の9割方が
>

狭くて汚い事になるじゃない。
>

[Kyouka]
「で、こちらが――」
>

両腕を広げて
>

くるりとステップを踏む鏡香。
>

こうやって笑ってると
>

普通に可愛い女の子、
>

なんだけどなぁ……。
>

[Kyouka]
「廊下の先にふたりの部屋があるわ」
>

[Kyouka]
「こっちの扉はダイニング。
>

昼と夜はここで食事ですわ」
>

[Inoue]
「ご用の際はお部屋に備え付けてあるチャイムを鳴らしてくださいませ。
>

ご用件を承ります」
>

[Mana]
「ほえ、まるでホテルですね」
>

[Kurumi]
「なんか胡桃もお嬢様になったみたい」
>

ホント、
>

まるで私たちお嬢様になったみたい。
>

[Kyouka]
「あらあら。
>

胡桃さんはまずその荒っぽい口調を
>

修正される必要がありますわね」
>

[Kurumi]
「んがっ!?」
>

[Kyouka]
「最も、持って生まれた気品
>

という問題の方が大きいかしら?
>

オーホホホ!」
>

鏡香の鋭いツッコミ!
>

確かに、最もな意見かも……。
>

[Kurumi]
「あははー☆
>

アンタにだけは言われたくなかったかもー、この猫っかぶりナイチチ女が」
>

[Kyouka]
「む、胸と気品は関係ありませんことよ!
>

胡桃さん!」
>

[Kurumi]
「あぁらそうでございましたか。
>

それはそれは、たいそう動きやすそうな体型をしてらしたので、つい。
>

オホホホオホホ」
>

[Kyouka]
「む、ムキィィ~!
>

い、井上ぇ!
>

あの小娘が私のこといぢめるのぉ!」
>

[Inoue]
「あらあら。
>

泣かないでくださいましお嬢様。
>

今世論はスレンダーな体型の女性に
>

優しいですから」
>

[Mana]
「いやいや、井上さんフォローする場所違いますから」
>

[Kurumi]
「フフン。
>

白宮家のお嬢様も大したことないね。
>

あっはっはっは!」
>

と、そんなこんなで鏡香の別荘紹介は進み……。
>

[Kyouka]
「こちらの扉はバスルームですわ」
>

[Kyouka]
「そうね、せっかくだからまな、
>

一緒に入りましょう♪」
>

[Kurumi]
「バカ宮とだったら、
>

一緒に入っても胸の体積小さいから
>

お湯もあふれなくて安心だネー」
>

[Kyouka]
「なっ!? ご、ごほん!
>

ここは私自慢の浴室なのよ、
>

きっとまなも気に入ってくれると思うの!」
>

[Kyouka]
「ふたりで一緒に……そう、
>

それで体の洗いっことかしちゃたりして!
>

キャー☆」
>

[Mana]
「はぁ……」
>

[Kyouka]
「あんっ! ヤダ!
>

まなったらそんなト・コ・ロ♪」
>

[Mana]
「おーい。もしもーし」
>

両手を頬にあてて
>

『イヤイヤ』と可愛く首を振る鏡香。
>

……完全に妄想の世界に旅立ってるんだけど。
>

[Kurumi]
「いちいちめんどくさいヤツだな」
>

[Kyouka]
「ああ、そういえば胡桃さんもいたん
>

でしたっけ」
>

[Kyouka]
「そうね、胡桃さんにはサウナなんか
>

良いんじゃないかしら?」
>

[Kurumi]
「サウナ?」
>

[Kyouka]
「その無駄に肥大した胸の脂肪の塊を少しは落とした方がいいんじゃなくて?」
>

[Kurumi]
「はーン。それ嫌味のつもり?
>

もしかしてひがんでる?
>

ホントはうらやましいんでしょ?」
>

[Kyouka]
「――なっ!?
>

そ、そんなわけありませんわ!!」
>

[Kurumi]
「まあね、鏡香さんてば
>

すっっっごいスレンダーだもんね」
>

『すっごい』の部分にかなり力を入れる胡桃。
>

[Kyouka]
「ふ、ふん! そんなことより、も、よ!」
>

[Kyouka]
「これくらいにして先に進むわよ!!」
>

[Kyouka]
「ここをまっすぐ行くと客室ね」
>

[Kyouka]
「で、この扉から……」
>

[Kyouka]
「ここが中庭。
>

世界各地から私が厳選した花だけを
>

持ってこさせたの。
>

ま、そんなにたいした事ないけど」
>

中庭の中央には綺麗な噴水があり、
>

その周りにはこれまた綺麗なお花が
>

たくさん咲いていた。
>

[Mana]
「いや、すごいってココも」
>

近所の公園なんかに比べて全然すごい。
>

ちょっとしたデートスポットよりも
>

雰囲気がありそう。
>

[Kyouka]
「ちなみにプールもあるわよ」
>

[Mana]
「ほえ~、お金持ちは違うわね~」
>

[Kurumi]
「ふわぁ、こんな事が分かってたなら
>

水着用意しておけばよかったかも」
>

[Kyouka]
「そこらへんは井上がちゃんと
>

準備してくれてるでしょう?」
>

[Inoue]
「はいお嬢様。抜かりは御座いません」
>

[Inoue]
「今年流行のモデルの水着を
>

お部屋の方にご用意させていただいています」
>

[Kurumi]
「え? 本当?」
>

[Inoue]
「色、サイズ等問題ございましたら
>

すぐに対処いたしますので、
>

ご安心ください」
>

[Kurumi]
「きゃっ♪」
>

[Kyouka]
「まあ、胡桃さんはスクール水着辺りが似合うんじゃありません?」
>

[Kurumi]
「あら、それなら白宮さんこそその体型、スク水が超似合うよ☆」
>

[Kyouka]
「………おほほほ」
>

[Kurumi]
「ぬっふっふ……」
>

[Mana]
「そろそろ胸から離れない?
>

二人とも……」
>

[Kyouka]
「で、ここがふたりの部屋よ」
>

[Kyouka]
「夕飯までまだ時間があるから、
>

少し休むといいわね」
>

[Kyouka]
「時間になったら
>

井上に呼びに行かせます」
>

[Kyouka]
「それでは、また後ほど」
>

[Kurumi]
「……なんだかすごいところに
>

連れてこられちゃったね、
>

お姉ちゃん」
>

[Mana]
「そうねぇ……」
>

[Kurumi]
「でもまあ、
>

来ちゃったもんは来ちゃったんだし、
>

せっかくだから楽しもうよ♪」
>

[Mana]
「うん、そうね!
>

こうなったら、
>

目一杯楽しまなきゃだね!」
>

[Kurumi]
「それで、
>

いっぱい思い出つくろうね!
>

お姉ちゃん♪」
>

とびっきりの笑顔で抱きついてくる胡桃。
>

[Mana]
「わ、ちょっと、胡桃?」
>

[Kurumi]
「うふふ~☆
>

お姉ちゃん大好きっ」
>

[Mana]
「胡桃ったらどうしたのよ急に」
>

[Kurumi]
「ううん、なんでもないよー!」
>

[Kurumi]
「なんだかワクワクしてきちゃって」
>

[Kurumi]
「……ちゅ☆」
>

[Mana]
「ひゃっ!?」
>

ほっぺたに軽くキスをされ、
>

思わず声を上げてしまった。
>

[Kurumi]
「にゃはは」
>

[Kurumi]
「それじゃあまた後でっ」
>

私から離れてぶんぶんと手を振ると、
>

胡桃は荷物を肩に担いで
>

自分の部屋へと消えていった。
>

[Mana]
「もぉ……。
>

さて、と」
>

私も置いてあった鞄を手に取ると、
>

自分にあてがわれた部屋を見回した。
>

――この時はまだ、
>

あんなことが起こるだなんて、
>

全く思いもつきませんでした。
>

ただ、急な展開と、お屋敷の凄さ。
>

それとちょっとした期待感とで
>

頭がいっぱいで――
>

持ってこられた着替えや荷物を
>

ベッドの上で整理しながら、
>

思わずため息。
>

[Mana]
「……まったく、
>

鏡香ももうちょっと誘い方とか
>

あったでしょうに」
>

言いながら、下着をたたむ。
>

あれ……これ、誰が用意したんだろう。
>

井上さんかな?
>

それとも……。
>

[Mana]
「ま、まさかっ!?」
>

うううう、グラサンマッチョ達が
>

私のぱんつを用意とかしてたら
>

恥ずかしくて死にそうです。
>

[Mana]
「はぁ………」
>

出てくるのはため息ばかり。
>

そうこうしているうちに、
>

着替えの整理も終わってしまう。
>

腕時計を確認すると、
>

まだお昼までは時間がすこしある。
>

うーみゅ。
>

このままベッドにごろりもいいけど。
>

そうだ、
>

ちょっとお屋敷の中を
>

散歩してみようかな。
>

と、その時。
>

枕もとに投げておいたケータイから
>

着信メロディ。
>

『FROM:くるみ SUB:ヒマ(・∀・)ヒマ
>

 ―――――――――――――――――
>

 お姉ちゃ~ん
>

 そっち行ってもいい~(>∀<)?  』
>

ん~……。
>

『これからお屋敷内散歩するけど~』
>

……送信、と。
>

ほどなくして、
>

『FROM:くるみ SUB:RE:RE:ヒマ(・
>

 ―――――――――――――――――
>

 くるみも行くいく~(>∀<≡>∀<)♪』
>

『了解、準備して出るね』
>

[Mana]
「よし、
>

それじゃあ探索といきますか♪」
>

[Kurumi]
「あ、お姉ちゃん♪」
>

扉の前にはすでに胡桃が準備万端で待っていました。
>

[Mana]
「お待たせ」
>

[Kurumi]
「うん♪
>

それじゃあ行こっか♪」
>

[Kurumi]
「本当、広いお屋敷だね」
>

[Mana]
「広いねぇ……」
>

これが本当に広いのです。
>

一階部分をぐるりと回るだけでも
>

10分以上かかりました。
>

途中、中庭にも入ってみましたが、
>

本当に綺麗なつくりでビックリです。
>

そのまま反対側の廊下へと
>

つながっていて、出入り口は二つ。
>

外に出られるお勝手口みたいのは無く、
>

外がどうなっているかは
>

わかりませんでした。
>

で、いざ回ってみて、
>

気が付いたことがいくつか。
>

最初は気のせいかと思っていたのですが、どの窓も開かないのです。
>

いわゆるハメ殺しの窓、です。
>

……まあ、
>

これだけお金持ちの別荘ですから?
>

防犯的にそっちのほうが
>

いいのかもしれませんね。
>

もしかしたら防弾ガラスかも知れないし。
>

それと、もうひとつ。
>

これだけ広いお屋敷なのに、
>

人の気配がしないこと。
>

もっとメイドさんとか黒服さんたちが
>

いっぱいいるのかと思ってました。
>

[Kurumi]
「……広い上に誰もいないね」
>

[Mana]
「……まあ、鏡香と私たちふたり、
>

みたいだからね。
>

メイドさんと黒服さんの必要最低限で
>

まかなっているのかも」
>

それにここは別荘ですし、ね。
>

普段から住んでるなら話は別だけど、
>

たまにしか来ないところだから
>

あまり人は常駐してないのかな。
>

そんなことを話しながら歩いていると
>

[Mana]
「――ん?」
>

廊下の曲がり角。
>

見る方向からすると、
>

壁と柱とでちょうど死角になる場所に
>

扉を発見しました。
>

[Kurumi]
「どうしたの? お姉ちゃん」
>

[Mana]
「え? あのね、
>

こんなところに扉が――」
>

[Kurumi]
「扉? あ、本当だ、
>

ちょっと変なところにあるね」
>

まるで、隠された秘密の扉のように。
>

一見他の扉と変わらない、木製の扉。
>

でも、たてられている場所と、
>

その雰囲気は、
>

他の扉のそれとはまた違って――。
>

[???]
「――いかがされましたか?」
>

[Kurumi]
「わっ!?」
>

[Mana]
「きゃっ!?」
>

急に背後から声をかけられて、
>

私と胡桃は悲鳴を上げてしまいました。
>

[Inoue]
「こんなところでいかがされましたか?」
>

[Mana]
「え、いや、
>

ちょっと暇だったのでお散歩を――」
>

[Inoue]
「……そうだったのですか。
>

驚かせてしまって
>

申し訳御座いませんでした」
>

[Kurumi]
「本っ当……びっくりした
>

(……気配が全く無かった……)」
>

[Mana]
「ところで……井上さん?」
>

扉のことを訊こうとしたけど――、
>

[Inoue]
「もうじき昼食の準備が出来ます。
>

お二人とも、どうぞ食堂の方へ――」
>

[Mana]
「――あ、はい」
>

遮られてしまい、
>

それ以上は訊けませんでした。
>
limit_panic/boutou.txt · Last modified: 2014/05/25 12:55 (external edit)